強くなれない?
私とレティは、こうして、一年余り一緒に行動している。
当初、裸で寝ていたレティも、最近は衣服を着て寝るようになった。
残念なんて、思って無いから!
最初に合った時より、綺麗になった。
体つきも、女性らしくなったが、話し方は変わらない。
私が試合を終えて、ベッドで寝ていると、
「あれ、何?」
これである!
街一番の剣闘志を倒した私に、レティは不満のようだ?
確かに、誉められた内容ではない。
自覚もある。
だが、もう少し言い方があるだろう?
レティは、私をジッと見つめている。
私は起き上がり、正座して、弁明を始める。
「え~とですね。魔術を使って」
「うん」
「足下をですね?」
「うん」
「凹ませて、体勢を崩させて」
「それで?」
「避けて、剣を突きつけました」
「なんで?」
「なんで? って言われても?」
レティは、私の弁明、というか説明に相づちを打ちながら、最後に最初の問いかけに戻った。
私が、思案顔になると、レティも小首を傾げる?
なんで、分からないの、と言いたげに。
この一年、彼女との会話は、出逢った頃と変わらない。
毎回の連想ゲームに、頭を悩ませている。
慣れてくると、無駄の無い会話になるのだが、今回のようなこともあるので、正直疲れる。
「なんで、戦わないの?」
彼女は、ため息を吐いた後に、そう言った。
なんで、戦わないのか?
う~ん、私戦いましたよね?
質問の意味が、分からない。
私もたまに、頭が回らないことがある。
いや、いつもか?
特に今回は、精神的に来ていたので、余計に考えがまとまらない。
「ちゃんと、戦ったつもりだけど?」
直球で返す、これが一番速い!
一年の付き合いで導き出した答えだ。
「剣、使ってない」
剣を使ってない?
う~ん、う~ん、え~と、あ~、これか!
「まともに戦えと?」
「そう」
レティがやっと分かった、って顔をしている。
まともに剣で、やり合えときたか?
「それは無理だよ?」
「どおして?」
レティがまた、小首を傾げる。
チクショウ、なんて可愛い仕草なんだ!
いや、いや、いや、今はそんなことはいいんだよ!
「どおしてって、相手は、私よりデカイし、得物の間合いも違うし?」
「ダンが強い!」
「ウグッ」
レティが、顔を近づけて私に言い放つ。
近い、近い、近いよ!
私が、オルタスより強い?
まともに戦っても、私が勝つとレティは思っていたのか?
「いや、いや、いや。それはないよ!」
私は全力で否定した。
だって私は、この一年全くではないが、強くなっていない。
闘気もまだ、使えない。
そう、私はまだ、闘気が使えないのだ!
レティにこの一年、闘気の使い方を教わったが、全く使えない?
レティの流派は、こちらの言葉で、『 神道流 』もしくは、『 神闘流 』というらしい。
この世界で最も古い流派で、竜王剣流よりも遥かに古い!
ちなみに、竜王剣は神道流の派生流派らしく、剣の型が似ている所が多々ある。
だから、型を覚えるのは難しくなかった。
しかし、細部では違いがハッキリしている。
剣の持ち方、構え、足運び、受け方、打ち込み等、竜王剣ではそれほどこだわらないことを、神道流はこだわるのだ!
私は、何度も、何度も、レティに注意を受けて、そのたびに型を最初からやり直すはめになった。
その甲斐があってか、今は神道流の型をほぼ覚えることが出来た。(レティが知っている型を)
だが、肝心の闘気が使えない?
神道流による、闘気の使い方を学ぶのだが、これがまた、解りにくい!
所謂、気を操ると言えば理解してもらえるだろうか?
『両手を合わせるか、合わせないかの隙間に、丸い玉を出す感じで』
そんな説明をレティから受ける。
ちなみに、この説明は私が訳したものだが。
しかし、この感じでやると、魔術の発動と変わらない?
実際やってみると、風魔術の風玉が出来た。
『違うし、これじゃないし!』
何度やっても、風玉が出来るだけ?
たまに、白く光る玉が出来るが、それも違う。
レティは、直ぐに出来たと言った。
これが出来ると、自分の中で闘気が発現しやすい場所が、分かるらしい?
でも、私は発現する兆候すらない
やはり私には闘気を扱う才能が無いのかと、思い悩む日々である…………。
おっと、考えがそれた。
私が思い悩んでいると、
「ダンは、強い! 負けない!」
レティが、言い切る。
なんで、そんな言い切れる?
「魔術に頼る、危ない! 自信を持って!」
魔術に頼る?
確かに魔術に頼るのは良くない。
魔術の効かない相手との戦いが、無いわけではない?
それに、聞いた話によると、魔術が使えない闘技場が在るとか、無いとか?
だが、私は自分の剣術に自信を持てていない。
今回の戦いも、まともにやって、勝てたかどうか?
「私は、いや俺はレティが思うよりも強くないよ?」
「ダン……」
レティの顔が、暗くなる。
レティが言うように、私は強いのだろうか?
もっと強くなりたい!
心底そう思うのだが?
私の前には、強くなる方法が、道筋がまだ見えていなかった………。




