1 希望
マリエールは第一王女の側近になった。トランプの事で誉られめた。マリエールは次はリバーシを作ってくると第一王女に伝えた。
1 希望
マリエールは男爵家の唯一の希望だ。器量良し、頭脳明晰、魔法の才あり、性格温厚、申し分のない貴族だ。12歳になり同じ年の第一王女の唯一の下級貴族の側近となった。男爵家は先行きは明るくない。夏の干ばつで作物の収穫の見込みは薄い。切り詰めて生活しているが必要な出費はある。赤字寸前だ。側近の給与はたかが知れている。少ない給与の中からマリエールは親に仕送りしている。健気な娘だ。第一王女はマリエールに声を掛けた。
「マリエール、本当は下級貴族のあなたを側近にするのはあなたに迷惑だと思ったの。現に皮肉や嫌がらせがあるのでしょう。せめて側近の内では注意しているけれど他の人達には止められないわ。それでもあなたが必要なの。あなたの発想力が私の武器だから。先日もあったわよね。トランプというゲーム。今王宮で流行っているの。いつもあなたの発案と説明しているからあなたを見る目が変わったではないかしら。」
マリエールは他の貴族の皮肉や嫌がらせを気にしないようにしている。自分が男爵の娘であることは事実。しかも没落寸前。秋の収穫次第では本当に没落してしまうかも知れない。そうしたらマリエールも側近首かしら。
「ご心配には及びません。こう見えて私図太い方ですから。それより、今リバーシというゲームを作っているのです。これもきっと流行りますよ。私の考える事を王女様が流行させて頂くのが私の喜びです。」
前世の記憶を一つ一つ蘇らすのが今の私の仕事である。本当は建築デザイナーというのが前世の仕事だったがその知識が活かせる機会はないだろう。自分がデザインした工事中の建物の見学中足を滑らして転落死というシャレにもならない死に方をして転生したら没落寸前の男爵家に生まれた。専門を活かせないのが残念だが、一応魔法が使え頭脳明晰という事になっている。
王女の机の上の図面が気になっている。見間違えでなければ建築図面だ。多分離宮だ。第一王女が成人してから結婚するまで一時的に住む屋敷だ。それにしては貧相な建物だ。仮にしても第一王女が住む建物だ。もっと品良くできないものか。第一王女が、
「マリエール、この図面に何か意見がありそうね。構いまないから意見を頂戴。」
その時、何故そんな事が言えたか不思議だ。
「仮にも第一王女が住まわれるにはあまりにも貧相な建物だと思いました。私ならばもう少しましな図面が描けます。」
私は十数年振りに建築図面を描く事になった。
八面六臂の働きで建築図面が完成した。コンバスも定規もない中でパソコンで描くのが常識になった私は20年振りに手描きの図面を描いた。上手く伝わるだろうか。デザインの意図が人に伝わらなければ素人だろうと誰かに言われたのを思い出した。第一王女が、
「素晴らしいわ。こんなところに住みたいわ。早速国王陛下に提出するわ。」
その一言で私がこれを描き上げた意味があったと心から思った。この世界に自分の仕事を認めてくれる人がいる事のありがたさを強く感じた。
第一王女の机の上に建築図面が置かれていた。第一王女が成人後結婚するまでの間住むための離宮の図面だ。マリエールは私が描くと言った。




