67話
第一大陸はエンドワールドで楽しく遊ぶためのチュートリアル的な大陸になっている。
依頼の請け方、目的地の表示の確認方法、レベルアップに伴うステータスポイントの割り振り方まで懇切丁寧に教えられた。
すでに実戦の中で覚えた事ばかりである。
そしてチュートリアル的な進行であるだけに、モンスターとの戦闘も基本ぬるい。
どれほどぬるいかと言えば、現れたモンスターに対して千春がヘリオスを構える間にポチが軽くノーダメ殲滅してしまえる程度には。
今は冒険者となった主人公(千春)に与えられた最終試験で、ノーマ山の麓にある洞窟型ダンジョンの調査をしに移動している所。
とはいえノーマ山には初期の頃に千春も大変何度もお世話になったダンジョンである。
「ノーマ山は銅と鉄が採れるからね。お金も全然なかった最初の頃は資金稼ぎと素材稼ぎで毎日みたいに入り浸ってたよ」
その頃も今も千春は何も変わらない。
いや、強くはなっているし、ゲームに慣れた事もあって戦闘に苦戦する事もない。
「はっ!? この先の部屋にプレイヤーさんの反応が!!」
当然、全力で隠密行動。
初心者用のダンジョンなので、ここにいるプレイヤーの多くは初心者。
千春は遭遇したプレイヤーに見つからないように全力で回避して最奥部を目指した。
素材集めで高レベルダンジョンにも挑戦し、その一部は踏破までしている千春にとってノーマ山は全装備を解除して、ポチを拠点でお留守番させていても確実にクリアできる程度には簡単なダンジョンになっていた。
「でも、この場所には何度も来てるし、当たり前に最奥にも何度も足を運んでるんだけどなあ……」
ノーマ山の最奥部には鉱石を採掘できるポイントが一箇所だけあり、そこからは稀に魔石が採れる事があるため最初の頃は何度も通っていたポイントだった。
最終試験の課題として出されているのは、そのノーマ山の最奥部から『岩石』を採ってこいというもの。
岩石であればイベントリに確保してあるのだが、それを提出してもストーリーは進行しなかった。
イベントを発生させた後で実際にノーマ山で採る、という行動過程に意味があるようだ。
久しぶりとはいえ何度も通った道。
マップ情報も完全に開放されているため、まっすぐに最奥部まで進めた。
モンスターも弱いのでストレスなく進める。
進めるはずなのだが、千春にとっての最大の難敵はプレイヤーなので何度も一旦停止したりしていたため、最奥部に到着する頃にはそこそこの時間が経過していた。
「着いたー」
『ワンッ』
無感動に言葉を吐いて、千春は最奥部に足を踏み入れる。
周囲を見回し、少し懐かしいような気持ちに浸り、
「ん? あんなのあったっけ?」
部屋の中心に台座があり、そこに手のひら程度の大きさの石が安置されていた。
ストーリーを最終試験まで進めると台座が現れるように作られているのだろう。
「ま、いいか。あの岩石を持ち帰ればクエストクリアで第一大陸もクリアなんだ」
意外と全然簡単だったなー、と千春が岩石に手を伸ばすと、掴む寸前に奥側から石が飛んできて台座に安置されていた岩石が粉々に吹き飛んでしまう。
「え? ナニコレ? いや、これがイベントなんだろうって事くらいはね、もう今の私にもわかる。大丈夫。でも依頼された岩石、粉砕されちゃったんだけど、この場合どうなるの?」
疑問を口に出して目標物を粉砕した犯人に顔を向ける。
ロックゴーレム。
岩石で造られた巨像のモンスター。
その姿を見て、そしてボス特有の視界上部に表示されるHPバーを見て、千春もピンときた。
「君を倒して、君の体の一部を持ち帰ればいいんだ! そうでしょ?」
ふふふん、とドヤ顔をロックゴーレムに向ける千春。
とにかくボス戦だ。
油断しないように、牽制も兼ねてヘリオスで様子見の攻撃をしてみよう、と戦い方を組み立てていたら、
『ワンッ!』
砲声一発。
魔法の【ウィンドバレット】が放たれ、それはロックゴーレムに命中。
属性の相互関係により、地属性に属するロックゴーレムには風属性攻撃は効果が半減する。
そのはずなのだが、ポチの魔法一発でロックゴーレムのHPバーは砕け散った。
そして千春の視界に表示されるリザルト画面。
ハッハッハッ、と何かを期待するようにお座りをしているポチ。
「すごい。ポチは可愛くて強いなんて本当にすごいねー」
棒読みになっているのは、気合いとか警戒とかが空回りに終わったからだ。
でもそれは絶対にポチのせいではないので、気を取り直して今度は本気でわしゃわしゃした。
押し倒された。
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最終試験は無事に通過。
ロックゴーレムのドロップアイテム『魔岩石』を納品し、驚かれるという王道イベントを見て、千春は第二大陸へ渡る資格を獲得した。
「思ってた以上に簡単だったわね」
それはストーリー難易度の話ではなく、プレイヤー密度の話。
現段階の千春にとってはストーリー難易度よりもプレイヤー密度の方が驚異なのだから。
そして第二大陸、第三大陸と進めば進むほど、その大陸のストーリーを進めているプレイヤー数は増加する。
それは千春も理解しており、だからこそ考える。
「…………もう第二大陸で新しい拠点を構えてストーリー進行は諦めてもいいんじゃ?」
千春は葛藤する。
とある理由もあって千春は、できる事なら第三大陸までは行きたいと思っていた。
「………………もう少しだけ、うん、もう少しだけ頑張ってみようかな」




