奴隷になる?
ローダン村に、バラスの寄越した人物がやって来た。
ちょうど、あの宣告から十日後。
ちなみに、バラス-セルラスは私を奴隷にすると言ったのだから、呼び捨てでいいだろう。
バラスで充分だ。声に出したりしないが?
「また、この田舎に来ることになるとは?おい!早く済ませろ!」
あー、こいつは、この前の男だ!
一緒に来た初老の男性に偉そうに指示している。
「こんにちは、ノーマン殿のご子息。早速、仕事に取り掛かりたいのだが?」
丁寧に頭を下げて、私にそう告げる初老の男性、好感が持てる。
でも、名前は名乗らない。
教えてもらっても意味がないものな。今日でお別れ、数時間後にはおさらばするのだから。
「我が家の私財ですね?どうぞ、こちらです」
「話が早くて助かります」
私は、彼らを屋敷の裏手に案内する。
そこには、木箱がいくつか置いてある。
「おい!これだけなのかな?」
この前の若い男が、私に尋ねる。
改めて見るにこの男、若い!
歳はどう見ても、二十歳前、成人して少しというところか?
それに、中々のイケメンだな?
ノーマンには負けるが、さぞ、モテるだろうな?
羨ましくないぞ!断じて羨ましくない!
「ええ、これだけです」
私は、すまして答える。
「ふん、流石にど田舎の貧乏貴族。蓄えも微々たるものか。おい!一応家の中も見てこい」
貴族の男は、連れて来た取り巻き(従者かな?)に屋敷を捜索させる。
初老の男性は、木箱の中身を確認している。
屋敷には、何も無い!
既に屋敷内の物は全て処分してある。
服飾から家具に、皿や子匙にいたるまですべてだ!
ラットに買い取ってもらい、金に替えて村民に配ったのだ。
ただ、指をくわえて全てを取り立てられるくらいなら、村民にくれてやるほうがましだ!
それに、大事なものはベス達に預かって貰った。
「屋敷には、何もありません」
「裏の建物にも、何もありません」
「そうか。本当にこれだけなんだな?」
貴族の男は、私に尋ねる?
「ええ、それだけです」
その後、暫くして私財の査定が終わる。
貴族の男に、査定額をじいさんが見せる。
「ふむ、案外多いな?」
「そうですね。貨幣は少ないですが、それ意外が中々の物でしたから」
「さすが、元A級冒険者ということか?」
二人は、その後も何か話合っている。
一人待たされる私。
正直、早くして欲しいものだ。
奴隷になる覚悟は、既に付いている。
あまり待たされるのは、焦らされて嫌だ。
「おい!お前、少し話がある。良いか?」
「はい?」
貴族の男が、私に話かける。
こっちは、話すことなどないがなんだろう?
「ノーマン-アスバールは、惜しい人物だった」
「はい?」
いきなり、ノーマンの事を話出した?
最初に会ったときは、成り上がりがどうとか言っていたのに?
貴族の男は、その後もノーマンの事を話す。
どうやらこの男、ノーマンのファンだったらしい?
ノーマンの冒険者時代から始まり、傭兵の時の活躍を熱く語ってくれた。
まさか、この男からこんなにノーマンの話を聞けるとは?
「貴様の処分は、貴族として当然とも言えるが、運が無かった。だが、まだ生き延びる機会を与えられるだけ、ましだと思え!何故なら………………」
そして何故か、説教めいたことを言い始めた。
あー、これはあれだな。
この男なりに、私を励ましているのかな?
案外良い奴なのか?
「……………、だから貴様も、ノーマン殿の息子として恥ずかしくない生き方をな。………」
「あの~?」
「…であって、…うん?なんだ?」
「ありがとうございます。励ましていただいて」
「ば、バカ者! 私は励ましてなど、いない。
これは、あれだ!その、なんだ!だから…」
あー、この人、ツンがつく人なんですね?
正直に慣れない病気の?
この前はあれか? 余計なことを話すと、一杯一杯になってしまうから、要件だけ伝えて帰ったということか?
顔を赤くして、シドロモドロしている姿がかわいい。
「ふん! 様は、生き延びろ、ということだ!」
「はい、生きます! あの、お名前をお伺いしても「エドモンドだ!エドモンド-バーンスタインだ!」
おう!よくぞ聞いてくれた!と顔が言っている。
やっぱり、ツンなんですね?そうなんですね?
うん、バーンスタイン?
「エドモンド、バーンスタイン、様?」
「なんだ!」
「あの、バーンスタイン侯爵家の?」
「そうだ、私はバーンスタイン侯爵家の三男だ!もし、奴隷から解放されていく宛が無いなら、私を頼っても良いぞ♪そうだ!そうしろ!うん、我ながら………」
なんかブツブツ言っているが?
バーンスタイン家だと?
なんで、因りにもよってセルラス伯と敵対関係にあるバーンスタイン家の人間がここに居る?
わからん?わからんが、せっかくだ!
奴隷になるのは変わらないが奴隷から解放されたら、面倒を見てくれると言っているし頼らせてもらうか?
いや、待て!
貴族の世話に成ったら、色々面倒なことになるかも?
プラスよりマイナスが多いかも?
でもノーマンもマーサも亡くなって、天涯孤独の身の私には、頼れる人間は少ない。
一応キープしておくか?
うん、そうしよう!
まだブツブツ言っているエドモンドに、
「あの~、エドモンド、様?」
「………そうだな。うん? なんだ!」
「奴隷から解放されたら、お会いしても、よろしいので「むろんだ! 私を頼って来い! そして、ノーマン様の話をだな。……」
おう、なんて好反応? それにノーマン様?ときたか。
ノーマンのファンってもしかして多いのか?
貴族の中に多いのか? わからん?
聞いてみたいが地雷を踏みそうで怖い。
この人、なんか狂信的だし、目も恐いし、やっぱ関わらないほうが良いかな?
「いいか!必ず生き延びろ!必ずだぞ!」
いきなり肩を掴まれる。
痛い、痛いがな。指が、肩に食い込む!
なんて力だ。やはり狂信者だ!
関わらないようにしよう。…うん
「あの、もうよろしいですか?」
「なんだ!邪魔をするな!」
「あ、いや、あの、奴隷商が、来ましたので」
「う、そうか。残念だが、ここまでか。ノーマン様の話を聞きたかったが」
助かった! じいさんナイスタイミング! いや、助かってないか、奴隷商が来たし。
それにノーマンの話をしたらきっとガッカリするだろうし、私の知っているノーマンはあまり自慢できる父親ではなかったし。
でも、父親ってあんなもんか?
ファンなら些細なことも知っておきたいもんだしな? 狂信者ならなおさらか?
「では、引き渡します」
そう言うとじいさんが私の両腕に木製の手枷を着ける。
この程度の物なら簡単に壊せそうだ。
筋肉じゃないよ?魔法でだよ。
私は奴隷商の乗って来た格子付きの馬車に乗せられる。
馬車の中は私の他にも奴隷がいた。
匂いが、きつい!
耐えられるかな、この匂い?
馬車に乗る前にエドモンドが何か言っていたが耳に入らなかった。
いよいよとなると怖くなったのかもしれない。少し緊張している。
この小心者!
奴隷商が馬車を走らせる。
馬車の外の風景を見る。
もう二度と、見ることは無いかも?
そんなことを考えると自然と涙が出てきた。
産まれ育った屋敷が遠ざかり、頭の中は今までのことが走馬灯の様に過ぎ去っていく。
一通り涙したら、気持ちを切り替えた!
必ず、生き延びる!
私はこの世界で、二度、死にかけた。
だが、生き残った!
ノーマンとマーサの墓前で、誓った!
『私は、絶対に生を諦めない!どんな理不尽な目に会おうと、自分から死のうとは思わない!あがらって、あがらって、生に執着する。
それがこの世界に転生した、私の生き方だ!』
『死ぬなら納得して死にたい。前世の様に突然死ぬ可能性があるかもしれないが、それでも、後悔のない死に方をしたい。そうだろ?ノーマン、マーサ?』
馬車は街道を南に向かっていた。
南、そこは、商業国家、 チルヌス!
私が売られる場所。
私は奴隷に、なった。
序章 少年編 完
ここまでが、序章になります。
この後が、この物語の本編になります。
皆様、これからもよろしくお願いします。
拙い文章で、本当にスミマセン。




