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『ドラゴネクターのカエリ』  作者: 超ネオ
第1章『ここから始まる』
2/6

第1部 第1幕<学院編> 第2話「今の日常=“樺愛莉を知る者・知らない者”」

◇ ◇ ◇


(ドラゴネクター・総合教養学院日本・関東分布・東卿支部・第21拠点校 校門前公道/共存共栄史194年6月・午前)


 緑の木々が生い茂、水路まで完備している広大な公道を多くの学生服を着込んだ女子高生たちが登校する。その中を樺愛莉たち五人は引き続きドラゴンに跨りながら進んでいた。

 ・・周りからの視線を感じながら進んでいた。

 歩いている女子高生たちは樺愛莉たちをチラチラ見たり、通り過ぎた後にひそひそ話をしたりして明らかに彼女たちに注目しているのがわかる。

 樺愛莉たちは気にせず進んでいると。彼女たちに近寄ってくる二人組に気付く。


「皆さん、おはようございます」

「おっす、仲良し五姉妹」

「おはよう桜【サクラ】、樺鈴【カリン】」

「おはよう」

「おはようございま~す」

「「おはようございます」」


 樺愛莉たちに挨拶してきたのは愛莉の親友の『松永 桜【マツナガ サクラ】』と『扶桑 樺鈴【フソウ カリン】』。二人とも樺愛莉たちにとって頼りになるお姉さんのような存在である。

 ちなみに二人もそれぞれドラゴンに跨って登校していた、桜は『ドラゴンムラサメ』に、樺鈴は『ドラゴンオオガミ』に。


「相変わらずの注目度ですね、遠くからでもわかるくらいですよ」

「愛莉は瀬亜家の自慢だからね、姉の私たちも負けてられないな」

「皆さん、愛莉に夢中ですね~」

「何言ってるんですか? 姉さんたちだってとんでない実力者じゃないですか、私以上にすごい人はいるじゃないですか」


 桜さんと湊・汐に愛莉が談笑している間も移動中、周りでは愛莉をはじめ皆への賞賛の声が駄々洩れていた。


「愛莉先輩だあ! 今日もお美しい!」

「ああああどうしよう今、目が合っちゃったーーー!!」


「ねえ声かけてきなさいよ」

「無理無理無理恐れ多いって!」


「・・湊さん、次の模擬戦は勝たせてもらうからね」

「それ何回目よ?」

「うるさい」


「汐さん、おっとりした感じなのに勝負の時はすごいのよ」

「どうすごいの?」

「・・胸とか(小声)」

「は?」

「いろいろとよ!」


「松永先輩、あの佇まいまさにさ、さ・・何だっけ?」

「もしかして侍って言いたいの?」

「ああ! それそれ」

「大昔の文化遺産にあったやつだっけ?よく知ってるわね」


「扶桑先輩のド派手な模擬戦また見たいな~」

「相手になるのだって先輩たちの間でも限られてるらしいじゃない、なかなか見られないわよ」


「漣先輩もお強いのですよね」

「あらあんたまだ戦っているところ見たことないの?彼女も学院屈指の強さを誇っているのよ」

「そうなんですね! やっぱりオーラが違うからなのかな凛々しい感じがします!」

「まあ、ただ・・」

「ただ?」


「それにしても樺愛莉さんはあまり目立った戦績がないわよね」

「模擬戦でも負けの方が多いし」

「もうドラゴンとの契約は済んでいるのに相棒のドラゴンがいないし」

「本当にいるのかしら?」


 ただ一人樺愛莉に対しては陰口が目立っていた。そのことは本人にも聞こえないはずもなく樺愛莉は居心地の悪い表情を浮かべ下を向くことしかできなかった。


「「「樺愛莉」」」


 複数人の声に気付き樺愛莉が顔を上げる。


「くだらないことにいちいち構ってんじゃないよ! あんたはあたしといい勝負した数少ない奴なんだぞ、忘れたのか?」

「樺鈴の言う通りよ、あなたの実力は姉の私が知ってる。次の模擬戦で実力を見せればいいわ」


 樺鈴、愛莉が励ましの声をかけ、そしてもう一人の声の主である漣が樺愛莉の両肩を掴む。


「気にするな」

 

 漣が一声かけ肩もみをして励ます。


「今日麗那生さんたちが帰ってくるんでしょ~? お母さんに笑顔で迎えてあげなきゃ~」

「まあ! そうなんですね! でしたら顔を上げて堂々としていましょう。相棒がいない間努力し続けていた姿を見せないと」

「そういうこと、努力してんのは私らがよく知ってんだから知らない連中の声なんかほっときなって!」


 気づけば汐に桜、湊にも励ましてもらい気恥ずかしくも嬉しくなる樺愛莉は頬を朱色に染め微笑み。


「ありがとうございます」


 皆に感謝の言葉を贈る。そこへ。


「おう?」

「え?」


 隣りを並走していたオオガミが樺愛莉の頬に自分の顔を擦り付けてきた。


「オ、オオガミ? どうしたの?」

「オオガミも元気出せって言ってのさ」

「ありがとうオオガミ・・でもくすぐったいよ」

「樺愛莉はドラゴンによく懐かれるからな」


 樺鈴、漣に微笑ましく見守れながらオオガミからの愛撫に樺愛莉は笑顔を浮かべる。その間オオガミはなおも顔を樺愛莉に擦り付け頬から首元さらには胸元、胸へとこれでもかと顔を擦り付けて元気づける。


「さ、さずがに胸は・・恥ずかしいよ」

「・・・」


 胸をこすられ恥ずかし始めた辺りで後ろで無言でしばらく見ていた漣は勢いよく左腕を伸ばし樺愛莉の胸をがっちりと捕らえ自分の身に強く寄せる。


「きゃあ!? 漣、何!?」

「オオガミ。さすがにやりすぎ、そこまでにしなさい」


 普段通りの落ち着いた口調でオオガミを指摘する、対してオオガミは頭の上に疑問符を浮かべたような顔で大人しく樺愛莉からゆっくり離れていく。

 その後も漣は樺愛莉から腕を外そうとはせず。


「も、もう離していいよ漣。オオガミもやめてくれたから」

「だめだ、またオオガミが来るかもしれない。樺愛莉に恥ずかしい思いをこれ以上させられない」

「こっちの方がもっと恥ずかしいよ!」

「暴れたら危ないぞ、やはりこのまま行くぞ」

「せめて胸から腕を離してよ!」

「暴れるならなお危ない、離すわけにはいかない」

「もう、バカ!!」


 もがき言い訳する樺愛莉。だが腕を離す気のない漣のペースに飲まれるしかなかった。

 ああーーー!!(デカイ溜息)


 そんな二人のやり取りに陰口はいつの間にか消え、黄色い歓声がちらほら発生し暗い雰囲気も解消されていた。


「おほ、朝から見せつけるねぇ~」

「でたよ『樺愛莉専門ラッキースケベ』・・」

「いや~ん、見てるこっちが恥ずかしい~」

「なるほど、ああすることでみんなの樺愛莉に対する陰口の気を逸らせるのね」

「さらには樺愛莉ちゃんの気も紛れるだろうから、さすが漣ちゃんね」

「いやそこまで考えてますかね?」


 樺鈴をはじめ皆からもいじられたり、飽きられたりと誰も漣の暴走を止める様子がなかった。

 ・・にしても漣に至っては『樺愛莉専門ラッキースケベ』って言われているのに全然気づいてないし。あああーーーー!!!(ドデカイ溜息)


「だ、大胆な人・・」

「樺愛莉専門ラッキースケベ・・これがなきゃ、ただのイケメン女子になれたのにな~」


 漣を賞賛していた『沙河 狐摩【スナカワ コマ】』は漣の男勝りの凛々しさに感服している一方で、桜たちの友人の『隼風 つばめ【ハヤカゼ ツバメ】』は以前から樺愛莉たちのことを知っていたため若干呆れていた。


「それにしても樺愛莉先輩に対してだけ・・何だか評価が厳しいというより冷ややかな人が多い気がするんですけど・・・どうしてでしょうか?」

「・・樺愛莉は模擬戦でまだ勝利した記録がないのよ」

「えっ? でも同級生の方ともされてるんじゃ?」


 狐摩は樺愛莉に対して一部評価が厳しいことが気になり、つばめに何となく聞いてみた。しかし、その返答は予想外なものだったのか本当に驚いていた。


「いいえ、瀬亜家の人はその実力の高さから同級生とまず組むことがないのよ。たいていは家族の人、他の人がやるとしても実力上位の先輩としか組むことがないの」

「愛莉にまず勝ったことはない・・まあこれは皆そうだけど、他の湊先輩たちや漣とも敗北。良くても引き分けの記録しかないの」


 つばめの説明に対し狐摩は瀬亜家の実力の高さの驚きと樺愛莉の記録にも驚きつつも真面目に聞いていた。相変わらず真面目な子。

 ・・まあ椿姫や愛莉の実力が凄すぎるから瀬亜家は強豪っていうイメージが付いちゃったんだけど。


「それに相棒のドラゴンがいないのよ」

「そうなんですか? あれ? でもたしか・・右手に『結び【ムスビ】の印』がありましたよね?」

「え!? へえ、よく見てるわね」


狐摩はつばめの思いもよらぬ一言に驚愕し自分の記憶を頼りに樺愛莉の『結びの印』を確認すると、逆につばめは狐摩の観察力に驚きつつ感心する。

 ・・え? 『結びの印』って何って・・・後で説明するわよ。


「そう『結び【ムスビ】』事態はもう済ましているのよ、ただちょっと事情があって今は彼女のもとにいないのよ」

「(事情?)・・つばめ先輩は樺愛莉先輩のドラゴンのこと知ってるんですか?」

「知ってるわよ、見たこともあるし」

「どんなドラゴンなんですか?」

「うーん・・あんたも見たことあると思うわよ」

「え、私も!? え! わかんないです!」


 狐摩自身は樺愛莉のドラゴンが知らないはずなのにつばめからの予想外の返答に混乱してしまう。


「どんなドラゴンなんですか!」


 狐摩はつばめに問うも。


「・・教えてもいいけど。さっきの会話を聞いた限りだと明日あたりにお目にかかれるかもしれないから秘密にしとくわ」

「そんな、ひどいですよ・・というか離れてるのに聞こえたんですか?」

「耳が良くなきゃ新聞部なんて務まらないわよ」


 二人はそんなやり取りをしながら樺愛莉たちをゆっくり追いかけるように登校していく。その間も狐摩はつばめに何度もすがっていた。


「ふん、瀬亜樺愛莉。親の七光りのお飾りのくせに何の努力もしないでチヤホヤされて、いい気なものね」


 少し離れたところで人一倍樺愛莉に対して辛らつな言葉をこぼす者の言葉に対して、つばめは目をとがらせる。


(ほんとみんな、樺愛莉のこと知らないくせによく言うよな・・ほんとムカつく)


 つばめは内心では周りの皆の樺愛莉に対する態度に苛立ちを抱きつつ、狐摩と会話しつつ日常会話しながら登校していく。


 改めて樺愛莉たちが歩いている大きな公道には女子高生たちだけでなくさきほどから出てくる『ドラゴン』もまた女子高生の数だけともに歩いたり、女子高生を乗せて歩いていた。

 それぞれ相棒として彼女たちと行動している。

 ・・・あっ、言い忘れてたけどつばめと狐摩もそれぞれドラゴンがいて『ヤノゴト』と『オオチコ』に跨って登校しているの。


「何で自分のドラゴンに跨って登校しないの?」

「足鍛えてるのよ、『継承の儀』だって近いんだから」


「あれ?あんたのドラゴンいないけど、どうしたの?」

「上着忘れちゃってさぁ~、今取ってきてもらってるの」

「うん?あれあんたのじゃない?上着を掴んで走ってくるあれ」「ああ来た!ありがと!」


 タッ!タッ!タッ!タッ!タッ!タッ!タッ!タッ!タッ!タッ!タッ!タッ!タッ!タッ!

 ズーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン!

 ランニングしている女子高生たちを追って翼開長平均七メートルの翼を広げたドラゴンたちが彼女たちを追って翼を広げ羽ばたかせることなくジェット機のように空を突き進んでいた。


 ・・え? 何で普通にドラゴンなんて生き物が女子高生たちと行動しているかって?

 『この世界』ではドラゴンと人間は共存しているの。

 それもお互い生活する上で大切な相棒同士なのよ・・そしていつか必ず来る『奴ら』と立ち向かうために心強いパートナーでもあるの。

 それとドラゴンと行動を共にする女性のことを『ドラゴネクター』っていうの。


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