〜 エバーフーミーの実力 〜
そいつは、とてつもなく強大な敵だった。
現時点、正直な話、勝機などは奇跡が起こってもゼロに等しい確率としか思えない程の。
それ程、確かな実力差があったのだ。
目の前に立つのはエバーフーミー、ルシ・サタンの忠実なる幹部の一人
「少しは楽しめた、しかしもう終わりのようだな」
目の前には、打つ手が完全に尽きた二人が居た。
これ程の差かよ、くそっ、強くなったと思っても、また自分より上のレベルの奴が現れ、現実に打ちのめされる、自分より凄い奴はこの宇宙には五万と居るんだ。
強くなっては希望を持ち、また敗北しては、自身の無力感を突き付けられる……これまで、ずっとこの繰り返しだ……
だけどな、そっから、一つ学んだ事がある
諦めなきゃ、可能性は生き続けるって事。
比較の対象が自分なら、必ず昨日の自分は超えているんだ。
「うおおおおっ」
タケルは再びエバーフーミーに向かっていく
「神井、俺が必ず奴の隙をつくる、特別の一撃を頼むぜ」
「馬鹿か貴様、殺されるだけだぞ」
「簡単にはやられねぇよ」
この時、神井はタケルの姿勢に、自分には無いものを確かに見ていた。
こいつの力の源泉、これは……
「懲りない奴だ、次はとどめをさしてやろう」
タケルの全身を白い霊気が包み、光出す。
「やれるもんなら、やってみろ」
タケルは真っ直ぐから突っ込んで行く。
「お前がどれだけ頑張ろうが私には勝てないのが理解出来ないのかな?出会った時点で貴様らは既に死んでいたのだよ、諦め、それしか貴様らには選択肢は無い」
「笑わせるな、そんなの言われて黙って受け入れるかよ」
エバーフーミーはタケルが繰り出した数百発の拳を軽々と躱す
「浄化能力者の様だな」
「育てば強くなっただろう、だがここで芽を摘むとしよう」
「くらえよ、俺の全力の一撃を」
タケルは拳を繰り出しながら、右足に全ての霊力をためていた。
阿呆か、いくら力をためようが、当てられなきゃ意味がない、このガキのスピードは大体把握した、私に攻撃を当てる事は不可能
ズゴオオオオッ
なにっ
エバーフーミーは左頬に重たい一撃を感じた。
「ガキめ、先程までの動きは、私に自身の動きはこれくらいだと思わせる為、全力でやってる様に見せ、わざと動きを落としていた、私を油断させる為」
ニヤリ
「俺の霊力はお前を浄化させる」
エバーフーミーは自身の顔を包みだしたタケルの白い霊気を手で引き剥がした。
「笑わせるな、この程度の力で私を浄化などできるわけが無いだろう、死ねクソガキ」
その直後、タケルは全力で地面に伏せた。
ゴオオオオオオオオオオオーー
物凄い轟音と共に、真っ黒の霊波動がタケルの上を通過して、エバーフーミーを直撃する。
「けっ馬鹿野郎、神井、俺を殺す気か」
「ふんっ、合図などしてたら躱されるに決まってるだろう」
タケルはすぐにエバーフーミーの方を確認する
どうだ、これならちったあダメージを
なんと、エバーフーミーは余裕で躱していたのだ。
「遅いねぇ」
「では、私の番だな」
この言葉の直後、神井の神力玉の二段回目が発動する
うおおっ、霊力が上がって来やがる、これはっ。
神井は既にエバーフーミーの頭上にいた。
「喰らいやがれ」
なんだ、このガキ、先程までとは比べ物にならない程速い、何故こんな短期間にこれ程までの成長を、そう思った直後エバーフーミーの首は吹っ飛んだ。
その直後、神井は背後からの七発の攻撃を受け止める。
「油断しないのは良い事だ、自分よりも断然強い相手と戦う時は一瞬の油断が命取りになる」エバーフーミーは落ちた首を自身の足で踏み潰す。
「首が無くなって大変そうかな」
「大丈夫」
エバーフーミーがそう言うと、首は、植物が地面からはえる様に、無くなった場所から再び再生した。
「少々提案がある、お前達は伸びしろがある。どうだ私の下で働かないか、悪くは無い待遇を与えてやろう」
「これが最後の忠告だ、お前達は残念ながら、今出会ってはいけない存在と出会ってしまったんだ、運が悪かった」
俺と神井は動けなかった、生半可に霊力を学んでいる分、この存在がどれ程の化け物かを理解してしまっているから、俺達は強くなった、確かに強くなった…
でも、こいつの言う通り、今の俺達じゃこいつに勝てない、神井も実力の差は分かっている筈だ。
運良く勝てる相手じゃ無いのだ。
「さあ、返事を」
「勝てない、今の俺達じゃお前に…」
タケルが喋り出す。
「で、どうする、私の下で働くか」
「だがな、俺は諦めない」
「なに?」
「俺には仲間が居るからだ」
タケルは再びエバーフーミーに向かって行く
「そうか、なら死ね」
エバーフーミーはタケルの拳を躱す
「さようなら」
同時に背後から来る神井の拳にもしっかりと気付いていた。
「二人力を合わせたところで勝てないとまだ分からんのか」
二人の拳を掴み、上に持ち上げる
その瞬間、タケルは叫んだ
「神井」
「言われなくても分かっている」
エバーフーミーの立つ足元から、白と黒の霊気が放出される
このガキ共、いつの間に私の足元にこんな物を。
二人はここまで共に戦う経験を積み、言葉をかけずとも戦闘に関しては、お互いの動きを、誰よりも理解していた。
成長していたのは個々の能力だけでは無かった、互いの類稀なる戦闘のセンスが物言わずとて、二人の完璧なる連携を肉体に染み込ませ生み出していたのだ。
二人の息は完璧に合っていた。
地面からの霊気がエバーフーミーを包む
「貴様分かっているな」
「言われなくても分かってるぜ神井」
そう、これくらいじゃエバーフーミーには効かない、ここからが、今が、最大のチャンス
タケルと神井はありったけの霊力を込め、エバーフーミーに無数の拳を打ち込んでいた。
「うおおおおっおおっ」これが駄目なら仕方がねぇ、頼む、俺の拳よ届いてくれ。
なんと、下から向かって来た二人の霊気を、エバーフーミーは自身の霊圧で吹き飛ばし、無数に繰り出された拳を全て躱していた。
くそっ、当たらねぇ、駄目か。
その時だった
何かがエバーフーミーの顔面を直撃した。
ズゥゴオオオオンッ
「成長したな二人共」
そこに立っていたのは光堂だった。
「光堂さんっ」
〜 アンブラインドワールド 〜




