37話
いろいろなご意見ありがとうございます。
フラフラブレブレな作者ですみません……。
頂いたご意見の中に『アイテム没収』『お詫び』についての事があり、私も納得でした。
確かにそんな運営のゲームだったら、きっと私もやめてると思います。
ですので前話をアイテム没収をしない、お詫びとして各ステータスのブーストポーション×5をプレイヤーに配布する流れに変更いたしました。
いろいろ教えてくださる読者様方。
アイデア提案してくださった読者様方。
本当にありがとうございました。
最初こそ消極的にではあったけれど千春もお店をする事には承諾した。
店舗に関しては、当初は千春の拠点を使う事になっていたのだが。
しかし、それを千春は拒否した。
男性プレイヤーの多いエンドワールド。
つまり買物に来る客プレイヤーの大半は千春にとっての異性となる。
異性が自分の家(拠点)に来る。
それも何人も。
考えただけで卒倒しそうになる光景だった。
「わたしが装備品を売り歩きます! だから家だけは! わたしのオアシスに男の人を呼ぶのだけは許してください!」
見事な土下座だった。
「それは構わねえけどな。そこまで嫌なのか?」
「はい!」
「お、おう、そうか……」
拒絶とはいえ、ここまでハッキリと千春が自分の意思を示す事は少ない。
可愛さ追求以外で。
それほど嫌なのであれば、それを無理に断行するつもりは彼女たちにはない。
それにだ。
「私たちに対する遠慮が少しだけなくなったよね~、ちーちゃん」
千春本人に聞こえないように声を潜めてケイはノエルに話しかける。
その声音は喜色に満ちていた。
話しかけられたノエルも首肯して返す。
「そうですね……。それに関しては私の暴走が原因の一端となってしまっていたので申し訳なく思っています」
「いや、のんちゃんだけを責める気はないんだよ~? 面白がってた私たちも悪いし」
ずんっ、と空気が重くなったのも敏感に察知したケイが自分たちも同罪だと言う。
その言葉に嘘はない。
今回の失敗で一番落ち込んだのはノエルだった。
ノエルにとって千春は可愛い妹のような存在だ。
その可愛い妹へ過保護に接するあまり、本来であれば背負わせなくてもよかった重荷の原因を作った自分の行動。
反省しなければいけない。
「それでな千春。店の事とは別に、今日はお前さんに頼みたい事もあって寄らせてもらったんだ」
「頼みたい事ですか? わたしにできる事なら」
土下座を止めた千春がストレージから人数分のグラスを取り出し、そのグラスにハーブティを淹れて各自に手渡す。
千春のお店に関してだけで訪ねてきたのではない事はわかっていた。
「実はな、あたしらアラロワナ火山の攻略に行くつもりなんだ」
「アラロワナ火山、ですか?」
「はい。アラロワナ火山は三番目の大陸にあるダンジョンです」
第三大陸は荒廃した大地。
千春たちが初めてパーティを組んで遊んだ場所が第三大陸である。
「それでね、ちーちゃんに火耐性の装備を作ってもらいたいんだ~」
アラロワナ火山では一定時間の経過で固定ダメージが入る仕様になっている。
それを防ぐための装備品が火耐性武具。
体力回復ポーションを飲みまくるゴリ押しでも攻略は可能だ。
けれど、できるならそれは避けたい。
アイテムの残数、残りHPの管理など面倒が増えるからだ。
「あ、うん。それはいいけど……。でもわたし火の魔石持ってないよ?」
「それは抜かりないよ~」
言ってケイは取り出した石をテーブルに置いて千春に見せる。
茶黒色の土の隙間から覗く赤褐色。
「溶岩っぽい……」
「まさに溶岩だけどな」
「え!? ちょっ!!? 燃える!! わたしのお家が燃えちゃう!!?!?」
慌てて千春はテーブルに乗せられた石を掴み取り、投げようとして、それでは意味がない事に気が付いて、でも対処法は思い浮かばなくて、ついにあわあわし始めた。
「はっはっはっ! 大丈夫だって、千春。お前、それ持ってる手、熱くも何ともねえだろ?」
「あわわわわわ………………わ?」
ルシの言う通り熱くなかった。
むしろ、じんわり温かくて気持ちがいいかもしれないとさえ思う。
「それで耐性値に関して贅沢は言いません。報酬は余った火の魔石。それと制作費用として70万Gでいかがでしょう?」
「ななっ!? 皆さんからそんなに頂けません! わたしの報酬なら火の魔石だけでも……」
言って、
「それはダメです」
静かに、けれどハッキリとノエルに告げられた。
この話題を出すのは少しズルいですけれど、と前置きしてノエルは言葉を続ける。
「これは正当な対価です。それを無視して相手に施すように与えた場合の失敗を、私たちはよく知っているでしょう?」
「あ……」
困ったような苦笑いのノエルに言われて、少し前までの自分の心境を思い出す。
施されるだけで正当な対価を返せない苦しさを。
「そう、ですね……。その報酬で引き受けさせてください」
「はい。こちらこそお願いしますね、千春さん」
「頼んだぜ、千春!」
「よろしくね、ちーちゃん。あ、火の魔石も渡しておくね~」
言い終わるや否やケイは自分のストレージから火の魔石を取り出し始める。
一つ二つが十個二十個になり、最終的には四人掛けの丸テーブルに火の魔石が山と積み上げられた。
一つ一つの塊は拳大と大きく、そのため見た目ほど数的には多くない。
あっても50個ほどだろう。
しかし大きさがあるため三人分の装備を揃えるだけであれば20個もあれば十分事足りる。
「余り分は千春さんの好きに使ってください」
「火耐性装備は作っとけば売れると思うぜ?」
「にししっ! 落ち着いたら、ちーちゃんのストーリー攻略にも行くんだから自分の分も忘れないようにしてよ~?」
四人分の装備を制作した残りは全て無償で千春に提供する。
報酬として用意したGはミスリルインゴットの代金と制作代金を合計した金額である。
そのため実質、千春に支払われる報酬は火の魔石の余剰分。
それで制作した装備を他のプレイヤーに販売した利益となる。
「んじゃ帰るか」
ルシの声にノエルとケイも立ち上がる。
もうここを三人は仮の拠点にしていない。
モンスター狩りの依頼などで不足分を補って、すでに新しい拠点を購入している。
今度は前よりも大きく、三人でお金を出し合って購入した三人の共有財産。
一人が落ち着いた千春だけれど、それを少しだけ寂しくも感じていた。
「また明日ね~、ちーちゃん」
「また明日」
「じゃあまたな」
当たり前のように伝えられる『次の約束』に千春の胸は温かくなる。
「はい。また明日」
扉の向こうに消えて小さくなる三人の背中を見送っても、今日はあまり寂しさを強く感じなかった。
▼ ▼ ▼
あの後、千春はさっそく依頼の装備制作に入り、完成した装備をノエルたちは翌日に受け取った。
その足で彼女たちはアラロワナ火山攻略のためにラグアを出立している。
そして千春は手元に残った火の魔石を見ながら妄想する。
「火耐性、火攻撃の装備か……。何を作ろうかな」
何を作ろうか悩むのは楽しかった。
夕方頃になって出かけていたノエルたちは一旦戻ってきた。
何故か千春の拠点に。
「いやあ、まさかあそこであたしの鎧の耐久値が一桁になるとはな」
「装備の耐久値管理くらいしてくださいね、ルシ」
「ホントだよ~! 死ぬかと思ったんだから~!」
わりいわりい、とルシは軽く謝罪していた。
「今まで千春がいたからな。だから【簡易修理】があったからよ、油断しちまった」
それについてはノエルもケイも軽く考えていた部分はある。
それを証明するように彼女たちの武器も耐久値ギリギリまで使い込まれていた。
「というわけで修理頼む、千春」
「私のも~!」
「すみません。お願いします。あとこれアラロワナ火山のドロップアイテムです」
「あ、はい、いいですよ。ドロップアイテム、わたしが貰っちゃっていいんですか?」
「装備の整備代です」
ノエルに言われて千春は苦笑してドロップアイテムを受け取った。
中身は糸だった。
「それはフレアスパイダーというモンスターの蜘蛛の糸です」
他にも何種類かのアラロワナ火山に生息するモンスターのドロップアイテムを貰った。
土産話を聞きつつ、千春は手早く慣れた手つきで彼女たちの装備品を【修理】していくのだった。




