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貴音はブラジャーをしてみたいのです(貴音side)前編

 


 ある日のことなのです……。



 貴音は落ち込んだ状態で学校から帰ってきたのです。


「ただいまなのです」


 貴音が帰ると、ママさんが声を掛けてきて……


「貴音ちゃんおかえり! 悪いんだけど、この洗濯物をお姉ちゃんの部屋に持って行ってくれる?」


 と、貴音にお手伝いを頼んできたのです。


 ――貴音は良い子なのです。ちゃんとお手伝いするのです。


 貴音は洗濯物が入ったカゴを二階に持って行ったのです。学校のカバンもあったので大変だったのです。カバンを部屋に置いてから、貴音は洗濯物が入ったカゴを持っておねえちゃんの部屋に行くのです。


「こんこん、入るのです」

「……」


 おねえちゃんはまだ帰っていないようなのです。貴音はおねえちゃんの洗濯物が入ったカゴを置いたのです。


 ――そのときなのです。


 おねえちゃんの洗濯物の中に、とても気になる物を見つけたのです。



 ――おねえちゃんの『ブラジャー』なのです!



 貴音は悪い子ではないのです。おねえちゃんのブラを勝手にカゴから取り出して手に取ってみたりしないので……てっ、手に取ってみたりしな……



 ……貴音はおねえちゃんのブラを手に取ってじっくり観察していたのです♥


 ――貴音は悪い子なのです。



 ※※※※※※※



 貴音はブラジャーを着けていないのです。貴音にはおっぱいが無いので着ける意味がないのです。でも……


 今日は学校で体育があったのです。最近は着替える度に、ブラを着けて来るクラスの子が増えているという現実を貴音は知るのです。

 今日はついに貴音のお友だち、双子の「(てん)ちゃん」と「(くう)ちゃん」がブラを着けてきたのです! 二人は貴音と同じ「ぺっちゃん子仲間」だと思っていたのに……裏切られた気分なのです。


 ――本当は貴音もブラジャーを着けたいのです!


 ブラを着けると「大人」って認められる気がするのです。友だちがみんな大人になっても、貴音は子どものまま置いていかれるような気がして不安なのです。


 なのでおねえちゃんのブラをじっくり観察して「予習」するのです。おねえちゃんのブラ……それは「大人の世界」なのです。驚きの連続なのです。


 外からは見えない下着なのにキレイな刺繍がしてあるのです。しかもカラフルなお花畑なのです。まるで夢の世界にいるようなデザインなのです!

 おっぱいの下を支える部分はとても硬いのです。こんなのが肌に当たって痛くないのですか? ホックが三か所もあるのです。どうやって着けるのですか? 肩ひもが調整できるのです。着ける度に調整するのですか? わからないのです!


 貴音にはブラのすべてが新鮮に見えるのです。そしておっぱいを包んでいるカップを指で押さえると厚みがあるのです。


 これがおねえちゃんのおっぱいを優しく包んでいるのです。そう考えたら……何となく匂いも嗅いでみたくなったのです♥


 くんくん……柔軟剤の匂いしかしないのです。当たり前なのです。


 ――そのときなのです!


「あ~っ、下着ドロボー!」


 お姉ちゃんが帰ってきてたのです! 貴音がブラの匂いを嗅いでいるところを見られてしまったのです。


「ひいっ! ちちち違うのです! こっこれは違うのです」


 貴音はおねえちゃんにひどく叱られると思ったのです! ところがおねえちゃんは叱るどころか、貴音の顔を見るとニヤニヤしながらこう聞いてきたのです。


「なーに? 貴音ちゃん、ブラジャー着けてみたいの?」


 ――ぎくぅ! 図星なのです。


「そっ、そんなんじゃないのです! 貴音は……おっ、おねえちゃんのおっぱいが好きだからそっ、その……おねえちゃんのブラジャーに興味があるのです!」


 貴音はとっさにウソをついたのです。でもあながちウソとも言い切れないのですが、これってよく考えたらヘンタイさんのセリフと大して変わらないのです。


 すると、おねえちゃんはこんなことを聞いてきたのです。



「貴音ちゃん、どう? 今度ブラジャー買いに行ってみる?」



 ――えっ?



 欲しいけど……ムリなのです。


「たっ、貴音はまだそういうの必要ないのです! 貴音はおっぱいが無いのです」


 そう言って貴音は自分の部屋に逃げたのです。そしてそのままベッドへダイブしたのです。


 ――うわぁああああああああっ!


 貴音はベッドで足をバタバタさせながら後悔したのです。



 ――素直に「欲しい」って言えばよかったのですぅううううっ!



 ※※※※※※※



 〝コンコンッ〟


「入るよー」


 しばらくして、おねえちゃんが貴音の部屋に入ってきたのです。


「貴音ちゃーん……」

「貴音はブラジャーなんてしないのです」


 おねえちゃんは親切心で言っているのです。でも、貴音は素直じゃないのです。


 貴音だって本当は欲しいのです。でも、こんな限りなくゼロに近いおっぱいでブラ買いに行ったら絶対笑われるのです。とても恥ずかしい思いをするのです。


 ――だからおねえちゃんの言うことは聞けないのです。


 するとおねえちゃんは態度を変えたのです。


「おい下着ドロボー! 警察呼ぶぞ」


 ひえぇっ! 警察呼ばれたら貴音はおまわりさんに逮捕されるのです! それは絶対にイヤなのです!


「たたたっ貴音は何も盗ってないのです! 盗ってないのです!」

「わかってるよぉ~冗談だよ! 貴音ちゃん……今度の日曜、なんか予定ある?」

「えっ、クララのお散歩と家でご飯を食べること以外特にないのですが……」


「じゃあさ、お姉ちゃんとデートしない?」


 えっ、何でデートなのですか? そりゃおねえちゃんとデートなんてうれしくて天にも昇る気持ちなのですが……


 ――はっ!?


 これはきっと「ワナ」なのです! デートと見せかけて貴音にブラを買わせる気なのです。その手には乗らないのです!


「結婚を前提にしている人以外とは法律でデートしてはいけないのです」

「あははっ、そうじゃなくてさ……お姉ちゃんの買い物に付き合ってくれない?」


 あっ、おねえちゃんの買い物だったのですか? でも油断禁物なのです。


「……貴音に何かメリットはあるのですか?」


 それにおねえちゃんが買い物を楽しんでも、貴音は何も用事がないのです。つまらないのです。


「パフェおごってあげる♥」

「行くのです♥」


 ……自分でも情けないくらい「ちょろいヤツ」と思ったのです。


 ※※※※※※※



 日曜日なのです。


「「行ってきまーす」」


 貴音はおねえちゃんと電車に乗って隣町のショッピングモールに行くのです!


 このショッピングモールには初めて行くのです。貴音は今から……



 ――パフェを食べに行くのです♥



 ……えっ、違うのですか?


貴音なのです。貴音はパフェ<おねえちゃんのおっぱいなのです♥

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