〜 現状 〜
自分の想像を遥かに超えた怪物ラルフォートが去った、無力な自分を知った俺は、力を磨く為、北條さんから霊力を学ぶことを決意していた。
「まずはタケル君、君は今、現状を何も知らない状態ですね。光堂君、私から彼に色々話せる事、話しても良いかな?」
「お願いします」光堂は北條の提案に頷く。
「まずは少しパラレルワールドと言う概念をお話しよう」
「パラレルワールド?」さっきラルフォートの戦いで話してた?
「聞いた事あるかな?」
「パラレルワールド?ん〜なんか聞いた事あるような」
「では、話させて貰います。この世界には無限のシナリオの世界が同時に存在している」
「は?」
「例えば君は今、私と出会っているね。実は君が私に出会ってない世界も今同時に存在している、つまり無限のパターンの世界がここにはあります」
「えっ?て事は、俺は今ここにいるのに、他の世界にも俺が居る?えっ?じゃあ俺は?一体どれが本物、え?」
「タケル、お前の無い頭で、難しい事は考えるな、今知ってほしいのは色んなバージョンの地球が無限にあるって事だけで良い」光堂が言う。
「例えば、今お前は白いスニーカーを履いてるが、玄関にあった黒のスニーカーを選んだ時間軸の世界も同時に存在してる、ただ白いスニーカーを選ぶと言う現実を選択し、体験してるのが今のお前だ」
「ラルフォートと戦ってる時、私が使った、技ではないのですが、今はあえて、技と言いましょうか、あれは無限に存在するパラレルリアリティを自らの意志で望む現実に移動したのです」
「無敵じゃないっすか」
「ふふっ、今迄はですかね」
「?」
再び北條が話し出す
「人は知ってても、知らなくても毎瞬こうして、違う次元の地球、つまりパラレルワールドに瞬間、瞬間移行しています。
気づいていないかも知れませんが、全く同じ地球に居る様に見えていても、文字通り、毎瞬違う、時間軸の地球に移行して現実は動いています。
つまり自分の選択次第で、無限にある現実世界を移行して体験出来る様に、ここの宇宙はなっています。
本来人は、自由に自ら選択する自由意志と力を持ってここにいます。そして話したいのはここからになります」
「良く聞いて下さい。実は全ての存在には無限の宇宙エネルギーが流れています、いや、全ての存在こそが、無限の宇宙エネルギーそのものと言っても間違いでありません」
「へぇ〜凄いな(既に良く分かってない)」
「さて、ここからが問題となります。実は私達が今居る、時間軸の宇宙に、自らだけを、絶対的な神と完璧に認識してる意識が現れました、正確にはずっとそれは存在していたんですが。
その意識がこの壮大な宇宙で膨張し、力を現したのです。
それは、この宇宙で完全なる神として確立されてしまう程のとんでもなく強い意識エネルギーとなっています」
「ん?良く分からないっすけど、それの何が問題なんすか、結構な事じゃないっすか?みんなが、そのエネルギーをあえて神と呼ぶなら、みんながそれなんすよね、なら自身をそれと認識する事に何の問題が?」
「タケル君、言った様に、皆にその宇宙エネルギーが流れてるなら君も、地球に存在する全ての存在も、その存在同様に無限のエネルギーであり、同じ力を持っていると言う事になります、自身の認識具合により発動される能力は異なりますが、しかし、問題なのは、その意識を持つ存在は自身だけを神と認識していると言う事です、己だけが絶対的な創造主で他者は違うと認識しているのです」
「この時間軸のパラレルワールドの宇宙に在る、その意識存在とは、先程のラルフォートが主と崇める存在と同一、つまりその意識存在は自らに流れる神の力を、その為に行使する事になります。
地球、宇宙、霊界全土に住む全魂の存在を、その存在が、自らの思いのままに創造する、強いて言うなら、他の者にはなんの権利も無い宇宙が始まる事になります、その存在は、自らを特別にし、他の存在に神のエネルギーを持たせる事を許さないと言う決断を無意識下の中、選択しました、それが今この宇宙の現状です」
「あっはっは困るなぁ北條さん、確かにそりゃやばい、だけど何をそんな深刻になる必要があるんすか。
ちっちっち、忘れちゃいませんか?パラレルワールドを。なら、そいつの居ない次元に行けば良いだけの話じゃないっすか。ほら早く勿体ぶらずに教えて下さいよ、その方法を!」
「そいつの存在しない、パラレルの世界に移行すれば良いだけの話じゃないっすか」
光堂が答える「残念ながら奴はこの地球次元から、大きく変わる他のパラレルワールド移行を既に出来なくさせる決定を下した」
「え?何ですって」
「あっはっは、笑える、傑作だな」神井が突如笑い出す
「俺は一つ笑える事実に気づいたぜ、北條、光堂、貴様らは、前からこの状況になる事に気付いていた、ここまでになる前に、この次元の地球から移行して逃げられていた筈だ、貴様らは、自らここに残ったな?下らねえな、ここの宇宙に残る他の存在達を見捨てられなかったって事だろう」
「本当かよ?光堂さん」
「つまり、この現状が導き出す答えはこうだ。この地球は地獄の悪魔も真っ青になり、逃げ出すくらい最悪のパラダイムにある地球だって事だ」
「そうなのかよ光堂さん?」
「ああ、残念ながらそうだ。だけどまあ心配すんな、俺たちも居るし、他の仲間達も宇宙に沢山居るから」
「本当かよ?相手は宇宙の法則とやらまで変えちまう事が出来る程の奴なんだろ?
ここでそいつは、絶対的な神として存在する事になんだろ?
そいつがさっきのラルフォートみたいなクレイジーな野郎だったらって考えるだけでゾッとする、ここには家族や友達も居るんだ、そいつは人々をこの次元の現実から出させない様にして、一体どうするつもりなんだ?俺にだって、その先の酷い未来が想像つくぜ」タケルが声を荒げ言った。
「タケル落ち着け」
「ハッハッハ、間違いなく人間共は永遠に苦しむ世界から逃げ出せなくなるな、魂まで傷つけられる様に変えちまう程の意識エネルギーだろ、生きてても地獄、死んで霊体になっても逃げられなくするくらい、そいつなら容易い筈だ、つまり無限地獄から永遠に抜けられなくなるって訳か、この宇宙に住む全ての存在は、こいつは傑作だな」
「うるせえ神井。って言うかよ、じゃあこの宇宙を創った神って野郎は何してやがんだ?この現状を助けてもくれないのかよ?見捨てるのかよ?」
北條がタケルを見つめた「最初から、そのエネルギーはこの宇宙を創造などしていません」
「なんだって?」
「最初から神と言う存在が居たとしても、良いも、悪いなども、判断などしてないんだタケル、エネルギーはただそこに在る、存在するエネルギーがクリエーションした世界なんだ」
「そして、今この宇宙の全体意識が選んだのは無力感」
「他のパラレルワールドの存在の介入も不可能、つまり助けなど来ない」
ヒュオオオオーーーー ヒュオオオオーーーーーーー
タケルは広大の宇宙の中、たった一人放置された様、見捨てられた様なそんな感覚になる。
俺は? いったい
ポン
肩を叩いたのは北條だった。
「どうしますか?絶望に打ちひしがれ、創造を続けるだけか、今、向き合い、立ち上がるか、自分で決めなさい、君にも無限のエネルギーが内側に流れているのだよ」
ギリッ
「ああ、やってやらぁ、やってやる」恐らくこの世に生を受けてから一番深く、激しく、力強く、なにかに向けタケルは叫んでいた。
俺はこの現状を知り、立ち上がる決断をした。
ここから全宇宙、霊界、魂、全てを巻き込んだ壮大な旅が始まる事となる
〜 アンブラインドワールド 〜