↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
3/3

お茶を一杯いかがですか?

 家具だけが並んだ部屋は、まだ生活の気配がなくがらんとしていた。リリシアが荷物を置くと、少し遅れてシェリーが息を切らしながら部屋に入る。


 「シェリー、ここが私たちの新しい生活の場所ですよ。ベッドはどちらになさいます?」

 「あっ……えっと、リリシア様が先にお選びください」

 「それでは不公平ですわ。そうです、ゲームで決めるというのはいかがでしょう?」

 

 リリシアはそう言うと、張り切って鞄を漁り始め、ボードを取り出した。


 「ルールは簡単!シャハトで勝った方がベッドを選べますの!」


 シャハトとは、いわゆるチェスのようなゲームであり、帝国では一般的な頭を使う娯楽だ。


 「で、でも……私あまりやったことがなくて」

 「お気になさらないで。でも、私は故郷では負け無しでしたから、手加減はいたしませんわ」

 「お、お手柔らかにお願いします……」


 盤上に駒を並べ、リリシアは自信満々だった。シェリーは仕方なくリリシアの対面に座る。


 「さぁ!負けませんわよ!」


 十分後、リリシアは窮地に立たされていた。既にこの段階で、彼女の持ち駒はたった一つになっていた。


 「そ、そんなはずありませんわ!ええい!逆転の一手です!」


 力強く駒を盤上に置く。


 「あの……詰みです」


 シェリーが申し訳なさそうに右手を挙げた。詰み、つまりリリシアの負けである。


 「そ、そんなはずは……!?もう一局!もう一局お願いいたします!」


 そう、彼女の故郷で彼女よりこのゲームが得意な者は、父と兄だけだった。それが今、完膚なまでに叩きのめされた。


 何度やっても結果は同じであった。それどころか対局を重ねる毎に、シェリーの手はどんどん鋭くなっていき、十局目にはたった二手でリリシアは詰みを宣言される。


 「か……完敗ですわ。まさかこの私が……」

 「ご、ごめんなさい……」


 なんとも気まずい沈黙が流れる。リリシアはハッと思いついたかのように笑顔になった。


 「そうですわ!頭を使ったことですし、お茶を一杯淹れてさしあげます!」


 彼女はまたガサガサと鞄を漁り、ティーセットを取り出す。あの小さな鞄にどれだけものが詰まっているのか、シェリーは苦笑いをしながら考えた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。