訪問
莉結の横顔に車窓から差す夕陽の影がいくつも横断している。
『私たちも大人になったよね…♪』
突然出た言葉に反応しきれず声にならない声を微かにあげた。
『だってほら、街まで2人できてバス乗るなんて小さい時ぶりじゃん??』
莉結も同じ事を考えていたんだと何故か嬉しくなった。
『あの頃はこんな未来、想像もしてなかったよね!笑』
たしかに。私はこんな未来想像なんてできるわけがない。
というか想像の域を超え妄想だ。
「ほんとだよぉー。過去に戻って自分に教えてやりたいね!笑」
それから昔話に花が咲き、あやちゃんの家の最寄りのバス停まであっという間に着いてしまった。
全く関係ないことだけど、なんで"あ"っと言う間なんだろう。
昔からある言葉なら、"いろはにほへと"の"い"が使われそうだけど…
いやっ、どうでもいいか!!
広い公園の横を通って少し行くと大きな3階建の家が見えてくる。
やっぱりでっかいなぁ…
門の前に立ちインターホンを鳴らした。
…応答は無い。
毎日家主のために働く常駐のメイドなどは居ないのだろうか…笑
天堂さんの家なら居そうな気がするけど。
"お客様ですよ!ご主人様っ♪"とか?
そんな妄想をしていると、突然門の鍵がモーター音を立てて"カチッ"と開いた。
2人で顔を見合わせ玄関へと歩いていく。
プリントを届けに行った"あの日"みたいに緊張してきた。
あ、そういえば最近麗美さんみてないな…
学校でも…
あ、春休みか!
見ないわけだ。
いやいや!!今はそんなことはいい!
しばらくすると階段を降りる音が聞こえてくる。
意外と音が響くんだな…高そうな家なのに。
じゃない!
なんて言おう!?なにも考えてなかった!
"ガチャ"
玄関が開いた。




