77話
大蛟の討伐に成功し、経験値とドロップアイテムを表示するリザルト画面を眺める。
「『退魔の尾骨』って何? …………いや、尻尾の骨って事くらいは字面を見ればわかるから」
馬鹿にされてる? と素材の説明文に文句を言う千春。
疲れているので心が少しだけやさぐれていた。
とはいえ千春の集めたをまとめたレシピ大全(未完成)に、素材名で検索をかければ、その素材から作れるアイテムや装備品をリストアップしてくれる機能がある。
それを調べれば済む話なので細かい情報の確認は後回し。
「これは、えっと『水神のメダリオン』……ネックレスだ。おお! 水耐性80%上昇効果って、すごいやつ!」
先ほど倒した大蛟の描かれたメダリオン付きのネックレスに、千春は目を輝かせる。
これまで一個のアクセサリーでの最高耐性値は50%。
水属性攻撃を多用してくるモンスターと多くエンカウントするエリアで、水耐性を下げずに他のアクセサリーを装備する枠を空けられると考えれば、このアドバンテージは非常に大きい。
「これはポチにあげる」
と、千春はポチの首に水神のネックレスを付けてあげた。
もともとポチには水耐性があり、その耐性値は40%となっている。
そこに水神のメダリオンを装備した事で水属性への完全耐性を得るに至った。
この行為に特に深い意味があったわけではなく、ただ単純にポチにもアクセサリーの装備枠はあるのに何も装備させてない事を思い出した結果である。
ちなみにペットが装備可能なのはアクセサリーだけ。
武器や防具は自前のもので、それらは進化する事でより強力になっていく。
『ガウッ』
「お、気に入ってくれたかね?」
『ガウッ』
「自分でプレゼントしたのに、私の手作りじゃない装備品でここまで喜ばれると、ちょっとだけ複雑な気持ちになるね……」
職人としての性だった。
どうせなら自分が愛情込めて作ったものを装備してほしい。
「というわけで、それにも負けない私お手製のアクセサリーを用意するね!」
ポチの装備枠は2つある。
もう片方に何を装備させようかと、妄想の中でポチを着飾らせて廃鉱山の攻略を再開した。
出口と思われる上り階段は、大蛟を倒した時に岩壁を伝わった衝撃で崩れた先に見えている。
てくてく、てくてくとモンスターに襲われる事無く階段を上り続け、階段の終着点は瓦礫に塞がれていた道の先。
あとはまっすぐ進むだけで朽ちた鉱山を出られる。
「……確か私、近道がしたかったんだよね?」
大蛟との戦闘を思い出す。
普通に、大人しく順路通りに廃鉱山を攻略した方が楽だったし速かった気がしなくもない千春。
けれど、それは口にしてはいけない。
精神的にも現実的にも塩分が分泌されてしまうから。
「……う、うん! あれだよ! レベルも上がって、それでヘリオスの装備ステータスを満たせたんだし、いやむしろそのために落とし穴に落ちたまであるよね! あはは、さすが私! ナイス判断! あははは、はは、は…………やっぱり自分はごまかせない!」
最後に大きなため息を残して、千春は無駄に苦労させられた『朽ちた鉱山』を抜けるのだった。




