第1部 第1幕<学院編> 第3話「ドラゴン×ヒロイン=“ドラゴネクター”」
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(ドラゴネクター・総合教養学院日本・関東分布・東卿支部・第21拠点校 高等部1年5組クラス/共存共栄史194年6月・午前授業時)
・・・学校名長いから私たちで呼んでいる略称名で今後読んでいくわね、ちなみにこの学校は『東卿21【トウキョウツーワン】』って呼ばれてるから。それでよろしくね。
「ではまずは復習として、軽く『マナ』と『ドラゴン』のおさらいをしましょう」
三時間目『生物』授業。教壇越しで黒板型のスクリーン『現実可視可触映像スクリーン通称SUPERMR【スーパーエムアール】スクリーン』を操作する生物の女性教師が表示されているデジタルイラストを表示させ授業を始めていた。
「地球には目に見えない特殊な自然エネルギー『マナ』が存在し、空気・水・地中・森林・火などありとあらゆる環境に存在しています」
「今この瞬間にもマナは空気中を漂流しているのです」
生物教師は大切なことだと主張するように生徒たちに向き直り説明を付け加える。
「百九十四年前発見されたマナに対し長年の研究の末、人類はマナによる生活エネルギーの利用発展に成功し、現在までの技術向上によって環境・生命に優しい生活を過ごせているのです」
「そしてドラゴンにとっても、マナは命の糧となっています」
「通常ドラゴンは生命維持のために栄養素を摂取する、いわゆる食事を必要としません」
「多くの場合、空気中や水中などあらゆる環境で流れるマナを吸収することで生命を維持し活動することで成長を続けています」
説明を続けながらスクリーン上でイラストをスライドさせたり、動画を再生するなど操作し授業を進める。
生徒たちも自分たちの前に表示されている同型のスクリーンで専用ペンや手で入力しノート代わりに記録し、イラストや動画を視聴する。
「そのため、ドラゴンによる食糧争奪などの問題例は存在せず、争い事がなく無限ともいえるエネルギーを得ることで寿命が尽きるまで成長を続け絶滅の心配がなく繁栄を栄えています」
説明を続けていた教師が、口を止め再び生徒たちに向き直る。
「では、ここからが本日の内容になります」
「今までの解説だけでもドラゴンが地球上の生物の中でも特殊な存在であることが証明されています」
「ですが、ドラゴンもまた生物であることは我々と変わりはありません。他者の支えを受けより強く・より逞しく・より高みを目指せるようになるということです」
「その存在こそ私たち人間です」
「ここでドラゴンと人間の関係に大きく関わることが同じく百八十四年前発見されます」
「人間の女性だけがドラゴンと契約を結ぶことでともに生涯を添い遂げていくパートナーになる儀式が存在します」
「それが『結び【ムスビ】』です」
生徒たちは真剣な表情で説明を聞いていた。自分たちにとっても生涯ともに暮らすパートナーと将来契約することになるのだから皆真剣に聞くでしょうね。
それとこれが『結び』の内容よ・・何よ? 他人任せとか言わないでよ、専門家がいるんだからお願いしたっていいでしょ。
「そして結びをした女性は、ドラゴンと繋がりがある者という意味を込め『ドラゴネクター』と呼ばれています」
『ドラゴネクター』。
ドラゴンと行動を共にしている人はこのドラゴネクターという認識で間違いないわよ、もちろん説明であったようにドラゴネクターは全員女性よ。
うん?なんでドラゴネクターは女性しかいないかって?・・ちょうどその説明が始まるからこの後の話を聞いてちょうだい。
「では、なぜ結びが人間の女性しかできないかをふれておきましょう」
「予習などで調べてきた方はいらっしゃいますか?」
「はい!」
生物教師の質問に樺愛莉は反射的に挙手する。
「では樺愛莉さん、理解している範囲で説明をお願いします」
「はい。簡単に言いますと、人間の女性だけが体内でマナを生成することができるからです」
立ち上がる樺愛莉は凛とした表情で説明を続ける。
「生成されたマナは特殊で自然界のものよりもエネルギー密度が高いようで、ドラゴンたちにとっては大変貴重なエネルギーとされています」
「ドラゴンは通常では得ることはできないですが、特定の女性と結びを結ぶことでその女性から高濃度のマナを得ることが可能になり、生涯を過ごすパートナーとなります」
「そして、結びを結んだ女性もまた、そのドラゴンのパートナーとなり互いに信頼と絆を得ることでコネクターになることができます」
解説書を音読しているかのように説明を続ける樺愛莉の表情は生き生きとしている一方で、クラスメイトたちや教師は彼女に驚きの表情で集中して見守る。
「素晴らしい、さすがですね樺愛莉さん!」
「「「おお!」」」
「えっ・・あ、いえ・・えっと・・」
クラスメイト達による拍手喝采に樺愛莉は凛とした表情を徐々に崩し、徐々に頬を染め上げ立ち往生していた。
「さすがだな樺愛莉」
さらに一方で漣は樺愛莉の凛とした姿とドラゴンに対する熱意の凄さに感心する皆の反応に自分のことのように誇っていた。
本当に嬉しそうにしちゃって・・。
「樺愛莉さん、ありがとうございました。では結びの話に戻りましょう」
生物教師に礼をして樺愛莉が着席し、結びの説明が再開される。
「結びと言ってもそれほど難しいことではありません」
「結びはドラゴンと人間がお互いに適合できる者同士だと感じると心の中に共鳴意識が芽生え始め」
「心の中で意識の共有・心の会話が可能になり、そして互いが認め合うことで自然に結びの儀式が始まります」
「心の会話は俗にいうテレパシーのことですが、心の共有など共鳴のことをまとめて『ドラゴシンクロ』と呼ばれています」
「なぜ、それが可能になるのかというとホルモン分泌の異常活性化と人間の脳の働きに関係しています。言語・思考などを司る大脳半球という部分、つまり脳のしわです」
「その部分の神経細胞が神経ネットワークを形成している中で、伝達物質である脳内物質つまりホルモンが通常の人間の十倍近く分泌と伝達が行われるため通常よりも脳が活性化されて外部情報処理の発展がテレパシーという新たな会話を可能にしたと考えられています」
「ドラゴシンクロを可能にした人間の脳には共通して確認されておりますが、未だになぜこれが可能になったかなどは解明されてはおらず謎の一つとされています」
「また、ホルモン分泌の異常活性化も本来なら疾患を引き起こす危険があります。しかし、ドラゴネクターはさまざまな疾患を起こした例は存在しません」
「一説ではマナの力が何らかの干渉をして体への負担をカバーしているあるいは活性化を起こしているのはマナによるものなど考えられていて・・」
生物教師の説明をしている最中、樺愛莉をはじめ生徒たちは手元のスクリーンでイラストを見たり説明文を読んで真面目に授業に取り組んでいく。
「ざっくりと説明をしてきましたがこの部分は難しい部分なので、ドラゴネクターになるとドラゴシンクロというテレパシーが使えるようになり、その相手がパートナーであるとわかるので結びが可能だとわかる」
「これだけ理解して頂ければ大丈夫です」
「そして、『結び』に戻り。無事にドラゴンとの契約が済みますとその証として『ドラゴネクターの結びの印』が体のどこかに刻まれます。先生の場合は右肩にあります」
先生はスーツの襟を引っ張って右肩の付け根にある『ドラゴネクターの結びの印』を示し、自身も『ドラゴネクター』であることを証明する。
クラスメイトたちのほとんどの人が印を持っていて人によっては腕の付け根だったり、足の付け根だったり、腰や首や手場合によっては胸やお尻にある場合もあって『ドラゴネクター』によって刻まれる場所は違うの。
ちなみに樺愛莉は右手の甲で赤色、愛莉は左手の甲で黒色と人によって場所も色も違うの。他のみんなのは・・さすがに人に教えるのはデリケートな話になるからここまでにしとこ。
・・話を戻して『ドラゴシンクロ』。ドラゴンと人間がコミュニケーションを可能にさせる『ドラゴネクター』にしかできない特別な能力って覚えといて。
あと『マナ』っていう自然エネルギーは自然界だけでなく人間の女性も生成できること、ドラゴンはそれをエネルギーとしていることを覚えておいて。
今後のこともあるから覚えてほしいとはいえ、今回は情報量が多くてごめんね。
まあでもこれが私たち『ドラゴネクター』に関する情報の一部よ、よろしくね。
◇ ◇ ◇
(東卿21 学院特設超大型訓練ジム/放課後)
タッ・・タッ・・タッ・・シュッ!
ダンッ! ダッ、バンッ!
次々と障害物を飛び越えある人物へ向けて飛び掛かると、対象人物は受け身を取り衝撃に耐えながら相手を突き飛ばす。
ドンッ! タッタッタッタッタッタッタッタッタッタッタッタッタッタッタッシュッ!
タッタッタッタッタッタッタッタッタッタッタッタッタッタッタッシュッ!
ツンッ! ダァン!!
突き飛ばされた人物は障害物を避け着地し、すぐさま全速前進で駆け抜ける、それに応じて相手もまた同じ方向へ突き進む。障害物が少ない場所に入ると二人はほぼ同じタイミングでそれぞれの相手に飛び掛かり、互いに左手ストレートを突き出し拳同士がぶつかり合う。
勢いのまま互いの左ストレートが掠め、両者は体を逸らして右の拳を両者ともに繰り出そうとして両者の体が絡み合う。
しかし、
「くぅううう!」
「・・・っ!」
「ふへ!?」
「だぁあ!!」
「!? あっ!!」
ヴァンッ!!ズゥウウウーーー!!
絡み合っていた両者だったが、一人が相手よりも素早く反応し突然攻め合いを解く。その展開に対応できなかった方は一瞬の隙を突かれ力一杯に右ストレートを叩き込まれる。
叩き込まれた方は後ろへ吹っ飛び、横たわる。
「「ハァア! ハァア! ハァア! ハァア! ハァア! ハァア! ハァア!」」」
<訓練終了、樺愛莉選手。DCP:0【ディシーピー:ゼロ】>
<勝者:愛莉選手>
フィールドの判定システムがナレーションを上げ、勝敗が決まったことを知らせる。
「ハア! ハア! ハア! ハアー、ハアー、ハアー、ハアアー、ハアアー、また,,負けた」
「ハア! ハア! ハア! ハアー、ハアー、ハアー、ハアアー、ハアアー、でも樺愛莉強くなってる」
「とりあえずシャワー浴びに行きましょう」
「うん」
言い忘れてたけど組み手をしていたのは樺愛莉と愛莉よ。あと訓練ジムだからわかってるだろうけどこれはあくまで訓練だからね。
・・何の訓練ってもちろん戦闘訓練よ。何のために戦闘訓練しているか?・・・もちろんいつか現れる『奴ら』との戦闘に備えてよ。
ちなみに二人が訓練している場所は特殊な場所で『巨大特設現実可視可触シミュレーターフィールド 通称:SUPERMR【スーパーエムアール】フィールド』っていうの。
これは授業で皆が使っていたSUPERMRスクリーンと同じ技術で可視・可触ができる優れものであり、好みの状況や環境を再現して訓練ができる代物。
例えば環境なら湖面や森林だったり状況なら濃霧や雷雨の再現もできて、空を飛んでいる二体のドラゴンの背中みたいな特殊な設定もできるのよ。
そういう設定だと背びれ・角・翼や爪・腕・尻尾などの障害物があるから戦闘中にそういった障害物を避けたり逆に利用して戦況を有利にさせるなど臨機応変に対応が求められるドラゴネクターの戦闘訓練としては一番現実的な訓練となるわね。
最後に『DCP』とはDamage【損傷】・Cope【対処】・Point【点数】の略で戦闘中に受けるダメージに対処可能なプレイヤーの体力の限界を数値化したもののこと。
試合や訓練の時には必ず出てくるから覚えておいて、ちなみにドラゴネクターの平均数値は5,000程ね。
あっ! 説明している間に二人ともシャワー浴びて、着替え終わって学食堂に休憩に行っちゃった。じゃあ、説明は一旦ここまでにしましょう。次もよろしくね。
・・・何、残念そうに二人の背中見てるの?




