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ついおく

「リヒトー。まだ寝ないで。」

「…あぁ。」


屋根のある落ち着いた場所で腹を満たしたせいかリヒトーは強い眠気を感じていた。


「詳しい話は明日にして今日はもう寝よう。」


と言ったシーダの提案をリヒトーは素直に聞き入れ案内された湖で顔を洗うなどをする。

湖は茨の隙間から漏れる夕陽の光が反射してきらめいて綺麗な光景ではあるが、眠気と闘っているリヒトーにはそれをじっくりと眺める余裕は無い。


「はいどうぞ。」


シーダから差し出された綺麗なタオルをリヒトーは手に取りそれを使って顔を拭く。顔の汚れを落としてさっぱりしたがそれでも強い睡魔が襲う。


「ベッドも用意したから寝るならそこで寝よう。歩ける? 支えるから行こう。」


今にも寝そうなリヒトーの体を支えてシーダは歩き出す。

家に着いた頃には日は沈み真っ暗だ。

家には明かりが無いため室内も真っ暗だ。

それでもリヒトーは暗闇の中でもリヒトーを支えながら歩きどこかにぶつかる事なくリヒトーをベッドの前までに連れて来られた。


「はいリヒトー。ベッドに着いたよ。」


シーダはリヒトーをベッドの上に寝かせようとした時、リヒトーはシーダの腕を掴んだままベッドに横たわったため必然的にシーダも一緒に横になる。ベッドの上ではなくリヒトーの上で。


「リ、リヒトー?!」


かなり密着しているためシーダは慌てて起きあがろうとするが、その前にリヒトーはシーダを抱き寄せる。寝ぼけているのかシーダを抱き枕扱いだ。

顔を真っ赤にして固まってしまったシーダをさらに強く抱きしめたリヒトーはそのまま深い眠りに入っていった。



◆◇◆◇◆



これは夢だ。


ふと、リヒトーはそう気がついた。

体は自由に動かせない。意識だけがこれは夢であると認識していた。

そしてこの夢は過去に実際にリヒトー(季花)が体験してきたものの再現だ。



◆◇◆◇◆



リヒトーが季花だった頃。


季花が剪定士になった理由は特に無かった。両親が他界し身寄りの無い季花は剪定士になる事でしか生きる術が無かった。

当時まだ幼かった季花に対して剪定士になるための手術を受けさせる事に反対する者もいたが、季花自身は剪定士になる事に不満は一切無かった。

事前に受けた説明でその手術で剪定士になる可能性は五割。危険なものであると理解はしていたが、この時から自分の命に執着していなかった季花は自分の意思で手術を受けた。

 

手術は成功し、季花は最年少で剪定士になった。

正式に剪定士として登録される時、季花は季人という名前で登録した。名前を変えた理由は少しでも自分を強く見せるためだ。

リヒトー以外の剪定士は大人ばかり。子供であるリヒトーがそう簡単に馴染めるはずが無い。

リヒトーの想像通り最初の頃は舐められていた。哀れみの目を向けられた。


だからリヒトーは一人で吸血花と戦った。

周りからは無謀だと散々言われたが、リヒトーは構わず一人で戦い続けた。

自分の命に執着していなかった事と剪定士としての適合率が高かったおかげでリヒトーは少女の時から高い実力を持っていた。そして戦う回数を重ねていく内にリヒトーを舐める大人は減っていき、リヒトーが大人の一歩手前まで成長した時にはリヒトーを無力な子供扱いする者は誰一人いなくなった。


ここまでは記憶喪失になった後、夢を見る前のリヒトーは朧げに覚えていた。

ここからは先は実際にリヒトーが体験した出来事だが、今のリヒトーは覚えていない。


この夢は追憶だ。


季人がリヒトーと他の者達に呼ばれ、リヒトー自身その呼ばれ方に慣れた頃。

リヒトーは偵察として吸血花の活動が鈍る夜に人型の吸血花がよく目撃される廃墟街にやって来た。


吸血花は植物と人間が合わさって産まれた種族だが、人の形を保った者は少ない。

大半は巨大な花に人の手足がついていたり、顔がついた木だったりと人外の見た目だ。見た目は統一されていないが凶暴だったり知性が足りない事は共通している。

人の姿を保っている吸血花は自我と知識があり長命だ。その上高い戦闘能力や生命力があり一人いるだけで多くの街を滅ぼせるくらいの力がある。

剪定士であろうと人型の吸血花と一対一で戦うのは自殺行為とされ集団で交戦する事が義務付けられているくらいだ。


だが偵察中に人型の吸血花と出会った時もリヒトーは一人。応援は呼んでもすぐには来ないし呼ぶ気のなかったリヒトーはいつでも動けるよう警戒して廃墟の上から見下ろす吸血花から目を逸らさなかった。


月明かりに照らされているおかげで人型の吸血花の姿がよく見えた。

細身の男性の姿でありまっすぐで艶のある綺麗な髪をしているが顔が隠れるほど伸びきっている。

目元も分からないため顔の向きでこちらの方を見ているとリヒトーは判断した。


お互いしばらくの間無言で視線を交わす。

お互い相手がいつ動いても対応できるよう警戒している。


しかしリヒトーが敵意を持っていない事に気がついたのか吸血花は何もせずに立ち去っていった。

吸血花が遠く離れて行った後、リヒトーはようやくその場から動き出し先ほどの吸血花の事を報告するために基地に戻った。


これがリヒトーとシーダが初めて出会った時。この時はお互いの名前すら知らなかった。

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