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牧歌的な午後のひと時を過ごす第56話

念話の練習にも飽き、エレノアの水分補給の為、瑞希が水場へ向かう。

エレノア自身歩行も浮遊も可能なので水場まで自力で移動は出来るのだが、瑞希が桶一杯の水を運んで来ている。

これはエレノアが命令した訳ではなく、念話の練習に付き合ってもらっているお礼として瑞希が自ら買って出たものだ。

この頃になると瑞希の筋肉痛も起きぬけに比べ大分良くなってきている。

痛みを庇うような動きで多少のぎこちなさは残っている。

『は~。極楽極楽♪』

桶に全身浸かるように座り、まるで浴槽に浸かっているが如く桶の縁に体重を預け寛いでいる。

「エレノアってオッサン臭い所あるよな」

「だよね。思考がちょっとね」

『絶世の美女を捕まえて何を言ってるのかしら。美女の貴重な沐浴シーンをタダで見てこの言い様。救いがたいわね』

「いや、思いっきり服着てるし」

「そういう問題じゃないでしょ」

「そういう問題だろ」

「いやいや、そもそも植物だよね?」

「見た目の問題だろ。エッチな雑誌があったとして、写真だからとか絵だからって文句は言わないだろ」

「見た目だって幼女だよ?」

「特殊な趣味をお持ちの方だっているだろ」

「大輔も?」

「いや、どちらかと言えばドリュアスの方が好みだな」

大輔の無茶苦茶な理論に呆れ気味の瑞希。

「それに自分で美女って……」

大輔を論破する事は不可能と考え、矛先はエレノアに向かう。

「可愛いのは事実だろ。美女かどうかは別だが」

『うっさいわね。用事が済んだならあっちに行きなさい。シッシッ』

瑞希と大輔に対して口が悪いのは毎度の事だが、今回に至っては瑞希のあまりにもデリカシーに欠けた一言がエレノアの逆鱗に触れているのが発端である。

エレノアの言い分を飲み、追い払われる形で退去をする事を決める瑞希と大輔であった。


屋敷内に戻った瑞希と大輔。

エントランスに漂う良い香りにいざなわれ2人は食堂へと吸い込まれるように足を運ぶ。

腹の具合も丁度良い感じに空いていた2人はスチュワートに軽い挨拶をして席に座る。

スチュワートの相も変わらぬ手際の良さであっという間に2人の前に昼食が並ぶ。

そして、大輔の料理が運ばれてから食べ物を口に運ぶまでの行動も流れるような作業で瑞希も呆れるほどだった。

「だいちゃん、いただきますは?」

「はいはい。いただきます、いただきます」

「もーこの子ったらいつもこうなんだから」

「何処の喧しいオカンやねん」

「冗談はさておき、やっぱり感謝の気持ちとお礼と挨拶は何事においても重要だからね。忙しい時は仕方ないけど、余裕がある時はしっかりね」

そう言うと瑞希は両手を合わせ「いただきます」と言い食事を始めた。


食事を終え、食器を下げる序でにスチュワートの手伝いの時間。

皿洗いに始まり厨房を含めた食堂全体の清掃をする。

清掃が終了したのち、瑞希と大輔の2人は特にやる事も無かったので、そのまま食堂に居座り雑談を始めた。

勿論、スチュワートの許可は得ている。

雑談を始めた2人の前に水の注がれたグラスが2つ並ぶ。

スチュワートが気を利かせて2人の前に置いたものだ。

瑞希は手伝った意味が無くなるのでは?と一瞬疑問に思ったが、口に出すのは人の行為を無碍にするような行為だと感じ、スチュワートに水を持ってきたことに対するお礼を言うに留めた。

スチュワートは軽く会釈をすると食堂を後にした。

恐らくヴァンの様子を確認に行ったのだろう。

ヴァンが起床していればヴァンの身の回りの世話をし、まだ就寝中なら他の作業をする。

そんなスチュワートの後姿を見送りながらも瑞希と大輔の雑談は続く。


1時間ほど雑談をしていた2人だが、スチュワートが戻る気配が無い。

スチュワートが食堂に戻らないと言う事は即ちヴァンはまだ就寝中と言う事だ。

暇を持て余した2人は散歩がてら庭へと出る。

適当にぶらついていた所、エレノアが作物に水を与えている光景が瑞希の目に留まる。

瑞希はエレノアに近づくと声を掛けた。

「エレノア、何か手伝おうか?」

『じゃあ、全ての作物への水やりと私の水の準備。それと水浴びが終わった後の全身マッサージをお願いしようかしら』

本気なのか冗談なのかは不明だが、エレノアから返答があった。

先程の瑞希の失礼な発言による不機嫌さは消えているようだ。

「……じゃあ、そう言う事で。お仕事頑張ってね」

エレノアの返答を聞き、踵を返そうとする瑞希。

『わー!!冗談よ冗談。本当に冗談が通じないんだから。私はこっち側から水は与えてるからあなた達は反対側からお願いするわ。朝にも水は与えているし、夕方にも見回って足りない分は補給するから土の渇きを潤す程度で十分よ。あと出来れば雑草を抜いていただけると助かるわ』

エレノアを見捨てようとする瑞希を必死で引き留め仕事を与える。

仕事と言っても只の軽作業なので大した労働ではない。

瑞希も元々はエレノアの手伝いをするつもりだったのでエレノアの到底謝罪とは言い難い言い分を聞き入る。

大輔と相談をし、筋肉痛の痛みから屈んだりしゃがんだりの行為が辛い瑞希が水やりを。除草作業を大輔が担当する事となった。


庭園内はいくつもの畑が種類ごとに区分けされている。

1つ1つの畑は1人で行うにはそれ相応の時間を要する作業だが、3人で動くとなると多少の手狭さを覚える大きさ。

エレノアが事前に作業をしていた事もあり、ものの十数分で作業は完了した。

特に水やりと草抜きを同時進行出来たのが大きいだろう。

とは言え、植え替えたばかりで一部雑草なのか作物なのか不明な草があった。

作物は割と整然と並んでいるので列から外れ、まばらに生えている雑草を間引く程度に納めていた。

その事は作業終了時にエレノアにも報告済みで後でエレノア自身が確認するとの事だった。


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