襲う者?
私とレティは、近くにいた襲撃者を襲った!
襲われた者が、襲う者を襲う?
我ながら少し苦笑してしまう?
だが、慈悲の心を持って相手をする訳にはいかない。
辺りを見渡せば、既に怪我人どころか、死人が出ていた。
そして、死人の多くは、女性だ!
現在のダーシュ傭兵団は、戦闘要員が少なすぎる!
百人近く団員の多くは女性で、大半は娼婦だ。
戦える者は、私達を含めて二十人もいない。
無惨な姿で、亡くなっている人を見てしまえば、温厚な私でも怒りを禁じ得ない!
賊は、どのくらいの人数だろうか?
犠牲者はどのくらい、生存者は?
焦りを感じながらも、レティに付いて行く形で走る!
私は前を走るレティを見ながら、先程の事を思い出す。
彼女は、何のためらいもなく、人を殺した。
そして、人を殺す事に慣れている感じがした。
この団に入る前に、彼女はどれ程の修羅場を体験したのだろう?
生きる為に、人を殺す事に躊躇していない?
その事実が、私には可哀想に思えた。
しかし、この世界では、死は身近なものだ!
それを私自身、経験して知っていても、納得は出来ない。
でも今、考えることではない!
今は、この状況を何とかしないと?
しかし、レティは何処に向かって走っているのだろうか?
「ダン、前に五人。殺るよ?」
レティが私に問いかける?
たしかに、前に五人いる。
何人か、踞っている?
あれは?
成る程、理解した!
馬鹿な連中には、相応の報いをくれてやろう!
「分かった」
私はレティに答えて、近づく五人に狙いを定める!
私の前に、愚かな二人が女の人を襲っていた。
何をしていたのかは、敢えて言う必要は無いだろう?
男が女性を襲う、そう言う事だ。
私は、二人の背後に周り、剣を降り下ろす。
狙いは、首筋!
卑怯だとは、考えない。
一人には、確実に当たった!
手応え有り!
そして、もう一人は蹴り飛ばす。
相手が、体勢を整える暇を与えず、剣を突き刺す!
鎧の隙間に、剣をねじ込む。
手に力を込めて、グリグリと、相手は手や足を使い、私を突き放そうとするが、私は剣に体重を懸けて更に剣を押し込む。
相手の手が、私の剣を持つ腕を掴む。
掴まれた腕に、激痛が走る。
しかし、私は剣を手離さない。
そして少しすると、掴まれた腕から相手の手が外れる。
私は二人殺した。
今度は、私自身の意思で!
誰かに、強制される事なく。
人を殺した事を自覚した時、私の体は正直だった。
その場で、吐いてしまった。
辺りには、殺した相手の血だまりが広がり、そして、血の臭いが漂っていた。
私はどうやら、人間の血に弱いらしい?
動物や、モンスターの血には何の反応もしないのに、人の血には駄目らしい?
「こ、こいつ!」
私が振り返るとそこに、剣を振り上げている賊がいた!
しまった!
二人殺しただけで、まだ、三人いた!
だが、賊が剣を降り下ろすことはなかった。
それどころか、賊の胸に剣が刺さっていた!
「こ、こいつ………」
剣が引き抜かれ、賊が倒れる。
「大丈夫?」
賊の背後に、レティがいた。
見れば、他の二人を仕止めた後のようだ。
「なんとかね。助かったよ」
「そう、急ごう」
剣を支えに、立ち上がる私にレティは答える。
そして、倒れている女性にレティが何か言っている。
「レティ?何処に行くの?」
「団長のところ」
レティの顔に、嫌そうな表情が見てとれる。
「ダグラを助ける為?」
「首魁がいる」
首魁? 賊のボスがダグラのところにいる、何で分かる?
「何で、分かる?」
「似たことがあった」
前にも、同じ目に遇ったのか?
「その時は?」
「死んだ」
そうか、その時は奴隷主は死んだのか?
今、ダグラが死ねばどうなるか?
上手くダグラだけ死ねば、奴隷から開放される?
そんな訳ない!
奴隷主が死んでも、奴隷紋は残る。
近くの街に行っても、兵士に捕まって、また奴隷になるだけだ。
ダグラは良い主人だとは言えないが、一応助けておくか?
上手くすれば、恩を売れる?
でも、助けても恩に感じる人間じゃないな?
「行くよ!」
考えていたら、レティは走り出していた。
「ま、待って」
慌てて、後を追った。
思ったよりも、賊は少なかったようだ?
と思っていたが、所々でさっきのように女性を襲っているのが見える。
レティは、それを無視して走る。
先にボスを倒せば、後はどうとでもなる、と言うことだろうか?
先の五人は進路上にいたから、排除したのか?
そんな事を考えいると、私達の前に、ダグラの居る天幕が見えてきた。
そこには、十人近い人が見える。
その奥から、ダグラとドッチさんの声が聞こえる。
まだ、生きてる!
私達が天幕に着くとそこには、二メートルを超える大男がいた!
こいつが、襲撃者のボスか?
私は、この時、少しだけ、いや、かなり怖かった。
誰にだって、ボスじゃないよ?
レティが怖かった!




