第31話 第6の子供編⑥ 4人の協力者
ラージトロルと言う、とんでもない化け物が現れた!!
・・・それを子供の力だけでなんとかしようってのが間違っている。
だから西港町に住む、頼れる大人達に援軍を頼もう。
しかし・・・。
「残念だが、西港町にあんな魔物と戦って勝てる奴なんていないぞ・・・。」
そ、そんなぁ。
じゃあラージトロルに勝てる奴なんて、誰もいないって事?
「あら、それは残念。
私達だけじゃ勝てないし、もうこの町を救うのは諦めましょう。
・・・今、頑張って戦ってるエルムとレイドにも早く知らせなきゃ。」
って、ユラ。
諦めるの早すぎ!!
・・・まあ実は、俺も同じ気持ちだけど。
確かに、西港町が破壊されると俺達、凄く不利な状況になってしまう。
海を渡る手段が無くなると、この大陸から出れなくなるもんな。
だがだからと言って、危険なモンスターに挑み、殺されてしまっては本末転倒である。
幸い、ラージトロルの頭はかなり悪い。
俺達4人とレイドなら、倒せはせずとも逃げ延びる事は出来るはずだ。
・・・それをエルムとレイドが納得してくれるかは微妙だが。
「おい、ちょっと待てユラ。
そんな簡単に諦めないでくれ!!
そうだ。ライトの光の剣ならあの怪物だって・・・。
・・・ライト? まだヘバってるのか??」
「・・・当たり前・・・でしょ。
むしろ・・・あの時より・・・疲れている。」
中級魔法を使った後の体力はかなりがっつり休まないと回復しない。
一応、自力で歩く程度は出来るが、めっちゃ疲れている時の軽い運動は、元気な時の激しい運動以上に削られるものだ。
「どうしましょう、どうしましょう・・・・・・そうだ!!
ユラ。勝つのは無理でも時間稼ぎくらいは頑張らない?
その隙に船長さん達には船で海へ逃げてもらいましょう。
船長さん達と船さえ無事なら、他の大陸への交通手段は絶たれないはずよ!!」
「そうか、その手があった。
じゃあ船長。私達ちょっと頑張って来るから、その隙に船で海へ逃げて。
・・・その代わり、闇大陸での用事を済ませた後、ちゃんと私達を別の大陸まで連れてってね。」
なるほど。
町が壊れても、船長達と船が無事なら良いか作戦か。
やや危険なのは頂けないが、俺達の命と海の交通手段を両立したいなら、一番現実的な案だ。
ところがそんなアカリやユラの案に、思わぬところから反対意見が出てきた。
「ちょっと待ってよ!!
じゃあ、あたし達町人はどうなっちゃうの?
このまま、あの怪物に大人しく殺されろって言うの??」
なんと横から話を聞いてただけの町人からクレームが来たのだ。。
けど俺は、自分達と海の交通手段である船長達&船さえ無事ならどうでも良い。
「別に黙って・・・殺されろだなんて・・・言わない・・・って。
・・・町の人達も・・・一緒に船に乗せてもらえば・・・良いじゃん・・・。」
・・・どうでも良いが、だからって諦めて死ねだなんて言うつもりもない。
町人が船長達に助けられる事を妨害する気はなかった。
しかし・・・。
「いやなぁ、ライト。
確かにある程度は町の人達も一緒に船に乗せれるが、全員は無理だぞ。
どうしても乗せる人、乗せない人を選ばないといけない。」
あー・・・それもそうか。
町人全員乗せれるほど、船、大きくなかったしな。
でもそんな事言われても、知った事じゃない。
俺達はただ巻き込まれただけなのだ。
仮に町が滅び、犠牲者が出たとしても、それは西港町の人達自身の問題でしかないのだ。
「船に乗れない人は、この町を離れて他の場所へ行けば?
・・・正直、私達はあなた達を助ける義務も義理も無い。
けど、私達が時間を稼いでいる隙に逃げるのは自由だから。」
心なしかいつもより冷めた口調でユラが語る。
他人任せな町の人達に失望しているのだろうか?
でもユラの言う通り、別に船に乗れなくても逃げる事は可能だ。
・・・無事逃げれるかはさておき、ここに残るよりは死ぬ可能性も低いだろう。
「そんな簡単に言うなよ!!
この大陸にこの町以外、安全な場所なんてどこにも無いんだ。
この西港町が破壊されたら僕達、もう生きていけない!!」
へ?
それってどういう意味だ??
なんか船長がこの大陸は危険だみたいな事を言ってたけど、そんなにヤバい状況なのか!?
凄く気になるが、それはさておくとして。
じゃあ船に乗れる人はともかく、乗れない人は逃げても残っても絶望的って事なのね。
だが・・・。
「どんなに頑張っても、私達だけじゃ少し時間を稼ぐのが限界。
だから、西港町の人達でどうにも出来ないんなら、もう選択肢は無いと思う。
・・・それとも他に何か良い方法でもあるの?」
「そ、それは・・・。」
そうなのだ。
実際の所、この状況で取れる選択肢などほとんどない。
俺が回復するまで時間を稼ぎ続けるのも現実的ではない。
いくら理不尽を嘆き、他人に縋ろうがどうにもならない事だってあるのだ。
不満を言うだけで何もしない人間に、変えられる運命など何一つ存在しない。
「あんた達のせいよ!!
あんた達がラージトロルなんて連れて来なければ、こんな事にはならなかったのに・・・。」
「「そうだ、そうだ。」」
「そ、そんな事言ったって、しょうがないじゃないか。
俺達だって狂った王の元で死にたくなかったんだ!!
だから凶悪な魔物や逝った目をした人魚に殺されそうになりながらも、必死で逃げて来たんだ。
・・・なのに、ラージトロルに目を付けられた俺達の気持ちがわかるか!!」
「そんなの知ったことじゃねえよ!!」
ちなみに『あんた達』とは、俺達の事じゃなくて、ラージトロルに追われていた人達の事だ。
エルムとレイドが時間を稼いでいる隙にここまで逃げて来たらしい。
・・・まあ、元凶には違いないにせよ、あまりに不可抗力なせいで気の毒にすら思える。
悪意を持ってこんな騒動を引き起こしたのであれば、こいつら生贄にしようぜって発言も許されただろうが。
しかしあいつ等、やたらと気になるキーワードばっか出してきやがって。
めっちゃ気になるじゃないか。
「おい、お前ら。こんな時に言い争ってもしょうがないだろう?
ライト達が西港町を見限る前に、皆が助かる方法を考えるんだ!!」
船長がそう叫ぶも、言い争いは止まらず、良い案も出ない。
そんな様をユラが酷く失望した目で見つめている。
それにもうこれ以上、ここに居続ける余裕も無くなってきた。
エルムとレイドの2人だけに戦わせるのも限度があるからだ。
「・・・もう、エルムとレイドだけで持ちこたえるのも限界よ。
他に案が無いなら、私達が時間を稼いでいる間に船長さん達に逃げてもらうしかないわね。
せめて少しでも良いから、西港町に戦える人がいれば・・・。」
アカリも辛そうな顔をしつつも、西港町や船に乗れない町人達を助けるのは諦める方向で行くようだ。
少しでも良いから戦える人が集まれば、数の力でラージトロルを打開出来るかもしれないが。
ってか、たまたま立ち寄った子供達に全部お任せって考え方が根本的に間違っているような・・・。
自分達の町は自分達で守ろうって気概を持った大人はいないんだろうか?
「「「「ま、待って(くれ)!!」」」」
? なんだ、あの四人?
「お、俺達も戦う。だから町を諦めるだなんて言わないでくれ。
ここはこの大陸の最後の砦なんだ!!」
「僕達は元々、幻影城の兵士だ。
僕達だけの力ではラージトロルに敵わずとも、君達と力を合わせればあるいは・・・。」
「「私達の魔法があれば、ラージトロルにだって負けないわ!!」」
男二人は気が小さそうだし、女二人は変わり者の匂いがする。
ただそれなりに強そうではある。
「あれ・・・この4人、変なノリだけど結構強そう?
船長。戦える人はいないんじゃなかったの??」
「いや、俺は『ラージトロルに勝てるような奴はいない。』って言っただけだぞ。
あいつ等、あれでこの町では屈指の実力者だが、それでもお前達の方が強いからなぁ。
・・・期待からの幻滅が怖くて言い出せなかった。」
船長ぇ。
でもこいつ等も、もっと早く戦うって言えば良かったのに。
「「私達は最初からこの町のために戦うつもりだったのに、あの二人に止められて・・・。」」
「しょうがないだろ。
僕達とあの子達が力を合わせても、確実に勝てるとは言えない。
それなら町が潰れても、逃げて助かる可能性に掛ける方が良いさ。」
「だがあのまま名乗り出なければ、きっとあの子達は俺達に失望して、町を見捨ててしまう。
俺も兵士だ。怖いが、この町を守るために戦うんだ!!」
大丈夫かなぁ、この人達・・・。
ただ怖がりながらも、町のために立ち上がろうとする四人にそれほど悪感情は持てなかった。
偉そうな事だけ言って、全然動こうとしない連中よりはずっと良い。
・・・そりゃ、誰にだって得意不得意はある。
戦う力が無く、魔物から逃げる事しか出来ない大人だって大勢いるだろう。
そんな人達をやる気の無い愚か者だと決め付けるのは酷なのかもしれない。
それはわかるけど、それでも最初から最後まで他人任せな連中なんて、助ける気になれないんだよなぁ。
報酬でも出るんだったら話は別だけど。
ちなみに報酬を出すからラージトロルを倒してくれなどと言う話にはなっていない。
お金を払ってくれそうな町のお偉いさん達が不在だからだ・・・どうやら護衛を連れて、真っ先に逃げ出した模様。
「んー・・・この4人の力を借りても、ラージトロルは倒せないかも。
けど、あなた達が自分の町を守るために頑張るのなら、私達も出来る限り協力したい。」
おっ、ユラが少し前向きになってる。
変人ながらも町のために立ち上がった4人に触発されたのかも。
「おお、やってくれるか。お前ら。」
「けど船長。必ずラージトロルに勝てるとは限らない。
だからいつでも逃げれるよう、準備はしておいて。」
「おう、任せとけ。」
「他の皆も揉めたりせずに、全員が助かるよう協力し合って。
じゃないと私達、この町の事なんてさっさと見捨てるから。」
「わかったわ。
わかったから、そんな事言わないで・・・。」
町人達もやや不満そうだが、一応は納得してくれた。
ユラはこう見えて元兵士なので、混乱した人達を導く事に慣れているようだ。
「4人とは言え、協力してくれる人がいて良かったわ。
・・・早く、エルム達の所に戻らなくちゃ。」
「・・・そう、・・・だな。」
「じゃあ行ってくる。
期待はし過ぎないでね。」
「「ラージトロルなんて、私達でぶっ倒しますわ。」」
「(ぶるぶる)ぼ、僕達に任せて・・・。」
「俺、この戦いが終わったら一杯やるんだ!!」
(主に性格面で)頼れるかはさておき、西港町からの援軍と共に俺達はラージトロルの元へ向かった。
無事にいてくれよエルム・・・。
と、ついでにレイド。




