不在
…だが、開いた玄関の先に居たのは"彼女"ではなかった。
誰?このお姉さん…あ、もしかして彩ちゃんのお姉ちゃん?
年齢は20代前半から半ばくらい、そこそこ美人な黒髪を後ろで1つにまとめたお姉さんがそこに居た。
歳の離れたお姉さんといっても不思議ではない。
「あ、あの…」
『彩さんのお友達?』
「はい!そうですが彩さんは…居ますか??」
その人はにこっと微笑むと優しく対応してくれた。
お姉さんは少し前から雇われてこの家の家事を任されている従業員さんで、お姉さん曰く彩ちゃんはまだ帰ってきていないらしい。
家族以外の人間が家に居るという習慣が無い私には考えられないが、"天堂家"では普通なんだろう。
彩ちゃんに電話をしてみたものの繋がらない。
妙な不安が頭を過ぎったが、自分の考えすぎだと抑え込んだ。
あれから莉結と別れ、お互い家へと帰った。
部屋の窓から外を眺める。
空は暖色から寒色へと塗りつぶされている。
彩ちゃんの事が頭から離れない。
「はぁ…昼間のアレなんだろな。」
私はモヤモヤを身に纏いながら風呂場へと向かった。
力なくドアを開くと、服を脱ぎ捨て洗濯機へ放り込む。
洗剤と柔軟剤、漂白剤をだいたいの分量で適当に注ぎ込みボタンを押した。
モーター音が演奏を始めると同時に浴室へ入る。
シャワーが気持ちいい。
モヤモヤが少しだけ洗い流された気がした。




