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第42話 人魚編④ 氷の槍

ついうっかり人魚と戦う事になった俺達は、その強力な水魔法に苦戦を強いられる。


特にレイドは水魔法との相性が最悪だった。

だが、それでも折れずに抗う決意が新たな力の覚醒を促す!!



「メガ・アイス・ランス!!」



おお、やっぱり中級魔法だ!!

氷の槍の魔法だぁ!!!!


レイドの奴、この土壇場で上位魔法を修得しやがった!!

あの槍からは、アイス・レイピアとは桁違いの冷気を感じる。


「何!? あなたまで中級魔法を!!

 だ、だけど氷で水を打ち破る事なんて無理なのよ。

 大人しく死を受け入れなさい、メガ・アクア・ボール!!」


人魚2度目の中級魔法が炸裂し、巨大な水球がまた俺達に襲い掛かる。

・・・けど、いくらレイドが中級魔法を修得しようが、根本的な相性の悪さは変わらない。

正攻法では分が悪いはず。


どうする?


「・・・確かに氷で水は打ち破れない。

 そう、『打ち破れない』だけなんだ!!

 うおおおおおおおお!!!!」


レイドが叫びながら、巨大水球に向かってメガ・アイス・ランスを投げつけた!?

・・・って、違う。

巨大水球そのものじゃなくて、その少し手前の地面に向かって投げたんだ!!


でも、なんで?



ビキ、ビキビキビキビキ!!!!



??



なっ・・・!!


地面に刺さったメガ・アイス・ランスから、メガ・アクア・ボールよりも大きな氷塊が作り出された。

大きな氷塊にぶつかった巨大水球は勢いが削がれ、俺達を潰す事なく弾け飛ぶ。

しかし大きな氷塊の方も、巨大水球にぶつかった衝撃により砕け散った。


レイドの奴、自分の魔法を巨大水球への盾として使ったのか。

氷魔法で水への攻撃は出来なくても、水への防御でなら出来るって事で・・・。


ハジメのシールドを思い出すなぁ。


「う、嘘?

 私の最大魔法がまた止められ・・・。」


2度も最大魔法を防がれ、呆然とする人魚。


「今だ、ライト!!」


「よっしゃ、ナイスだレイド。

 後は任せろ、メガ・ホーリー・ソード!!」


その隙を突いて、光の剣と共に俺は人魚に突撃する。

人魚が我に返った時にはもう遅い。

俺はいつでも人魚を斬り飛ばせる位置まで接近した。


・・・さすがに斬り飛ばすつもりはないけど。

いくら見た目魔物でも、人の言葉を操り、人の心を持つ生き物を殺すのは嫌なので。


とは言え、問答無用で俺達を殺そうとした罰だ。

気絶するまで峰打ちでボコボコにしてやる!!


あとついでだから、あの哀れな男も一応、助けとこうかな?

そう考えながら、光の剣で人魚を叩きつけるまさに直前・・・。





「どうして・・・。

 なんで・・・。

 うっ、うっ・・・。」





???

え・・・マジ泣き?


突然泣き出した人魚に戸惑い、思わず剣を寸止めする俺。


「手を止めるな、ライト!!

 いくら見た目が美しくても、その人魚は俺達よりも格上なんだ。

 このチャンスを逃せば勝ち目は無い。早く気絶するまで追い込むんだ!!」


そ、それはそうだが人魚とは言え、戦意を失い、泣きじゃくる女の子を攻撃するのはちょっと・・・。


ってかレイドの奴、ナチュラルに『気絶』させろって言ったな。

戦闘狂のレイドも一応、人っぽい存在を殺すのには抵抗があるんだ。

その辺の考え方が一緒なのは安心した。



「き、気絶だぁ?

 何甘っちょろい事を言ってやがる!!

 殺せ。そんな醜い化け物、早く殺してしまえ!!!!」



だが、そんなレイドの発言を罵倒するような言葉が聞こえてきた。

あの声は・・・人魚にいたぶられていたあの男の声か。


ってこら。あんた、他人に殺人を命令すんじゃねえよ。

どうしても殺したいっつーなら、自分の手でやれ!!

・・・まあ、自力では殺せないからこそ、ずっと人魚に苦しめられてきたんだろうが。


「ちょ、ちょっと、おい・・・こら、人魚。

 お前、負けそうになったからって、急にピーピー泣いてんじゃねえよ!?

 反撃されるのが嫌なら、最初から俺達に攻撃なんかすんな、バカ!!」


「だ、だって、だって!!

 それはあなた達があの人を助けるとか、私と戦いたいなんて言うから・・・。

 攻撃しないと殺されるって思って!!!!」


うっ、それを言われると・・・。

だがそれでも。


「・・・そ、それはそうだけどさぁ。

 でも俺達、暴力であんたを屈服させる気なんてなかったんだ!!

 レイドだって考え無しの脳筋だが、戦う気の無い奴に襲い掛かるほど、理性を失ってるわけじゃない。」


「おい、ライト。

 お前、俺を何だと思ってやがる・・・。」


何だと思ってるって・・・戦闘狂一歩手前?

まあ、そんなどうでも良い事はともかく。


「う、うう・・・でも、でもでもでも。

 私はただ、残り少ない余生をあの人と一緒に過ごしたかっただけなの。

 そんなささやかな幸せさえ許されないの?」


「ふざけるなぁ!!!!

 何がささやかな幸せだ!!

 お前のせいで俺がどれだけ地獄を見たか、わかっているのか!?」


・・・そりゃまあ、あの男からすれば地獄の日々だっただろう。

その程度の事は、今日初めて人魚とあの男に会った俺達でもわかる。


「確かに拷問してるようにしか見えなかったしなぁ。

 ってか、人魚の方も本当にあの男の事、愛してんのかよ?」


「復讐中とか、報復中って言われた方が納得出来る。」





「復讐・・・そうね、あなたの言う通り。

 私はあの人への抑えきれない愛と憎しみがある。


 だから私はあの人への想いをこんな形でしか表現出来ない。

 ・・・あの人はわかってくれないみたいだけど、ね。」





エルムとユラの呟きを聞き、寂しそうに想いを語る人魚。

その憂いに満ちた表情は見惚れそうになる程だが、やってる事がエグすぎるからなぁ。

死ねない呪いを掛けて、延々と溺れる苦しみを味わせておきながら、わかってくれだなんて、無理がありすぎる。


そもそもの話・・・。


「なんで人魚はあの男にあんなに執着するんだ?

 愛してるとか言いながら、拷問する理由も全然わからない。

 ・・・何があったのか、事情を聞かせてくれよ。」


再び暴れ出されるとマズいため、光の剣は人魚の方に向けたまま、俺は問い質す。

事情がわからなければ、俺達もどうするべきか判断付かない。





「わかったわ。

 私とあの人との間で何が合ったか話してあげる・・・。」





やや辛そうな声で、人魚がそう答えてくれた。

・・・話したくないって言うよりは、思い出すのが辛いって感じだ。


人魚とあの男の間に、一体何があったんだろう?


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