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第三話 出発

その後、レインはジェナを連れて、村外れの小さな木造の家へ戻った。


大きくはないが、そこそこ整っている。


レインは扉を開け、そのまま中へ入る。


「明日、出発するんだよな?」


「はい! ここからラファエル王国までは、およそ五日ほどです!」


「面倒だな……遠すぎる……」


ぶつぶつ言いながら中へ入ったその瞬間——


「ぐぅぅ……」


腹が鳴った。


レインは足を止め、ジェナを見て言う。


「腹減った。飯、作ってくれ。材料はそこ。」


「ええ!? 私、客なんだけど!? ご飯作るの!?」


「当たり前だろ。」


レインは当然のように言い放つ。


「一緒に行けって言ったのはお前だしな。それに俺は忙しい。荷物まとめるんだよ。」


ジェナは一瞬固まり、やがてため息をついた。


「……はいはい、分かりましたよ……」


—————————


「できましたよー!」


しばらくして、ジェナが顔を出す。


レインもほぼ荷造りを終えていた。


もともと一人暮らしで、持ち物も少ない。


まとめても、小さな旅用バッグ一つ分だ。


レインは食卓を見て、少し驚いた。


「へぇ……意外と料理できるんだな。」


「古代の王族って聞いてたから、もっとドタバタするかと思ってた。」


「ふふん♪」


ジェナは得意げに胸を張る。


「料理は趣味の一つですから!」


「ほら、早く食べてください。」


「明日は朝早いんですからね。」


レインは食べながら言う。


「そうだ、あとでちょっと出てくる。」


「ここで待ってろ。」


「? 何しに行くんですか?」


「大したことじゃない。」


レインは立ち上がる。


「世話になったやつらに、挨拶してくるだけだ。」


—————————


食事を終えたレインは家を出る。


向かった先は、村の鍛冶屋だった。


扉を開けて叫ぶ。


「ライルおっさん! いるかー!?」


「いるいる! 聞こえてるって!」


奥から声が返る。


「耳悪くねぇんだから、そんなデカい声出すな!」


「なんだ? 用か?」


奥から男が姿を現す。


無駄のない筋肉で引き締まった、精悍な体つき。


そして左腕は——義手だった。


調整していた義手を脇に置き、レインを見る。


「別に大したことじゃねぇよ。」


レインは頭をかく。


「明日、ここ出るからさ。挨拶しとこうと思って。」


「ほぉ~? やっとその気になったか?」


「違ぇよ……」


レインは不機嫌そうに顔をしかめる。


「変なのが来てさ。理由も言わずに連れてこうとするんだよ。」


「ははは!」


ライルは豪快に笑う。


「いいじゃねぇか! 男なら一回くらい冒険してこい!」


ニヤリと笑う。


「で? 男か女か?」


「女。」


「お、いいねぇ~」


「うるせぇよ! 変なこと言うな!」


「はは、悪い悪い。」


ライルは手を振る。


「まあ、せっかくだ。」


「出ていくなら、餞別をやるよ。」


「ちょっと待ってろ。」


—————————


ライルは奥へ入る。


視線の先には——


壁に掛けられた一本の銀色の槍。


手に取り、静かに呟く。


「……相棒。」


「俺はもう、限界だ。」


「だが、お前にはまだ出番がある。」


槍に刻まれた龍の紋様が——


わずかに赤く光った。


—————————


レインが待っていると、ライルが槍を持って戻ってきた。


「おいおい……マジかよ……!」


レインは目を見開く。


「おっさんの店、外ボロボロなのに……こんなもん隠してたのかよ!?」


「誰がボロボロだ!」


ライルは槍で軽くレインの頭を叩く。


「いってぇ!」


「だって外、普通のもんばっかだろ!」


「中にこんなのあるなんて思うかよ!」


「お前なぁ……」


ライルはため息をつく。


「まあいい。」


槍を差し出す。


「こいつは“龍槍”。」


「世界に十体しかいない真龍、そのうち一体の核で作られてる。」


「とんでもねぇ代物だ。」


「ただし——今のお前じゃ、せいぜい五パーセントも引き出せりゃいい方だな。」


「は?」


レインは固まる。


「マジかよ……」


「本当だ。」


ライルはニヤリと笑う。


「使いこなせるかどうかは、お前次第だ。」


「持ってけ。」


レインは槍を受け取り、少し黙る。


そして顔を上げた。


「……サンキュ。」


ライルは豪快に笑う。


「ははは! 気にすんな!」


「どうせ俺にはもう使えねぇ。」


肩を叩く。


「その代わり——」


「たまには戻ってきて、酒くらい付き合えよ。」


レインは笑った。


「ああ、分かってる。」


—————————


その後、レインは村の連中に軽く挨拶を済ませ、小屋へ戻った。


翌朝——


二人は一頭の馬に乗り、村を出た。


蹄の音が、道に響く。


レインは振り返り、遠ざかる村を見つめる。


「……まさか、俺がここ出る日が来るとはな。」


ジェナはあっさり言う。


「それはあなたが怠けてただけですよ。」


「夢もないし。」


「うるせぇな。」


レインは眉をひそめる。


「さっさと行くぞ。時間ねぇんだ。」


馬の腹を軽く蹴る。


速度が上がり、二人はそのまま走り出した。

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