第30話 第6の子供編⑤ ラージトロル
「うがああああああああああああああああ!!!!」
エルムとレイドの決闘の最中にラージトロルが現れた!?
ラージトロルはその名の通り、普通のトロルの何倍もの大きさを誇る巨大な怪物だ。
頭はあまり良くないが、凶暴な上、とてつもない怪力と生命力を誇り、手に持ったこん棒で殴られたら人間など簡単に潰れてしまう。
魔物の中でも相当強い部類に属し、こいつに滅ぼされた村や町も多いと言われている。
「うわぁ・・・、なんてでっかい魔物なんだ。」
「こ、これってマズいんじゃない?」
「強そう。」
エルム、アカリ、ユラもラージトロルの迫力に呆然としている。
一方レイドは・・・。
「ふ、ふふふ。ふはははは!!
これほど強い魔物なぞ、武術大陸でも中々出会えぬ。
勝負だ、ラージトロル。この俺がお前を倒してみせる!!」
・・・喜んでやがる。
バーサーカーかよ、こいつ。
「・・・ま、待てよ・・・レイド。
あんな奴に突撃・・・したら死んじまう・・・って。
ここは・・・早く・・・逃げよう。」
突撃しようとするレイドをよろめきながらも止めようとする俺。
一応、同じ勇者の子供(仮)だし、自殺行為を見逃すのも気が引ける。
「ええい。邪魔するな、ライト。
弱虫野郎は引っ込んでろ!!」
もう面倒だから、放っておこうかな。
こいつ。
「・・・ライト。
言いにくいけど、ラージトロルはここで倒した方が良い。」
ユラ?
なんでだ!?
「このままあいつを放っておくと、きっと西港町は滅んでしまう。
運が悪いと船員も船も全滅して、他の大陸へ行けなくなるかも・・・。
そうなったら私達、この大陸から出られなくなっちゃう。」
・・・・・・・・・・・・。
あーーーーーーーー!!
そうだった!!!!
ってか、クラーケンと戦った理由もそんな感じだったよなぁああああああああ!!!!
ひっぐ、えっぐ。
今日の俺達、なんでこんなに運が悪いんだ?
・・・無償で命を掛けて戦うなんて、ヤダよぅ。
「落ち込まないで、ライト。
悪気は無いの。
私だって、理由が無ければ早く逃げようって言う。」
「そ、それはどうかと思うけど・・・。」
「けど、アカリ。今のライトはとても戦える状態じゃない。
ライト以外に中級魔法を使える人はいない。
・・・初級魔法だけじゃ、ラージトロルに勝てないかもしれない。」
「何!! まさかライトは中級魔法が使えるのか!?
だから一番強い力を感じたのか・・・。」
「・・・・・・。」
う・・・悪い事なんてしてないのに、何故か罪悪感を感じる。
くそう。ここが港町じゃなければ、逃げる一択で済む話なのに。
「それもそうね。困ったわ・・・。
あっ、そうだ。レイド。
あなたもしかして、中級魔法を使えたりする?」
「期待している所悪いが、中級魔法は使えない。
・・・はぁ。俺もまだまだ修行が足りないな。」
やっぱり、レイドはまだ中級魔法が使えないのか。
さっきの戦いでも、中級魔法を使う素振りなんて全然見せなかったからなぁ。
「だが、無い物ねだりをしても仕方ない。
ここで奴を倒さなければ、西港町が滅び、闇大陸から出られなくなるかもしれないのだ。
・・・例え、勝ち目が薄くとも、最善を尽くし、戦うしかない!!」
そう力強く宣言し、レイドはラージトロルに突撃する。
って、おい。
強敵にも果敢に挑む姿は少しカッコいいけど、無謀だってば!!
「おい。待てよ、レイド。
ちっ、しょうがねえなあ。
俺も手伝ってやるか。」
レイドに触発されたのか、エルムまでラージトロルに突撃した。
こら、待て。
お前まで脳筋に影響されてんじゃねえよ!?
「ちょっと待ちなさい。エルム!!
・・・どうしましょう。ライト、ユラ。
私達も戦いに行くべきかしら・・・?」
エルムとレイドがラージトロルに突っ込んでしまった以上、放ってはおけない。
だが今の俺に戦う力は無いし、アカリとユラの加勢だけで戦力は足りるのだろうか?
「・・・ダメ元で西港町の人達に援軍を頼んでみる?
運が良ければなんとかなるかも。」
おお、グッドアイデア。
・・・と言いたい所だけど、なんで『ダメ元』とか『運が良ければ』なんだ?
「あのー・・・ユラ。
アイデア自体は良いと思うけど、ダメ元なんて酷くない?」
「だって魔物が間近に迫ってるのに、西港町から戦おうとする人が誰も出て来ない。
海の男達の中にも、クラーケン相手に戦える人はいなかった。
・・・もしかしたら、戦力になりそうな人なんて1人もいないかも。」
「・・・・・・言いたい事はよくわかったわ。
余計に不安になってきた・・・。」
これはもしかして、西港町を見捨ててでも、4人で逃げた方が良いのかも。
西港町が潰れるのは非常にマズいが、それでも自分達の命の方が大事だ。
レイドはまあ・・・ついてこないかもしれないので、その時は捨て置こう。
素直についてくるなら、連れてやっても良いが。
「けどまあ、何もせずに見ているだけよりはマシね。
とりあえず、西港町の人達に頼ってみましょう。」
「わかった。」
「エルム―、レイド―。
私達、西港町から援軍を呼んで来るわー。
それまで持ちこたえてねー。
けど、危なくなったら無理せず逃げるのよー。」
「なんだよアカリの奴。気が抜けるなぁ・・・。
わーったよ。行って来い。
ま、俺1人でもこんなデカブツ、ぶっ倒してやるよ。」
「うがああああああああああああああああ!!!!」
「・・・って、うわわわわ。
危ねぇ!!」
エルムの奴、ラージトロルに潰されそうになってるじゃねえか。
不安だ・・・。
「くっ、さすがはラージトロル。
なんて頑丈さだ!!」
レイドもアイス・レイピアで頑張ってはいるようだ。
が、さすがにあの巨体相手だと致命打には至らない・・・か。
一応、多少は効いているのか、逃げて来た人や西港町から気を逸らす役には立っているが。
「大丈夫かしら・・・エルム、レイド。
早く西港町へ行って、ラージトロルをなんとかしてもらわなくちゃ!!」
そうだ・・・。
西港町も出来れば救いたいが、それ以上にエルムを見捨てる訳にもいかないからな。
おまけでレイドも。
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ってな訳で、俺達3人は西港町まで来ていた。
レイドが喧嘩売ってくる前は静かだったのに、今はラージトロルのせいで騒然としている。
しかしただ闇雲に騒いでいるだけでなく、大半の人達は町外れの方に駆け込んでいる感じだった。
とりあえず付いて行くと、避難場所にでもなっていたのか、大勢の人が集まっていた。
だけど皆、一様に怯え切っている。
・・・この中にラージトロルと戦える人なんているのだろうか?
「お、おい。お前ら、こんな所で何やってるんだ?
あのエルムとか言う坊主はどうした!?」
あら、船長。
クラーケンの解体はどうしたんだろう?
・・・さすがにこんな状況で、魔物の解体にかまける余裕は無いか。
「あ、船長さん。実は・・・。」
アカリが船長に事情を説明する。
だが船長は凄く困った顔になり、口を開いた。
「残念だが、西港町にあんな魔物と戦って勝てる奴なんていないぞ・・・。」
そ、そんなぁ。
じゃあラージトロルに勝てる奴なんて、誰もいないって事?




