第七十話 ありがとう
「たのしかったなぁ」
クアと遊び終えたミライは、そんな感想を零して笑顔。
すると、後ろから水の跳ねる音が聞こえたので振り返ってみた。
そこには、ミライのトモダチがいて―――
「あれぇ? みんなおそらいってたのにぃ。なんでいきてるのぉ?」
素朴な疑問を口にして、ミライは小首を傾げた。
「今までオレたちに気づいてなかったのかよ!?」
「ミライくんは無意識だったかもしれませんが、ミライくんのおかげで、ワタシたちは生き返ったようです」
「ミライっちの≪極限解放≫、スゴいねっ★」
「………(こくり)」
復活したレン、アオイ、エルザ、サクラの体は、心臓を貫かれた形跡さえない。
それどころか、血塗れで破けたはずの隊服まで元通りだった。
今日の訓練が始まる前のように、キレイな身だしなみをしていた。
「へぇ。そうだったんだぁ。よかったねぇ。みんないきててぇ」
あははぁ、とミライはトモダチが生きていることに笑うと、
「ミライ、お前の力なら他のみんなも蘇らせるんじゃねぇのか? オレたちみたいに」
「ですが、そんなこと可能でしょうか? 皆さんを復活させてないということは、ワタシたち四人だけが限界……。こうしてワタシたちが生きていること自体が奇跡ですし、それ以上高望みするのは……」
「確かに……そうだよな。ミライ、悪かった。無理言って―――」
「できるよぉ」
「できるんですか!?」
「できるのかよ!?」
アオイとレンの叫びが重なる。
そんな驚愕する二人に、「うん」と頷いてミライは白刀を水面鏡に突き刺す。
そこを起点に木の枝のように光の線が広がって、それはこの固有世界の奥にあった、イッキと候補生の死体を包み込んだ。
その時、
「あれ……?」
「なんで生きて……」
候補生が、
「どういうことだ……」
イッキが、全員が復活した。
やはりレンたちと同じように、傷跡もなく、隊服も何もかもが元通りの状態で。
どれも皆、復活したことに困惑していた。
さっきまで死んでいて、急に生き返ったのだから当然である。
イッキは誰が復活させたのか、その正体を探すために周囲を見回す。
エルザ隊を見つけ、その中のミライを発見して険しい瞳を大きく見開いた。
(星無……まさか、≪極限解放≫を!?)
全身に純白のオーラを纏い、光を帯びた空色の双眸。
以前と姿が異なるミライを見て、イッキはミライが≪極限解放≫だと瞬時に理解した。
そして、
「そうか―――星無、お前が俺たちを救ってくれたのか」
イッキの険しい表情が柔らかくなり、呆れたように微笑んだ。
その一言に復活した候補生は、ミライが自分たちを復活させ、自分たちを殺したクアの軍勢を倒したのだとわかった。
一斉にエルザ隊の元へ駆け寄ってくる。
ミライに、お礼を言いたくて……。
男子は「星無さーん!!」と、女子は「星無くーん!!」と、満面の笑みで一斉にエルザ隊の元へ駆け寄ってくる。
ミライに、早くお礼を言いたくて……。
「星無さん、ありがとう! アイツらをぶっ倒してくれて、俺たちを救ってくれて……!」
「星無さんがいなかったら、幻滅師になれないまま、みんな死んでたよ……生き返らせてくれてありがとう!」
「私たちの英雄だよ―――本当の本当にありがとう、星無君!!」
候補生から、一斉に感謝の言葉がミライに降り注がれた。
しかし―――彼らだけじゃなくて、四人のトモダチも。
「ミライ、ありがとな」
「ミライくん、ありがとうございました!」
「ありがと、ミライっちっ★」
「……ありがとう」
みんなからの『ありがとう』を一心に受け止めたミライ。
だから、それを元の自分で受け取りたくて、ミライは≪極限解放≫を解除した。
固有世界が徐々に崩壊を初めて、やがて現実世界へ全員で帰還する。
その時、太陽が昇った。
夜明けが訪れたのだ。
長きに渡る戦闘かと思っていたが、極限の中での命のやり取りで時間が凝縮され、
そう勘違いしていたようだ。
ミライは太陽の光を背にして、
「―――うん。どういたしましてぇ」
あははぁ、とやはり無邪気な笑顔を見せた。
この笑顔を見た誰もが、どんな闇をも晴らし、どんな絶望をも打ち壊す―――
『希望』だと思った。




