69話
第二大陸で千春が掲げた目標。
それは最速クリアである。
最速と言ってもリアルタイムアタックをするという話ではなく、ただ脇道や寄道をしないでストーリークリアに全力で取り組もう、というだけの決意。
そして、そうと決めたからにはネタバレは気にしない千春。
攻略情報サイト調べでは、第二大陸のストーリークリアの鍵は『依頼達成』にあると書かれていた。
第二大陸の依頼限定で、依頼には目に見えない内部ポイントが設定されていて、その内部ポイントが一定値に到達する事でストーリー進行の依頼が発生する。
やる事は決まり、千春は毎日のように依頼を達成しては報告していく。
手配モンスターの討伐。
アイテム納品依頼。
お使いイベントなどもあった。
攻略情報サイトとにらめっこしながら、順調に依頼達成数を重ねる千春。
内部ポイントを稼ぎ始めた日から数日後。
手持ちにある素材アイテムを納品する依頼を端から請けて達成報告をする毎日の作業を終え、千春が今日は何の依頼を請けようかなと吟味を始めた時である。
「あ」
依頼ボードの一番上に『ストーリー進行依頼』と注釈付きの依頼を見つけた。
その依頼は物納系。
「納品するのは素材じゃなくて何かの部品アイテムみたい……」
依頼の詳細を表示すると『酸素供給機の修理』と書かれ、その下に『酸素を供給する機械が壊れたので修理する必要がある。けれど部品がいくつか足りない。その部品の製作を頼みたい』とあった。
ベルタスの街は地上から1000メートル以上地下にあり、空気、つまり酸素の供給は機械頼み。
設置されている酸素供給機は百基を超え、その中の数基が故障しても酸素の供給に支障が出るような事はない。
それでも今回は壊れた物が物。
心情的にも早く直せるのであれば直したい。
「必要な部品は『大型ギア』と『耐熱チューブ』と『小型精密シリンダー』の三つね」
この依頼は、千春のメイン職業が生産職だから選ばれた内容になっている。
もし千春のメイン職業が戦闘職なら『街を襲ったモンスターの討伐依頼』になっていた。
なお、この二つの依頼は連動しており『街にモンスターの侵入を許してしまった事で酸素供給機の一部を破壊されてしまった』というストーリーになっている。
「カーボンファイバーはベルタスで買えるから『大型ギア』と『小型精密シリンダー』は作れるけれど……」
耐熱チューブを作るには材料が足りない。
足りないのは『グランドタウロス』という牛系モンスターの気管。
気管からガスを含む息を吐きだし、それに魔力を火種として利用して火を噴くため、その気管は耐熱性に優れている。
その気管をメイン素材に耐熱チューブを完成させなければいけないようだった。
「グランドタウロスの生息地って、ここからちょっと遠いんだよねー」
マップのメインストーリーを示すマーカーは、第二大陸のベルタスの対極の地を指していた。
地図情報で見る限り、植生の死んだ不毛の大地が続く中で、緑に塗られた小さな範囲がグランドタウロスの生息地。
「そこに行くまでの間に『嘆きの渓谷』と『朽ちた鉱山』と『嗄れ森』を抜けないといけないし……」
攻略情報サイトで、それぞれの場所についての情報は得ているが、得ているからこそ面倒に思ってしまう場合もある。
特に千春が嫌なのは『嗄れ森』。
「……準備だけはちゃんとしてから出発しよ」
早く第三大陸に行きたい。
それだけをモチベーションに、この日、千春はベルタスの街を巡って準備を整えた。




