初めまして?
「それじゃぁまた閉店までに取りに来ますね。」
クリーニング屋さんを後にして、位置情報を頼りに稚華さんの家へと向かった。
えっと、ここの角を曲がったところか。
……ここで合ってる??よね…
位置情報の示す住所には築何十年も経っているような古いアパートが建っていた。
老朽化が進んでおり、駐車スペースのアスファルトはひび割れ、所々その隙間から雑草が顔を出している。
今にも壊れそうな集合ポストに目をやる。
生け花のようにポストの口から封筒やチラシなどが溢れている1つに"椙山"の文字を見つけた。
201…か。
階段を登り201号室の前に着く。
そして呼び鈴を押す。…が、何度押しても音がしない。
私は携帯を取り出し稚華さんへ到着した旨を送信する。
すると、"キィー"と懐かしい音を立てて鉄の扉が開いた。
『おっ♪いらっしゃい♪中入って♪』
「お邪魔しまーす。」
外見とは裏腹に、家の中は綺麗に整頓され、年季こそ入っているがキチンと掃除が行き届いているようだった。
そして私は8畳ほどのリビングに案内された。
『ちょっと待っててね♪』
そう言って稚華さんは別の部屋へと入っていった。
…そういえば、会わせたい人ってもうこの家に来てたりするのかな。
うぅー、なんか緊張してきた。
『ホラっ、ちゃんと挨拶しなっ!!』
稚華さんが帰ってきた。しかし居るのは稚華さんだけだ。
『はじめ…まして。』
あ…
稚華さんの後ろにしがみつくように隠れていた…小さな女の子が少しだけ顔を出してこちらを上目遣いで見つめている。
「こんにちは。えっと…妹??」
『そっ♪私の可愛い可愛い妹だよ♪』
歳は今年中学生に上がるくらいかな…?
私もよく母さんや莉結の後ろに隠れたりしてたっけ。