↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
1/3

血染めの百合

 星のない空、焼け崩れる営み、そして……血の臭い。


 その日、村を襲った盗賊達はたった一人の少女によって全滅した。


 少女の周囲に散らばる、盗賊「だった」もの。剣を持つ者、盾を持つ者、歴戦の傭兵、無法者の中でも選りすぐりだった。


 少女が握っていたのは、たった一本の剣だけだった。


 誰かが叫んだ。

 誰かが逃げ出した。

 誰かが命乞いをした。


 だが、少女の剣は止まらなかった。


 刃が煌めくたびに、一人、また一人と崩れ落ちていく。彼らが生き延びるために積み重ねてきた経験も技量も、少女の前では全く無意味だった。


 少女はただ剣を振った。


 考えるよりも先に身体が動いていた。


 やがて静寂が訪れる。


 勝利の喜びも、殺戮への愉悦も無い。何が起きたのか少女自身も理解できず立ち尽くしていた。


 少女の名は、リリシア=アイゼルヴェルト。


 年齢八歳。帝国五大公の一角、アイゼルヴェルト大公家の令嬢である。そして人々は、やがて少女を「血染めの百合」と呼ぶようになった。


 それから七年。

 帝都に一人の令嬢がやってきた。

 アイゼルヴェルト大公家の娘。帝国最強と称される軍事貴族に生まれ、剣を取れば必殺の一撃を放つ少女。その名を聞けば、人は畏怖と好奇心を抱くだろう。


 「ここから……私の青春が始まるのね!」

 帝都の街中を走る馬車の中で、リリシアは固く決意していた。


 剣は握らない。無用な争いには近付かない。淑女として己を磨き、素敵な友人を作る。……できることなら、心ときめく恋だってしてみたい。


 そう、ここは帝都だ。

 故郷のように、力だけが全てでは無い場所だ。


 少なくとも、彼女はそう信じていた。


 車窓から、真新しい鉄骨の塔が見える。その向こうには、帝国内の貴族の子弟が集う学園がある。


 リリシアは高鳴る胸を抑え、窓の外に目を輝かせた。

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。