第82話 奴隷編⑪ 後始末
この村での戦いは終わった・・・。
しかしやるべき事がまだ2つある。
1つは亡くなったケルベロス達の弔いである。
とりあえずこの建物の庭の隅っこにでも埋葬しよう、って事で、彼らの死体を運んでいる最中だ。
アカリ以外の全員で作業を行っている。
生き残ったケルベロス三人も弔いには賛成のようで、積極的に手伝ってくれる。
ちなみに名前はハル、ハナ、サクラと言い、全員女の子だ。
どうやらこの村の出身ではなく、元はこの大陸の孤児院で暮らしていた所を連れ去られたようだ。
ちなみに、アカリだけは休んでもらっている。
ものすごく手伝いたがっていたが、彼女にはもう1つのやるべき事のために体力を回復してもらわないと困るので。
そう。
やるべき事が全て終わって、ようやく今回の騒動に幕が閉じるのだ・・・。
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「アイス・レイピア!!」
レイドの氷魔法の力で、俺達の足元から大きな大きな氷の踏み台が作り出された。
この村の全てを見渡せるように・・・。
アカリがある程度回復したため、弔いは一旦、ユラとハル達三人に任せ、俺達は建物の門の近くまで来ていた。
もう一つのやるべき事を終わらせるために!!
「あ、あんた達・・・一体何を!?」
「さあ、行け。アカリ!!
全部、ぶっ壊してしまえ!!!!」
「・・・ライト、その言い方は止めてよね。
メガ・サンダー・ロッド!!」
アカリの手から電撃の杖が作り出され、溢れんばかりの雷がこの村を覆いつくすかのように広がり続ける。
眩い光がこの村の住人全てに迫りより、そして破壊の限りを尽くした!!
「「「「「「「「「ぎゃああああああああああああああああ!!!!????」」」」」」」」
ボンッ、ボンッ、ボンッ、ボンッ。
村中から人々の悲鳴や爆発音が響き渡る。
その様は慈悲なき神が無力な人間達に裁きを与えているようにも見えた。
もっとも村人達は誰一人として死ぬどころか、重傷すら負っていないが。
ロクにダメージを受けてないのに騒ぎすぎだろ、こいつら。
・・・驚く気持ちもわからなくはないけど。
「ふう・・・。
これでなんとか全部壊せたはずよ。」
「あ、あれ?
俺達、生きて・・・・・・なっ!?
・・・隷属の首輪が壊れている、だと!!」
「なんと!!
いくら頑張っても壊せなかった隷属の首輪が!!!!
・・・先ほどの電撃で壊れたのか!?」
俺達がやるべきもう1つのこと・・・。
それは村人全員に付けられた隷属の首輪を破壊する事だった。
こいつらがどういう経緯で頂上国の連中の奴隷になったかは知らない。
が、あいつらが隷属の首輪を付けたままだと、俺達はまた襲われてしまう。
理不尽な攻撃を受けないためにも、俺達には隷属の首輪を壊す権利がある。
よっぽどの痴れ者じゃない限り、ナイフを持って襲ってくる奴のナイフを壊すのは悪い事だ、なんて言わないはずだ。
「大したダメージは受けてないみたいだけど、ちょっと驚かしすぎたかしら?
・・・なんだか悪い事した気分になるわ。」
「しょーがねーじゃん。
またあいつらに襲われでもしたら、迷惑だしさ。
正当防衛、正当防衛。」
「まったく。あれくらいでこの世の終わりみたいに騒ぎよってからに・・・情けない。
この村の人間達は心身の修行が足りぬようだな。」
いや、レイド。
その意見はちょっと厳しすぎないか?
まあ、それはともかく。
「おい、村人ども!!
さっきはよくも俺達を追い回してくれたな?
おかげで俺達がどれだけ酷い目に合ったか、わかってるだろうな。あぁ!??」
「い、いや・・・。
・・・それは隷属の首輪のせいで。」
普通なら何かのせいにするな、と言うべきかもしれない。
が、今回に限って言えば、完全に隷属の首輪のせいだったりするからなぁ。
「ふ~ん、隷属の首輪のせいねぇ。
じゃあ首輪が無かったら、俺達に攻撃なんかする気はないって事かぁ?」
「あ、当たり前だ!!
そもそも俺達は・・・罪もない旅人を捕まえたくなんてなかった!!」
村人の一人が悔しそうな、辛そうな様子で答える。
やっぱりと言うべきか、俺達を襲ったのは本位じゃなかったんだな。
なお、ハル達の話によると、捕えられた旅人は大人であれば身包みを剥いだ後、外で村人達とともに働かされるようだ。
しかし子供であれば、建物内に連れて行かれ、ケルベロスへと改造されるらしい。
・・・ケルベロス達が妙に子供っぽいと思ったが、子供をベースに作られたせいか。
やっぱ外道だよな、頂上国の連中。
「そっか、そっか。隷属の首輪のせいか。
ならさっきの件は奴隷の罪は主人の罪って事で、不問にしてやるよ。
けどもう、隷属の首輪は全部壊れたんだ。
もし次、理不尽に俺達を攻撃するような真似したらどうなるか、わかってるよなぁ?」
俺は拳を鳴らしながら、チンピラのような笑顔で村人達を見下ろした。
恐怖に苛まれたのか、村人達から軽い悲鳴のようなものが響き渡る。
「わ、わかってる。
もうお前達を攻撃したりしないから!!」
よしよし、わかればよろしい。
これでようやく今回の一件は解決しそうだな。
ちなみにあいつらから慰謝料などを請求する気はない。
が、あの建物からハル達用の食料や生活費、あとは研究資料なんかをこっそり頂戴している。
・・・まあ取ったのは三人分だけだから、まだまだお金も食料も大量に残っているが。
「まったく、ライトったら。」
「ま~た村人を脅かしてやがる。
好きだなぁ、あいつも。」
「しかしあの演技力に関しては尊敬に値するな。
強さの一つとして、俺も見習うべきかもしれない。」
外野がうるさい。
しかも一人、妙な方向で関心してるし。
「あのなあ、皆。
いくら軽傷とは言っても、俺達は村人の何人かを傷つけてるんだ。
それをダシに慰謝料なんか請求されたらどうする!?
だからこそ『お前らの方から襲って来たんだ!!』って事は、しっかり主張しないとダメだ。
・・・別に隷属の首輪のせいで操られてるのは知ってるから、本気で怒ってはいないけどよ。
けど、味方かどうかもわからない連中に迂闊に歩み寄るのは良くない。付け込まれる!!」
大体、これで丸く収まるんだったら脅したって良いじゃないか。
村人達に余計な危害を加えているわけじゃないんだし。
「え~・・・。
君ちょっと僕達の事、警戒しすぎじゃない?」
「ライト、お前の主張もわからなくはねーがよ。
いくらなんでも疑いすぎだってば。」
「甘いんだよ、エルムは。
・・・大人はよく言うだろ、『世の中は甘くない』って。
あれは『迂闊に他人を信用するな』って、事だと思うぜ!!」
「やさぐれすぎでしょ、あんた。」
いや、これくらいの事は口には出さないだけで、誰でも思ってるんじゃね?
それはさておき村人達との交渉(?)も済んだことだし、早く埋葬作業へ戻ろっと。
「まあ、俺達も後始末が終わったら、この村から出ていくからよ。
お互い、これ以上関わるのはやめようぜ。意味無いし。
・・・さっ、早くユラ達の元へ戻ろっか。」
俺は氷の踏み台から降りながら、村人達へ語りかける。
だが村人達はまだ話をしたがっていた。
「ま、待ってくれ!!」
「あんだよ!?」
「・・・い、一体何が起きたのか教えてくれないか?
王が来たとか、主人達が捕まえられたとか噂になってて、何がなんだか・・・。」
今回の騒動で何が起きたのか知りたいようだ。
つまり・・・。
「粗探しか?」
「違うでしょ!!
ただ何が起きたか、気になってしょうがないのよ。」
「お嬢ちゃんの言う通りだ!!
粗探しでも、慰謝料を請求するネタを探しているわけでもない。
何が起きたか、知りたいだけなんだ。教えてくれ!!」
・・・慰謝料云々の話、聞こえていたんだ。
しかしなんて真剣な目。
脅しで有耶無耶にできそうにもない。
面倒だけど、仕方ないか。
「ええっとな。
あれから・・・。」
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「わああああああああ!!
ジョニー、ジョニーーーーー!!!!」
一人の女性がとあるケルベロスの死体に向かって、泣き叫ぶ。
彼女以外にも村人の何人かが、死体となったケルベロスを見て涙を流していた。
「・・・ど、どうしたの。ライト、皆。
なんで村の人達がここに・・・。」
「いや、事情を話したらさ。
ひょっとしたら村の子供達がケルベロスにされてたかもって言うから、連れて来た。
悪い意味で予感が当たっちゃったなぁ。」
この村は最初から頂上国の支配下にあったわけではなかったらしい。
が、とある日、突然頂上国の連中に攻め込まれて敗北。
隷属の首輪を付けられ、奴隷にされたようだ。
その際、村の子供達は奴らの手によって連れ去られたらしい。
人質か何かかと思っていたようだが、実際は魔族を作り出すための実験材料として使われたわけで。
「うっ、うっ・・・。」
「えーと、俺達。
こいつらの事を可哀そうに思って、埋葬するつもりだったんだけど。
・・・自分達の家で埋葬するか?」
丁重に扱ってくれるのなら、村人達に任せても問題ない。
「・・・いえ、お気になさらないで。
この子達もお友達と一緒の方が寂しくないと思うから。」
「・・・。」
そんなこんなで村人達も協力してくれたおかげで、ケルベロス達の埋葬はスムーズに終わった。
同じ理不尽に奴隷として扱われた者同士、思う所があるようだ。
村人達は埋葬されたケルベロス達のことをきちんと弔っていくと話してくれた。
・・・なんかこの大陸の人間にしては、意外と善良だったよなぁ。
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「じゃあ、もう俺達行くから。
ケルベロス達の墓のこと・・・よろしくな。」
「わかっております。」
「皆さん、何から何までありがとうございました。
あなた達は命の恩人です。」
一緒にケルベロス達を埋葬したからか、少しだけ親しくなった村人達と別れを告げる。
あいつらには頂上国の連中が残していったお金や食料のありかの事も教えている。
とりあえずは生活に困る事もないだろう。
「「「・・・。」」」
ハル達三人も無言で俺達に付いてくる。
こいつらには今後について話したい事があるから、付いてくるのは構わないけど。
こうして俺達は不死鳥の宝玉を探す旅へと戻った。
辛い思い出を後にするかのように・・・。




