襲われる者?
それは、大人数で在るがゆえの油断だった。
目的の街まであと少し、と言うところでそれは起きた!
盗賊、と言うか、傭兵崩れが襲って来たのだ!
時は、朝方。
まだ、日が上りきらず辺りは白ずんでいた。
私とレティは、見張りを終えて寝ており、傭兵の襲撃に気づいていなかった。
周りの喧騒から、そして、女性の悲鳴を聞いて、何事かと思い、起き出した始末。
周りの様子を、眠気眼で見ながら辺りを見回す。
「クソッ、見張りは何してやがった!」
「襲撃!襲撃だー!」
「いやー、やめてー!」
襲撃? 何の事だ?
頭が追いつかない?
「ダン、剣を持って」
「レティ?」
レティは、私の隣で既に立ち上がっており、剣を抜いていた。
奴隷とはいえ、丸腰と言うわけには行かない。
道中、最低限の装備として、ショートソードを渡されていた。
「何だ、ガキか? いや、キレイなガキじゃないか。こりゃ~高く売れるぜ♪」
私達二人の前に、数名の盗賊らしい人達がいた。
思い思いに何か言っているが、かなり卑猥なことを言っている、主にレティに対して?
私? 私に対しては~、ねぇ~?
「おい、隣のガキはどうする?」
「間抜け面の男のガキは要らねえ。さっさと殺せ!」
「そうか~?勿体ないぜ。可愛い顔してるのに?」
体に悪寒が走る!
殺せと物騒なことを言われたり、可愛いと言われたり、何なんだこいつら?
「レティ、どうする?」
一応、選択肢としては……?
「殺す」
「ハッ?」
レティに、問い掛けたのは、私の頭が状況を把握しきれていなかったからだ。
だから一応、レティに問いかけたのだが、帰ってきた言葉は、相手と代わらない物騒な言葉だった。
私は立ち上がって、レティの顔を見ると、少し怒っているような、それでいて楽しそうな顔をしているように見えた?
「殺すって?あっ、ちょっと?」
私がレティに、聞き返そうとした時には、レティは走り出していた。
「おっ、向かって来るのか?」
「元気があって、良いねぇ~♪」
「嬢ちゃん、相手して、ギャー!」
最後の言葉を発する前に、レティは相手の喉元を切りつけていた!
「おっ、おい、こいつ?」
「殺りやがったな、てめ、ウギャー!」
レティは、最初の相手を切りつけた後、返す刀、じゃなくて、剣で隣の男を袈裟斬りにする。
男達の装備は、剣と円形の盾、そして皮鎧だと思われる?
普通なら、ショートソードで鎧は斬れない。
斬るなら、鎧の繋ぎ目を狙うか、腕や足まわり等を狙う。
私なら、相手が斬りかかって来たところを利用して、体勢を崩れたところを狙う。
だが、レティは無造作に、相手を斬った。
闘気を纏った、本当の戦い方を私は初めて目にすることになった。
「この、ウワー!」
最後の男は、一応構えたが、剣を降り下ろすことは出来なかった。
「ダン、その剣を使って」
レティは、切り殺したと思われる相手の剣を、私に向かって投げる!
「おっ、ちょ、ちょっと?」
思わず受け取りそうになるが、手を引っ込める。
危ない、危ない、腕が傷つくとこだった。
落ちた剣を拾って、改めて周りを見渡す。
所々で火の手が上がり、怒号と悲鳴が聞こえる。
阿鼻叫喚の図と言うのは、この事だろう。
襲われてる?
やっと状況を把握出来た!
レティがあっと言う間に、三人を切り殺したことで、代々のことは分かったが、まさか、盗賊襲撃イベントに出くわすとは?
そして、レティを見れば、彼女は先程斬って捨てた相手に、止めを刺していた。
彼女は、冷静で、状況を把握し、事態に対応している。
私は、思わず込み上げて来た物を、無理矢理飲み込む。
ここで吐き出す訳には、いかない。
とにかく、この襲撃を治めないと。
逃げ出すと言う選択肢は、無い!
奴隷は逃げれば、最悪、殺される!
主人と奴隷は、一蓮托生、呉越同舟だ!
最後は、違うか?
私は、レティの側に歩み寄る。
「ダン、行こ!」
この問いは、逃げ出すと言う問いだろうか?
違う! 逃げ出すのではなく、賊を退治することだろう。
「ああ、そうだね」
私は、レティに答えながら、足が震えているのを感じていた。
自分の臆病さが嫌になるが、これが普通の感覚だろう?
この光景を見て、興奮するようなら、頭がおかしいと私は思う。
この世界の常識と、前世の常識は違う。
私はまだ、前世の常識が残っており、それが私を助けもすれば、足手まといになっている。
私とレティは、襲撃者達を撃退すべく、走り出していた!




