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君と僕の生きたしるし  作者: 感無量
運命の日
9/12

9

外回りの営業スマイルや馬鹿みたいな量のデスクワークでの目や肩の疲れを乗り越えて1週間がたった。

嗚呼、僕はこの日の為に生きているのかもしれない。

給料明細を見て来月も頑張ろうと思える日だ。

それだというのに。


「アハハ!見てみて!観覧車!観覧車だよ!早く着かないかなー!」


朝早くから電車を乗り継いで2時間弱、社会人の休日と学生の夏休みがかぶって家族連れで遊園地に行く人が多い。

混まないように早めに出たのにこのザマだ。

はやく帰って寝たい。

夏海は運良く座れてゆったりとしているが僕は通勤ラッシュ以上に人波に飲まれていた。

人の多さで冷房が全く意味を成さない、ただでさえ暑いのに親子の会話や電車の揺れる音が耳障りでしかない。

僕はただ日頃の疲れやストレスをため息にのせて気を紛らわすしかなかった。



ようやく遊園地について電車からおりた僕たちはチケットを買う列に並んだ。

並んでる最中も夏海のテンションは衰えることはなく僕に何に乗るかを聞いては答えを返す間もなく自問自答していた。


「はぁ、やっと僕たちの番だ」

「ねぇねぇはやくチケット買って!はーやーくー!」

「わかったわかったよ!えーっと……げっ!高!一人料金で昼飯1週間分じゃないか!」

「いいからー!はーやーくー!」

「はいはい!」


チケットを買って入場ゲートの列に並ぶ、そこでも夏海は子供のようにはしゃいでいた。


「透さんはなに乗りたい?」

「僕は…」

「私はジェットコースターに乗りたい!あぁはやく乗りたいなー!」

「次は…」

「次はあの大っきい船のやつ乗りたい!たしかバイキングっていうんだっけ?」

「うん」

「あとは、うーんと…、見てから選ぶ!」


と、まぁこんな感じで僕が答える前に自答し続けること30分、ついに入場ゲートが開いた。


「やっと入れるな〜」

「なにゆっくりしてるの!早くジェットコースターのとこ行こ!」


夏海に腕を引かれて走る、その間も夏海はずっと笑顔だった。

その笑顔は今までの人生の中見てきた愛想笑いや作り笑い、営業スマイルといった無理をした笑顔とは違い凄く眩しく見えた。

この笑顔を見れただけでもここまで来た甲斐がある。

今日は夏海の思うようにさせてあげよう。


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