再び
状況がよく掴めなかった。私はてっきり…というか絶対彩ちゃんだと思っていたのに、なぜこの人が…?!
「え、あ…彩ちゃんは….あれっ??あははは♪」
お姉さんは横の方に視線を向け、少し気不味そうな声で言った。
『えっとぉ…ごめんなさい。うっかり寝ちゃってたみたいで…彩さんよね?ちょっと待っててね!呼んでく…』
『その必要は無いです…』
えっ?
声の方向に目をやると、お姉さんの背後に…彩ちゃんが立っていた…
『あ…彩さん!具合…大丈夫なんですか?』
『えぇ。それより雨宮さん、お疲れのようですし、もう帰って頂いて結構ですよ。もし父に何か言われたら私から説明しますので。』
彩ちゃんはお姉さんにそう言うと、急かすように背中に手を当てて玄関へと誘導した。
気持ちを察したのか、お姉さんは何も言わずに頭を下げて素直に家を出て行ってしまう。
2人きりだ。
『びしょ濡れじゃない。どうぞあがって?ここでちょっと待ってて。』
彩ちゃんはそう言うと家の奥へ消えていった。
少しして戻ってきた彩ちゃんの手には、タオルが握られている。
『これを使って。良かったらお風呂…入ってったら?』
素っ気ない態度だが、私に気を遣ってくれているのだろう。
完全に嫌われたと思っていた分、その少しの優しさですらとても嬉しく感じられた。
浴室に案内され、簡単に説明を受ける。
それにしても広い脱衣所と浴室だ。
小さな子供部屋くらいの脱衣所には、いかにも最新のドラム式の洗濯機と、大きい洗面台がある。
よく分からないスイッチが壁にいくつも付いており、まるでホテルだ。
浴室もお洒落で大きなバスタブには"ジェット"っと書かれたボタンが付いているし、無駄に広い。
『それじゃぁ2階に居るから。』
それだけ言って立ち去ってしまった。
なんか冷たく感じちゃうんだよな。
いや、絶対冷たい!!
んまぁ私のせいなんだろうけどさっ…