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至高の孤島  作者: こっちのあっきー


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3/5

簡易海鮮丼


翌朝、夜露に濡れた船の甲板で目が覚めた。昨日のマース煮が力をくれたおかげか、体は軽い。源児さんは既に海を眺め、何やら思案していた。


既に昨日捌いたロウニンアジの残りが、綺麗に切り分けられている。源児はその身を見つめながら、俺へ言った。


「今日はこの残った身を使って、その場で食い切る海鮮丼にする。保存は考えんと、今の胃を満たすことに集中するぞ。……海鮮丼はどうだ」


源児は続けて言った。


「2日経っていい具合に熟成してるからうまいぞ。生で食うには、この環境だとここが限界かもしれん。魚については考えがあるんだ。漬けだ。醤油とみりんと酒で、基本の味だ。余計な手は加えるなよ」


どうやら、源児さんはどうしてもその漬け丼を食べたいらしい。俺は作業に取り掛かる。源児の言う通り、醤油とみりんと酒を合わせる。そして備蓄からゴマと胡麻油、わずかな砂糖と一味を加え漬けていた。


「源児さん、わさびとシソがあればな」


源児は少し離れた所まで歩いて屈み、何かを持って戻ってきた。島大根だ。


「おろすとわさびとは違う辛みが有る」


俺は島大根をおろす。ロウニンアジの漬け丼の上に添えた。残ったアラで汁物も作る。


「それと、今日の方針だ。カナデとさくらは泳ぎが得意だが、まずは俺とミナト、そしてカナデの3人で浅瀬や岩場を攻める。貝や海藻を集めるぞ。健太はさくらと水辺を探せ。戻ってきたらろ過装置のクラフトだ。木炭は船の残骸から多少は回収できている」


源児さんは船から鋭いナイフを各自に配り、さらに銛を2本と釣竿を外に運び出した。


「これがあれば、食い扶持はさらに広がる。ミナト、海鮮丼が終わったらすぐに出るぞ」


「はい!」


炊き立ての米の上にタレに漬かった身を広げ、島大根のおろしを添える。皆で手早くかき込み、熱々のすまし汁を流し込んだ。


「頂きます!」


汁物を口にしたさくらが言った。


「汁物の塩梅も最高よ! 暑い時には熱いものを食べると涼を味わえるってこういう事だわ」


健太は海鮮丼のタレがしみたごはんと、ちょうど良く漬け込んだアジの食感に夢中で、一言「もっちもち」と呟くと、あとは無言のままひたすら口へとかき込んでいる。


源児は一口食べて気付く。


「……ゴマと胡麻油か」


絶品だと小さく唸りながら、ひとり満足げに頷いている。


食後、俺たち海辺組は獲物を求めて波打ち際へ向かった。源児は採取した小魚をエサにし、丸々一匹を使った泳がせ釣りの打ち込みを開始する。源児は岩場に竿を立てて固定し、竿先に鈴のクリップを付ける。そして銛を持って俺にレクチャーを始めた。


「銛は腕で突くもんじゃねぇ。腰を入れ、獲物の逃げ道に先回りして押し込むんだ」


俺たちが銛を振るい、岩場の隙間に潜り込むと、一突き!見事に中型のミーバイを捕える。それからあっという間に10匹の石ミーバイを確保し、網の中へ入れていく。流石は漁師だ。


一方、カナデは海に潜り、本領を発揮していた。彼女は身軽に水深のある岩場や砂地まで泳ぎ進み、次々と獲物を見つけ出していく。息継ぎのために水面に顔を出すたび、カナデの手には獲物があった。


「ミナト、見て! 大きくて綺麗な二枚貝があったわ! それに、アーサや海ぶどう、スーナもたくさん生えてる! これも採らなきゃ!」


カナデは可能な限り多様な貝と海藻を集めるべく、再び海中へ滑り込んでいった。


銛で突いている最中、鈴の音色がリンリンと響き渡った。源児は竿まで素早く移動し、タイミングを待つ。その時、竿先が大きく沈み込んだ。フッキング合わせをして、源児は魚とのファイトを難なく制し、慣れた手つきで巻き上げる。


「イラブチャーだ」


一通りの収穫を終えた俺たち海辺組が先に船に戻ると、森から戻った健太とさくらが待っていた。彼らは川は見つけられなかったと報告する。


「だけど、いい匂いのする葉と、シークヮーサーみたいな柑橘を見つけたよ」


俺たちは互いに獲物を見せ合う。網の中にはミーバイ、二枚貝、そしてイラブチャー。森の袋からはフーチバーや月桃の葉が出てくる。


源児はカナデが持ってきた二枚貝と海藻を手に取り、目を輝かせた。


「これは『磯ハマグリ』だ。この辺りでは珍しい地形だが、よく見つけたな。アーサに海ぶどう、スーナまで……極上の食材ばかりだ」


続けて源児は他の食材も受け取り、説明した。


「これは『月桃サンニン』の葉だ。独特の爽やかでスパイシーな香りがする。スープと一緒に煮込めば、イラブチャーの磯臭さを一発で消してくれる。こっちは『イーチョーバー』だ。仕上げにたっぷり散らすといい。そしてこれは……シークヮーサーだな。上等な土産だ」


「すごいわ! 大収穫ね!」


子供たちが歓声を上げ、お互いの採取した獲物を褒め合う。クーラーボックス代わりに用意した船の残骸の中には、まだしばらく氷が持つという。食料が山積みになった甲板で、俺たちは笑い合った。


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