~ 第三の発動 ~
ピクリとも動けない。
相手の0.1秒の所作の変化、心臓の鼓動の些細なズレ、全てを見逃せなかった。
タケルの緊張の糸は今にも張り裂けそうだった。
明らかにエバーフーミーの空気が今までとは変わっている。
光堂さんが来たことで、全力を出したんだ。
あいつ、本当に俺達と戦ってる時は手を抜いていたんだ。
くそっ集中しろ、俺。
光堂、神井、タケルは相手と向き合い、ピクリとも動かない
くそっ、なんて、でかく見えるんだエバーフーミー
タケルがそう思った瞬間だった、何者かに背中を押される
ズウォン
傾いた身体の場所に光線みたいなものが通ったのが見えた。
「集中しろタケル、死ぬぞ」
それは光堂の声だった。
俺は光堂さんに背中を押されていなかったら、死んでいた。
光堂がタケルを助ける為に作った隙を、当たり前だがエバーフーミーは見逃さない、しかし、そこは神井がしっかりとカバーしていた。
「くっくっく、糞ガキめ、やるじゃないか」
タケルは自身に言い聞かす、くそっ、集中しろ、俺が足手まといじゃねえか。
光堂はエバーフーミーと向き合って分かっていた、自分達三人が組んでも、エバーフーミーに到底及ばないと。
それ程までに力の差が開いていたのだ。
選択肢はいくつかあった。
その中で、未来に繋げる可能性があるものは二つ
一、自分が命を懸けて時間稼ぎをして、二人を逃がす
ニ、奇跡を信じ、三人で闘う
光堂は即座に判断する
二人は言っても絶対に逃げない
タケルは俺を見捨てられない、神井はプライドが許さない
光堂は大きな声で叫んだ
「三人で力を合わせて、こいつに勝つしか生き抜く術が無い、全力で事に当たれ」
「ほぉ戦うか、力の差は分かっているだろうに。と言っても逃さないから、戦うしかないのだがな」
「見せてやろう地獄を」
エバーフーミーの両手にどす黒い大きな球体が二つ浮かんだ。
「ヘル ブレスの呪縛」
その球体が地面に吸い込まれたと同時に、三人は黒い球体の中に閉じ込められていた。
「なっ、なんだよこれ光堂さん」
「まずいな、エバーフーミー、結界術も使えたのか」
「どういうことっすか?」
「閉じ込められた」
「あまり得意ではないんだがね結界術、これくらい破れない雑魚と戦うのも興醒めだからな、急いだ方がいい、呼吸がすぐに出来なくなるから、私はここからもがき苦しむ人間を見て楽しむとしよう」
「タケル、神井、全力で霊気を高めろ、内側から破るには、この結界を壊せる程の霊気を放出するしかない」
壊すって、この霊気、半端ねぇっ、タケルの額に一筋の汗が垂れ落ちる。
やるっきゃねぇ。
「うおおおおっ」三人の霊力は一気に全開となる。
頼む、壊れてくれえええぇっ
天上にひびが入る
「もうちょいだ、踏ん張れ」
光堂のその言葉の直後だった
タケルの霊力が一気に落ちていく
「うっ、嘘だろ、こんなのって」
タケルは限界だ。
俺がやらなければ、光堂も全力で力を振り絞るも。
霊気はどんどん小さくなる。
くそっ、吸い取られてるのか。
まずいっ、このままじゃ
場面は変わる
「マナ、怪我人を連れて逃げるウキ、こいつらには勝てないウキ」
「妾は覚えておるぞ、貴様は確か、あの時、光堂と一緒に居たなぁ」女狐は不気味にほくそ笑む
「マナ、逃げろウキ」
「ペレー」
ペレーの首は掴まれ、宙に持ち上げられたペレーの足は地面から離れている
「猿よ、光堂の居場所を教えろ」
「知らないウキ」
「そうか、なら死ね」
ペレーの周りに結界が張られる
「マナ、逃げろって言ったウキ」
「ほぉ、中々の結界」
「だが、術者の身が、がら空きだな」
既にマナの背後に居た鬼神
速いっ、マナが気付いたときには鬼神の一撃は放たれていた。
「マナー」
ズゥゴオオン
マナは鬼神の一撃により、地面に倒れる
「さて、猿を殺すとしようかねぇ」
ペレーの身を守る結界は解かれてなかった。
「ほぉ、まだ生きていたか」
マナはこの状況下、ペレーと周りに居る人々に結界を張り、守っていた。
もし自分にも結界を張ったら、周りの結界は弱くなり、破られるだろう。
この状況、どうしたら……
考えるのよ、皆を助ける方法を。
一つある
「結界解放」
ペレー達を包む結界の一つ外にもう一幕の結界が張られた。
「何やってるウキかマナ、こんなの駄目ウキ」
結界解放、それは術者が死んでも、解かれず、結界内の者を守る結界。
これなら、私が殺されても、皆を守れる。
「マナずるいウキ、一人だけ犠牲になって、ペレーも一緒に戦わせてくれウキ〜」
光堂、光堂、助けに来てくれウキ、マナが、マナが………
「小娘、速く結界を解くんだね」
目の前に立つのは女狐
「解くつもりは無いわ」
「そう、なら殺すとしよう」
ズグシュ
その頃、光堂達はエバーフーミーの結界に押し潰されそうになっていた。
息も出来ない「すっ、すみませんっ こっ、光堂さん、俺の霊力がもう」
「タケル大丈夫だ、こんな強い相手に、お前は良くやった」
実は光堂は、この結界を破るだけの霊力をまだ持っていた、しかしその霊力を解放せずにいたのだ、何故ならエバーフーミーに勝つ為の温存、最後の布石として残しておきたかったのだ。
今は、ここで出しきらなきゃ全員死ぬ。
その時、最高のタイミングにそれが起こる。
龍神のくれた神力玉がタケルの中で三回目の最終発動を起こしたのだ。
ドクンッ
「うおおおおっおおおおおっ」
「タケル」
結界は内側から完全に破られた。
「すまねぇ、もう大丈夫」
「貴様等ガキ共の先程からの急激なレベルアップ、まさか神力玉を取り込んでいたのか」となると、龍神が自身の力を、このガキ共に分けたと言う事か、何故このガキ共にそんな事を?
エバーフーミーの頭の中でそんな思考が流れた刹那
エバーフーミーの頬はタケルの拳に打たれ、自身の身体は後方の岩を貫き吹き飛ばされていた。
「タケル、この短期間で本当に強くなったな」
光堂はタケルを見て微笑む。
「みんなが俺を助けてくれたおかげっす」
ヒュオオオオオオッ
「ガキ共に一つ聞き忘れた事があった、お前たち霊力を学んでどれくらいになる?」
「始めてそんな経ってない事なんか、お前なんかに教えるかよ」
「おいっ、タケル言ってるぞ」
「うわっ、俺、阿呆かよ」
始めたばかりだと……
それでこの霊力と戦闘技術
そして、龍神が自らの魂と引き換えに残した神力玉を与えた。
こいつら只のガキじゃないな、何者だ。
どちらにせよ、こいつらはここで確実に殺しておかなければならない。
「タケル、お前の神力玉の発動は何回目だ?」
「三回目っす」
「今のが最後か、神井は?」
「ちっ、二回目だよ」
「後一回か、二人共、よく聞け作戦がある」
「エバーフーミーに勝つぞ」
「そうこなくっちゃ」
エバーフーミーは自身の身体に付いた砂埃を払っていた。
「中々、楽しめた、後一年出会うのが遅かったら、私から逃げるくらいは出来たかも知れないな」
「さて、皆殺しだ」
その言葉の直後
三人はバラバラの方向に向かい走り出した。
「何っ?」
こいつら何を企んでいる?三人力を合わせて戦い、勝たなければ、逃げる事すら不可能な事は承知のはず、何故バラバラになった?確実に殺してくれと言ってる様なもの。
エバーフーミーは、神井の後を追った。
「順番に殺してやろう」
逃がすか
凄まじい速度で走るエバーフーミーは、すぐに神井に追いついた。
「残念、余りにも遅すぎたから、すぐに追い付いてしまった」
「当たり前だろう、俺は全力で逃げてもいない」
「どういう事だガキ」
「気に食わないから教えてやろう、奴の作戦はこうだ。俺の神力玉が発動するまでバラバラに逃げて少々時間を稼ぐ、そして発動したら全力で三人の力を合わせ、貴様を叩く。俺は嫌いなんだよ、奴等と力を合わせるなど虫唾が走る」
エバーフーミーはこの時、神井と言う男のポテンシャルの高さに驚いていた。
このガキ、私を目の前にこの口調、立ち振る舞い、そして、この自信、明らかに私のが強い事を知っているはず。
なのに何だ、この威厳は。
素質
まるで何処ぞの王の様な気質
私より上の王
クックック、面白い
そんなのはこの宇宙に君臨する、闇の王しか存在しないではないか。
こいつ……
「ほぉ、それで?」
「俺はこれから確実に強くなる、俺の手下になるなら、生かしてやっても良い」
「くっくっくっく、はーッハッハッハ」
「力をつけてから、言ってみろ糞ガキが、我が王はサタン様ただ一人」
「既に敗北し、この世に居やしないがな」
ブチッ
直後、無数に打ち込まれるエバーフーミーの拳に、神井の意識は飛びかけていた。
その時、神井に取り込まれた、第三の神力玉が発動する。
〜 アンブラインドワールド 〜




