【番外編】オレは妹に恋をした(硯都side)2
母校の中学校で行われた同窓会。オレ・雨畑硯都が、高校を卒業してから親しくなった野牛島樹李と話していると……そこへ双子の姉妹・菱山天と菱山空が話に割り込んできた。
「何よ樹李、アンタ中学のとき硯都と親しかったっけ?」
「最近だよぉー! ねぇ硯都!」
「あぁ」
「でも意外だなー、アンタたちが付き合ってたなんて」
「いや付き合ってねーし!」
「ダチ同士だし!」
「にしても意外な組み合わせだわー」
いや樹李とオマエら双子も意外過ぎるわ! この三人と尾白貴音は中学校から仲良し四人組だったが、小学校時代は違っていたような気がする。
菱山姉妹……この二人は中学時代、尾白貴音の次に美人ということで男子の間では有名だった。ただ……
「でもさぁー、樹李って硯都好みのサイズじゃないけど……いいの?」
「いや天にだけは言われたくねーし」
姉の天は口と性格が悪い! 実はいづみさんにフラれてすぐ、学校内でオレがフラれたことと同時に巨乳好きだというウワサが一気に広まった。
「で、どうなのおっぱい星人! イイ人見つかったの~?」
それまで女子からモテまくっていたオレがいきなり「おっぱい星人」というあだ名を付けられ「女の敵」扱いされ女子全員から嫌われてしまい、残りの中学生活は悲惨なものだったが……そのウワサを広めたのが菱山姉だというのはほぼ確実!
「いやぁ、まだだね……そういうケアレスイチローはどうなの?」
「うぐぅ!」
でも問題ない。菱山姉に復讐する方法はたった一言でOK! 実はこの女、大学受験に失敗している。元々勉強はできる方だがコイツには致命的な欠陥があるのだ。
それは「猪突猛進型」の性格! 樹李も「暴走機関車」と揶揄しているがコイツは中学、いや小学校時代から一度思い込むと周りが見えなくなるのだ。
大学受験のとき、コイツは全ての試験をケアレスミスで解答したらしい。もちろん結果は不合格……姉妹揃って同じ大学に進学するつもりが、姉の方が一浪して妹の後輩になってしまった。それ以降、樹李に「ケアレス一浪」という不名誉なあだ名を付けられてしまったのだ。
「樹李ぃ~、アンタしゃべったなぁ~!?」
「だーって! こんな草生える話、共有しなきゃもったねーじゃん、なぁ空」
「卒論頑張ってね、後輩」
「ぐはぁっ!」
まぁこんな感じで、菱山姉はイジられキャラとしてメッチャ扱いやすい。オレに不名誉なあだ名を付けてくれた分、じっくりと仕返ししてやろうじゃねぇか!
ただ……問題は妹の空! コイツはマジで謎だらけだ。
小学校時代から何かと悪目立ちしていた姉と違い、コイツは姉にピッタリくっついて会話すら姉にまかせっきり……そしていざというときオイシイ所を姉から全て奪ってしまう、まるでコバンザメの様にあざといヤツだ。本心が手に取るようにわかる姉とは対照的に、この妹は何を考えているのかさっぱりわからない……
オレは……この菱山空が大の苦手だ。
※※※※※※※
「ちわーっす! 荷物をお届けに参りましたー」
同窓会が終わって一週間後の週末、オレはいつも通り配達の仕事をしていた。今日は本屋へ雑誌の配達だ。
ここは街で一番大きな本屋。最近は電子書籍の普及で紙の本が売れなくなっているらしい。あと……これはオレも実感しているが、例え紙の本でも本屋を通さず通販で直接宅配されるパターンが多い。街の本屋も大変だなぁ……
「あ、ご苦ろ▲¥&@%……」
店のバックヤードからかすかに声がしたが……あれ? いつもの店員さんじゃないな。声が小さすぎる……バイトか?
――げっ!?
目の前に現れたのは、本屋のエプロンを着けた菱山姉妹のどちらかだ。
「あ゛……」
向こうもオレに気付いた……これは間違いない、妹の空だ! 姉の天だったら気付いた瞬間、オレをイジリに来るはず! あれ? でも……
「なぁ、菱山妹だよな……何やってんだこんな所で?」
最初は学生の菱山姉がバイトをしているのかと思った。なぜそう思ったかと言うと、菱山妹は図書館で働いている……と樹李から聞かされていたからだ。
「アルバイト……それと、空だよ」
「えっ、図書館じゃねーの?」
「週末だから休み」
「休み? いやいや、フツー週末って言えば図書館混むんじゃねーの?」
「あ……」
何かに気付いた菱山妹は、相変わらず少ない口数で淡々とオレに話した。菱山妹は図書館の司書だが、勤務先は高校の図書室……学校司書というらしい。でもって週末、学校が休みの日にこの本屋でアルバイトをしているそうだ。しかも……
「その高校……オレの妹が通ってるけど」
「あ……もしかして鈴里さん?」
「えっ、何で名前知ってんだよ」
「だって……」
どうやらオレの妹の鈴里は、高校の図書室で一番本を借りている生徒らしい。菱山妹は貸出し履歴が断トツで多い妹の名前をいち早く覚えてしまったようだ。
妹は昔から本が好きだ。彼女の部屋は床が抜けてしまうのでは? と思うほど本であふれ返っている。
だが親父が亡くなって以降、妹の本棚から本が増えることは無くなった……そうか、学校の図書館でずっと借りていたのか。オレは妹に大好きな本も買ってやれないとは……目の前にいる同級生に知られたくなかった。
「リクエストも一番多いよ。でも良い本ばかりだからできるだけ買うようにしている……こういう本と違って」
菱山妹が指差した先にあったのは「週刊ルード」という雑誌……いわゆるゴシップ誌だ。
「あぁ、オレも好きじゃないけどね! こういう雑誌」
「でも……売れるんだよね、不本意ながら」
不本意……か。まぁ仕方ないよな、売れれば卑猥な雑誌だって売る……それが商売ってものだ。今回の荷物は週刊誌などの雑誌がほとんど……量が多いのでかなりの重さだ。菱山妹はその雑誌を倉庫に持って行こうとしたが、
「う……」
全然持ち上がらない。本扱っているのにその非力さ!?
「しょうがないなぁ、倉庫まで持って行ってやるよ」
「あ……ありがと」
同級生のよしみ……それと妹も世話になっているみたいだし、しょうがない。オレはこの店に卸す本を全てバックヤードの倉庫に運んでやったが……あれ!?
いつの間にか菱山妹がいなくなっていた! あのヤロー、人に全て持たせて自分は知らん顔かよ!?
そういえばコイツは昔から、面倒臭いことは全て姉を利用して自分はちゃっかり楽する性格だ。ま、簡単に利用される姉も姉だが……ところが、
「硯都、お疲れ……コーヒー飲む?」
オレが荷物を運んでいる間に、菱山妹は店の前にある自販機で缶コーヒーを買っていたのだ。しかもこれ、昔からオレが好きな甘ったるいロング缶のコーヒーじゃないか!
「えっ、オレがこれ(缶コーヒー)好きなの何で知ってんの?」
「中学のとき……貴音ちゃんから聞いた」
うわっ、それってオレが尾白をデートに誘ったときにおごったヤツだよな……黒歴史だ!
それにしても……そんな昔の話、よく覚えていたな? オレはますます菱山妹が理解できなくなった。
貴音なのです。貴音が硯都に缶コーヒーをおごってもらったエピソードは、「貴音は男の子からデートに誘われたのです(貴音side)」に書いてあるのです!
……振り返って第1話から読むのです!




