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シャドーダンス2 東京炎上作戦  作者: 六青ゆーせー
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10/166

10隅田川

「やれやれ、囲まれたようです」


運転手は言った。

通信機からは、永田が怒鳴っていた。


「絶対に、誠を捕えられるんじゃないぞ!

高山曹長、今、救援を向かわせている」


「下に日比谷線が走っています。落ちましょうか?」


誠にすれば、ごく普通の提案だった。


「あー。また、あれをやるのね…」


美鳥は天井を向いて、嘆いた。


「この交通量で襲ってきますかな?」


高山曹長は冷静に言う。

平日、朝の新大橋通りは、流れているとはいえ車で溢れていた。


「あいては恐らく影繰り。

どんな攻撃を仕掛けてくるか判らねぇ。

一旦、落ちてもらうか」


永田が言った。


「曹長さん、左車線に変更してもらえますか」


「了解。二等陸士君」


誠は、久しぶりに落ちるのが嬉しいようで、声に張りが出てきた。


「落ちます」


ライトバンから、誠と美鳥が消え去った。





黒いハーレーダビットソンが、爆音を響かせて車の脇を擦り抜けていく。

途中、にわかロードレーサーの粋がった親父が、トロくさく走っていたので、アクトレスは影の腕を伸ばして、歩道側に弾き出した。


ロードレーサーは、黄色いドラックストアに突っ込み、無数の商店が飛び散った。


「ケケケ、爺が粋がるんじゃないよ!」


高笑いを上げて通り過ぎたアクトレスに通信が入る。


「アクトレス!

新大橋通りで坊やが襲われた。

今、日比谷線に落ちたところだ。

人形町で合流してくれ!」


「なんだい、レディちゃんが危なくって玩具屋さんに行くんじゃなかったのかい?」


「レディの双子の弟カブトは、なんらかの肉体的ダメージを受けており、代替臓器を入手するため本部コンピューターへのアクセスを目論むと推測される。

そのためには坊やが必要なんだ」


「やれやれ、坊やも名が売れたもんだね。まだペーペーなのにさ。

三ケツは出来ないよ」


「美鳥はこの前、中免を取ったんだ。

人形町にバイクは手配してある」


「若葉マークかい。大変な道中だね」


「坊やの面倒が見れて、嬉しいだろ」


「あの子は弟と同じ匂いがするからねぇ。

キャハッ! 楽しみだよ!」




「前から思っていたんですけど、みんな、陰で僕のこと、坊や、って呼んでいるじゃないですか。

おかしくありません?

青山さんの方が後輩ですよ!」


日比谷線に落ちるなり、誠は言いだした。

美鳥は、走っている地下鉄の入り口と座席の角に落ちる誠にうんざりもしていた。


「最年少なんだから、坊や、でも仕方ないのよ。

私だって、嬢ちゃん、って未だに言われてるわ。もう三年も勤めてるのによ」


「あ、女の人って、美鳥さんの後はいないですもんね」


「誰か、いい加減、目覚めてくれればいいんだけどね」


「でも、ちゃんと、アゲハ、ってコードネームはあるでしょ」


美鳥は地下鉄の扉のガラスに映して、自分の髪の乱れを直しながら、


「オチル君とでも呼びましょうか? 受験生君」


「オ…、オチル君はあんまりです…」


誠は真剣に受け止め、暗い目をしたが、思い直して。


「それはそうと、本当は違う事を話そうと思っていたんです」


「どうしたの?

お給料にでも不満があるの?」


「お金には、不満はありません。

訓練ばっかりしていて、こんなに貰っていいのかな、って思います」


「何度か実戦もこなしているでしょう。

この間は密漁船に乗り込んだ、って聞いたわよ」


「ああ。あれは哨戒艇に乗れて面白かったですけど。

逮捕するところも身近で見られたし。


そうではなくて、カブトさんの事です。

彼がもし、僕たちが推測した通り、重症だったら、一体、どうやって逃げるつもりなんでしょうか?」


美鳥は、細い眉をしかめて考えた。


「計算高い蒼井聡が、それを考えない訳がない、と」


「そうです。

それと、もしミオさんと僕がコンピューターにアクセスするとして、そのDNA情報は、本当にカブトさんのものだと誰が証明するんでしょうか?」


「待って!

カブトの病気は偽物で、別の誰かのDNAを探している、って言うの?」


「その方が、計画としては筋が通っていませんか?

火災まで起こしてレディさんを呼び出し、本当に動けない病人をビルの一室に運び込んで、仮にダンサーチームを説得できたとして、周りは影繰りに囲まれています。

逃げる手段はゼロでないにしろ、少ないしタイトです。


それよりもKCジャパンに僕たちが集まったら、何らかの方法で僕らを奪取して、本部で情報を手に入れる。そして、まんまと情報を入手して、赤い舌を出して逃げ去る、って言う方が判りやすい」


美鳥は地下鉄のガラスの自分の影を、指で叩いて考えたが。


「無理でしょ。

これだけの影繰りに囲まれて」


「KCジャパンの裏は隅田川です。

陸路より浜松町に近いんです」


「船を使うって言うの?

目立ちすぎて、不可能よ」


「人質がいたらどうでしょう?

僕たちではなく、観光客が」


「どういうこと?」


「あそこには水上バスが通ってるんです。KCジャパンにも止まるんですよ」


「そんな無茶な!」


美鳥は叫んだが、続けて言った。


「永田さんに連絡するわ!」


「あと、僕のコードネームの事も…」


「誠、ほんとに気にしてたのね…」



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