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第81話 奴隷編⑩ 騒動の終わり

「・・・って、安心するのはまだ早い!!」





うわ!??


どうしたんだ、ユラ。

そんな大きな声出して。


「あ、そうか。

 そうだったわね。

 あの闇大陸の王様が、私達を攻撃するかもしれないのよね・・・。」


あ・・・そうだった。



奴隷騒動の最中、多くのケルベロス達が理不尽に息絶え、俺は頂上国の連中に殺意を向ける。

しかしエルム達の叫びや、闇大陸の王の横やりにより、ぎりぎり殺さずに済んだ。


それは良かったのだが、突如やって来た王達の目的は未だはっきりしない。

どうも俺達ではなく、頂上国の連中に用があるようだが、だからと言って襲って来ないとも限らない。


はっきり言って、今の俺達はこれまでの戦いでかなりボロボロだ。

こんな状態で王達に襲われでもしたら、かなりまずい!!


「お、王よ。闇大陸の王よ。

 そこのガキどもは所有している奴隷達を勝手に開放し、あろうことか我らまで殺そうとしました。

 どうか裁きをお与えください!!」


おいこら?


「やいやいてめーら、なんで被害者ぶってんだ!?

 元はと言えば、お前らの方から奴隷をけしかけてきたんだろうが!!

 正当防衛だ、正当防衛!!」


エルムの言う通りである。

ってかこいつら、奴隷だって思いっきり不正なやり方で手に入れた癖に!!


「何をバカな事を言ってるの?

 私達は王族なのよ。

 下々を好きなように扱って良いに決まってるじゃない。


 けどあなた達は何をされたって、私達に歯向かう事は許されない。

 それが世界の摂理ってものよ!!」


・・・えー。

確かに世の中、クズ丸出しな理屈が通ってしまう事も多々ある。


しかし他国の王族がよその国の民を好き勝手して良いなんて理屈、通るのだろうか?

闇大陸は魔大陸の支配下にあるわけではない。


とは言え、あのクソ共の理屈に闇大陸の王がどう返答するか・・・。





「・・・ごちゃごちゃ、うるせぇんだよ!!!!」






「がはっ!?」


闇大陸の王が狂科学者の首を絞めた?


あの王様は見かけによらず力が非常に強い。

狂科学者もかなり苦しそうだ。


ってか、いくらなんでも王様、バイオレンスすぎない!?


「お、王よ・・・何を・・・。

 我らは偉大なる・・・頂上国の・・・者である・・・ぞ。」


「あ~、よ~く知ってるよ。」


「・・・な、ならばこのような・・・事をするはずが・・・無い。

 貴様・・・なんぞ、この国の・・・王ではない!!」


あいつらの糞理論はさておき、あの王がやたらと過激なのも確かだ。

王ってもっとこう、城に引きこもって政務とかに明け暮れるものだと思うのだが。





「なんだ、なんだ?

 俺様は偽物のフェイクってか!?

 でも、残念でした。今は正真正銘、この国の王様なんだよ!!」






「フェ・・・フェイクだと?

 !! ま、まさか・・・お前!?」


「おおー、ようやく俺の正体に気付いてくれたか。

 全然気付いてくれなくて、寂しかったんだぜ♪」


何々、なんの話?


「フェイクです・・・って?

 う、嘘でしょ!!」


「ま、嘘か本当かなんて、どうでも良いじゃん。

 あんたらがどうなるかはもう決まってるんだから、な。

 おい、お前達!!」


へっ!?

い、一体どんな命令を下す気なんだ?


「ここにいる頂上国の連中を一人残らず捕まえるんだ!!

 是非、我が城へと来て頂きたいからなぁ。

 ・・・ひゃははは、ひゃーはっはっはっ!!」


なな!!


「「「「おおーーーーっ!!!!」」」」


そして、巨大鳥の上から次々と王の配下が降りてくる・・・。


********


待てぇええええええええ!!!!

きゃあああああああああ!!!!

うわあああああああああ!!!!



泣き叫びながら逃げ惑う頂上国の連中と、凶悪な面構えで連中を追い回す闇大陸の王達。

今、この建物内は阿鼻叫喚と化していた。


「ちょっと、あなた達!!

 こっちへいらっしゃい、危険よ!!」


「う、うん・・・。」


ユラが呆然としていた三人のケルベロス達を呼び寄せる。


一応、俺達が目的ではないようだが、巻き添えを受けないとは限らない。

それにこんな状況で動き回ったり、バラバラでいるのは危険だ!!

身を潜め、逃げる隙を突かないと・・・って、あっ?


蛮族・・・じゃなくて、王の配下達がこっちへ近づいてくる。


「このガキどもとケルベロスは・・・。

 頂上国の奴らと違うんじゃね?」


「まっ、一応捕まえとこうぜ!!」


ちょ、やめろ!!

そんなついでのようなノリで、こんなヤバい奴らに捕まりたくない!!!!


「おい、これ以上俺達に近づくんじゃねぇ!!

 ・・・さもないと、ただじゃ済ませねえぞ!!!!」


エルムが拳を構え、王の配下達を牽制する。

だが少年に威嚇された程度で、怯むような連中ではなかったようだ。


「ほおぅ、威勢の良いガキだな?

 良いだろう。

 ボコボコにしてや・・・。」


「やめろ、バカ共。

 そのガキどもと犬は頂上国の連中じゃない!!」


「「「お、王よ!!」」」


しかし王が止めてくれたおかげで、事を構えずに済みそうだ。

た、助かった・・・。


「・・・そこのガキどもと犬は、見た目によらずかなり強い。

 下手にちょっかいを出すと、怪我じゃ済まないかもしれん。

 今はほっとけ!!」


ちょ!?

俺達をそんな危険人物みたいに!!


「だがなぁ・・・。」


「な、なんだよ?」


「俺達の邪魔をすんじゃねえぞ・・・。

 ・・・もし邪魔をしたらお前ら全員、全力で潰すからな!!

 痛い目に合いたくなければ、大人しくしてろ。」


ひゃああ・・・こ、怖すぎる?

さっきまでの俺、よくあの王にあんな啖呵きれたよな。


邪魔をする気がないとわかったからか、王と配下は俺達から離れる。

頂上国の連中を捕まえに戻ったのだろう。


「皆、今、守るべきは俺達とケルベロス達八人の安全だけだ!!

 今回は闇大陸の王に従おう。」


「うん。

 でも油断して襲われたら、まずい。

 邪魔はしない方が良いけど、警戒はしておきましょう。」


そうだな。

さっきみたいな勘違いで、また襲われないとも限らない。


「ちょっとあんた達!!

 何、自分達だけ助かろうとしているの!?


 周りを見てみなさい。大勢の人達が無理やり捕らえられてるのよ!!

 早く助けなさい、この人でなし!!」


いつの間にか捕らえられた王女がじたばたしながら、こちらに向かって喚き散らす。

何を言っているのか、全然理解できない・・・。

言葉の意味は理解できるが、心が理解を拒絶している。


・・・ここは無視しよう。


「何よ、あんた達。

 奴隷にされたケルベロス達はあんなに必死で助けようとした癖に・・・。

 私達の事は助ける素振りすら見せないの!?


 ・・・最低よ、あんた達!!

 助ける人間を選り好みするなんて、最低のクズがやる事よ!!」


えーと・・・一応、一理ある。

一理あるんだが、なぁ。


「いや、さっきあの王女。

 『奴隷を助ける奴なんて気持ち悪い』とか、言ってなかったか?」


「そもそも、奴隷として捕まえようとした奴らに手を差し伸べる者など、実在するのか?

 普通の人間なら切り捨てると思うが・・・。」


だよな。

勝手な理由で危害を加えてくる人間なんぞ、助けた所で百害あって一利なし、だし。


「エルム、レイド。

 あんなのの相手をして、気を逸らしちゃダメ。

 今は私達の身を守る事だけを考えましょう。」


「ユラの言う通りよ。

 それに私達、頂上国の人達に攻撃されて、相当ダメージを受けているわ。

 こんなボロボロの状態じゃ、あの人達まで助けるなんて無理ね!!」


喜々として語るアカリだが、万全の状態でも助けなかっただろうなぁ、こいつ。

もっとも、常識から考えれば当たり前の話だが。


「ふざけないで!!

 人間なら誰かが助けを求めていたら、何がなんでも応えるべきでしょうが。


 ましてやあなた達は勇者の子供、ブレイブチルドレンなのよ・・・。

 世界にとって大切な人達を、命を賭して守る使命があるのよ!!


 だから助けなさいよ、私達を!!

 ・・・助けなさいよーーーーーーーー!!!!」


「うるせぇんだよ、このばばぁ!!

 耳元でぎゃあぎゃあ喚くな!!!!」


「きゃあ!?」


意味不明な発言を繰り返していた王女が、王の配下達に殴られ、大人しくなる。

そうこうしている間にも、闇大陸の王の一味が頂上国の連中を全員捕まえたようだ。


「これで全員のようね。」


ん?

なんかあの鳥、しゃべったような・・・。


「よしっ、じゃあ帰るとするか。

 思わぬ成果もあったしな。

 どんな目に合わせようか、楽しみだ・・・はは、あはははは!!」


こ、これからあの頂上国の連中、どんな目に合わされるんだろう。

死んでも構わないとは言え、想像すると恐ろしくなってくる。


「王よ。村の連中から税は巻き上げないんですかい?」


「ん~・・・なんかその気になんないんだよなぁ。

 だってあいつら、奴隷だろ?

 俺様って優しいから、奴隷に手を上げる気になんねぇんだよ。」


「・・・はあ、そうですかい。

 まあ、あいつらから税を巻き上げても、たかがしれてるですしねぇ。」


・・・村の連中は襲われなさそうだな。

他人事とは言え、酷い目に合わなくて良かった。


「さ、行くか。

 じゃあな、クソガキ共。」


********


こうして突如現れた闇大陸の王が、頂上国の連中を一人残さず連れ去っていった。

闘技場には俺達八人だけが残された・・・。


しかし状況が二転三転したけど、ぎりぎりながら全員無事で良かった。

これでようやく一息つけ・・・。


「・・・うっ、うっ。」


「ど、どうしたアカリ。

 何、泣いてんだよ?」


急に泣き出したアカリを見て、戸惑うエルム。


「「「・・・・・・。」」」


そして生き残りのケルベロス三人が、仲間の死体を悲しそうに見つめている。


そっか。

俺達、あいつらの事を助けてやれなかったんだよな。

いや・・・最初から助ける事なんて出来なかったのだ・・・。


・・・。


戦いはひとまず幕を下ろした。

だけどまだ、後始末が残っている。



俺はケルベロス達の死体を見渡しながら、これからやるべき事を皆に向かって相談した。


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読んで頂き、ありがとうございました。

少しでも「続きが気になる!」「面白い!」と思って頂けたら、評価★★★★★と、ブックマークを頂ければと思います。

どうぞよろしくお願いします。
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