武器屋?
武器屋の扉をくぐる。
おお、これは?
目の前にはカウンター、
右側には剣や、斧、槍等の武器類が、
左側には、皮鎧、鉄の胸当て、鉄兜に盾、脛当て等の防具類、
中央には、杖や、ネックレスに指輪、ペンダント等の魔法関連の物だろうか?
「いらっしゃい。 なんだ、子供か?」
カウンターから、女性の声がした。
最初は愛想よく、最後は期待ハズレの声が。
子供でスミマセンね。
言葉には出さない。確かに、私達は子供だから。
「こんにちは、武器を見せてください?」
リリが、丁寧に話している?
「君たち子供でしょ?お使いか、何か?」
「違います。買い物です。」
「買い物って、あなた達が?」
「そうです!お兄ちゃんもお姉さんに言ってあげて。」
それまで、リリが相手をしていたが、らちが明かないと思ったのか。
突如、私に話をふってくる。
私は店内の物を繁々と見ていたので、気づいていなかった。
「ちょっ、お兄ちゃん?」
「ん~」
呼ばれても生返事、全く気にしない。
「これ何か凄いなぁ~。どう思う?ナナ?」
「重くて、使えない。こっちが良いと思う」
「おっ、こっちか~。確かにこっちが良いかもなぁ~」
「うん、こっちが良い」
「もう~、お兄ちゃん~」
涙眼になってこっちを見るリリ。
ヤバ、やりすぎたか?
「はい、はい、リリ。何ですか?」
「説明して!お兄ちゃん!」
半ば怒りながら、リリが私に抱き付いて言ってくる。
「それで、お兄ちゃん?お使い?」
店員の女性が、私を呆れ顔で質問してくる。
「買い物です。妹達にプレゼントで」
「買い物? プレゼント? ここ武器屋よ? 解ってる?」
「分かってますよ、武器屋だってことくらい。リリが、妹がここが良いって聞かなくて」
「変わった妹さんね?でもお金有るの?」
「はい」
少し呆れた感じで聞いて来た店員に、カウンターに金貨の入った袋を置く。
ドス、チャリっと音がする。
店員のお姉さんが手を伸ばすが、私が袋から、金貨を1枚1枚置いていく。
「これでいいですか?」
「えっ!ええ」
お姉さんが首を縦に振る。
お姉さんも納得したみたいなので、金貨を袋にしまう。
「見せてもらっていいですか?」
「どうぞ、どうぞ」
お姉さんが愛想笑いを浮かべて、手で促す。
お姉さんと言ったけど、私より3~4才程年上の感じだ。
髪型はおさげにしている。中々かわいい感じの女の子だ。
ちょっとお近づきになりたい!
いかん、いかん、ここには買い物に来たんだ!
ナンパしに来たわけじゃない。
ナンパする勇気はないけどね?
私達は武器類を見て廻る。
リリがおもむろに、ロングソードを手に取る。
自分の身長程の武器をブンブン振っている。
お姉さんも止めようとして、カウンターから出て来るが、呆気に取られている。
そうでしょうよ。
こんな小さな子供が、私でも重いと思われる物を、平気な顔で振るっているのだから。
「う~ん、これ何か違う?こっちは?」
一端の剣士のような言葉を吐いて、他の武器を手に取るリリ。
なんて生意気な!
「お兄ちゃん、どう?これなんか?」
リリが、武器を手に、私に上目遣いで聞いて来る。
うっ、かわいい。
「そっ、そうだなぁ~」
顔が緩んでいるのが分かる。
かわいいものには甘いのが私だ!
「兄様、これがいい!」
後ろから、ナナが私に声をかけて来る。
振り向くとそこに、小さな赤い石の付いた片手のロッドを持っていた。
「これが良いのか?ナナ?」
「うん!これにする」
ナナには、本を買って挙げようと思っていたのに、杖が欲しいなんて。
「ああ、でもナナ、杖より本のほうが良くないかな?」
「これがいい!兄様と一緒」
「ハァ~、何が俺と一緒なんだ?」
思わず強い口調で聞き直した。
いかん、いかん、なんて言葉使いだ!
見ろ、ナナを!
眼に涙を貯めているじゃないか?
そして、リリとお姉さんが、
「「あー、泣かした~」」
仲が良いね、君たち?
「あー、ゴメン。ナナ?何でお兄ちゃんと一緒なんだ?」
「うっ、兄、様、胸の、グス、ペンダ、ント、赤い」
ナナが、涙を堪えて答えてくれた。
胸のペンダント?赤い?あー!
私は胸のペンダントを思わず掴む。
このペンダントは、マーサの形見だ!
赤い小さな石の付いたペンダント。
この小石はルビーのように赤いが、その赤さはルビーよりも濃い。
まるで血のように濃い赤だ。
マーサが亡くなった時に、ノーマンが私にくれた物だ。
何でも、ノーマンの祖父が持っていた物で御守りのような物だそうだ。
ノーマンはそれをマーサに渡して、プロポーズしたそうだ。
このペンダントは、それ以来ずっと、マーサが身に付けていた。
それを今、私が持っている。
「そうか、一緒か。そうだな、一緒だな」
「うん、一緒」
私はナナの頭を撫でて、やさしく抱き締める。
私もちょっと涙眼になっていた。
「これください」
「はい、これですね」
お姉さんが、ロッドをナナから受け取ってカウンターに戻って行く。
包んでくれるのだろうか?
あっ、しまった!値段聞いてない。
は~、仕方ない。今さら「やっぱ、止めます」なんて言えない。
そして、今度はリリが、
「これ、これがいい!これにする!お兄ちゃん」
「う~ん」
リリのほうに顔を向けると、でっかい両手剣、バスターソードを持っていた。
「却下」
「却下?何?」
「だめだって、お姉ちゃん」
リリは却下の意味が分からなかったのか、聞き直し、ナナがリリに教える。
「えー、何で?これが、いい! これが」
「そんなデカイの買ってどうするの?リリは使えないでしょ?」
「おっきく成ったら、使えるよぉ」
「おっきく成ったらって、わがまま言わない!」
「やだやだ、やーだ!ナナは良くて、リリは何でダメなの?買って、買ってー」
ダメだ、ただの駄々っ子になっている。
どうしよう?
「あー、アノね、リリちゃん?」
「やーだ、やーだ、買ってー、買ってくれないと暴れる!」
「それはダメだ!それはダメ!」
「なら、買ってー?」
私の体に抱き付いて、上目遣いで訴えるリリ。
恐ろしい!
この歳で、男を惑わせるとは?
「お姉ちゃん、お母さんに怒られる?」
「「えっ」」
ナナの言葉に、二人して反応する。
「お母さん、ここに来る前に、私達に言った。 兄様を困らせないようにって」
「うっ、そうだっけ?」
「兄様困らせたら、当分、家から出さないって言った」
「そっ、そうなの?」
私はリリに尋ねる?
「あー、もう、分かった!分かったわよ!ごめんなさい、お兄ちゃん」
ごめんなさい、お兄ちゃんは小さな声だったね。リリ?
「リリには、他所で何か買って上げるよ。」
「ほんと?」
「ほんと、ほんと」
「う~ん、分かった」
納得していないようだが、何とか収まった?
そうこうしている内に、お姉さんがすまなさそうに、聞いて来る。
「あの~、いいですか?」
「あっ、スミマセン。」
「いえ、いえ、お代は……になります?」
ほっ、そんなに高くなかった。
私はお代を払って、品物を受け取る。
そして、ナナに渡す。
「ありがとう、兄様」
ナナの満面の笑顔がまぶしい!
リリの苦虫のような顔が醜い。
私達は武器屋のお姉さんにお礼を言って、武器屋を後にした。
その後、服飾を扱う店で、リリが駄々をこねまくり、散々迷った末に赤いブレスレットを買うことになった。
正直疲れました。
速く宿屋に戻りたい。
あ~早く帰りたい。
二人の買い物を終えて、真っ先に思ったのがこれ。
ほんと~に疲れた。
私の両脇には、ご満悦な笑顔の二人がいる。
私の手を握って、「良かったよね~」って二人で顔を見合わせている。
本当に嬉しそうだ。
そして私は、疲れ顔。
二人が喜んでいるので、ま~、いっか。
でも、私の当初の目的である買い物、本の購入は諦めました。
だって、あまりにも時間が掛かりすぎて、予定の時間をオーバー。
昼食もまだの有り様。
本当なら、昼食を摂って、それからベス達と合流、買い物忘れが無いか確認、予算が余れば更に追加で買い物する。
その時は、私も同行する予定だったんですがね~。
予定をオーバーしている以上、軽く昼食を取らないといけない。
私達は、屋台が並ぶ通りを歩いている。
この屋台通りには、日本の屋台のように、リアカーに似ている手押し車を使っている。
車輪はゴムではなく、木製だが?
しかし、さっきからリリがあれがいい、これがいいっと、私の手を引っ張る。
やめてくださいリリさん!手が痛いです。
て言うか、腕ごと引っ張られる感じ何ですけど?
私が引っ張られるので、ナナも一緒に引っ張られる。
「お姉ちゃん、痛い!」
「へっ、そうなの?」
「うん、俺も物凄く痛い」
「ご、ごめんなさい」
シュンとなるリリ。
あらやだ、素直じゃない。
そんな素直に謝るリリに、感心しているとナナが。
「兄様、あれがいい」
「うん、どれどれ?」
ナナが指差す屋台を見る。
結構、人だかりが出来ている屋台だ。
私は屋台の人だかりが持っている料理?を見て、呆気に取られる。
な、なんだと!
あ、あれはハンバーガーじゃないか?
よく見てみると違うような感じもするが、しかしあれは紛れもなく、ハンバーガーだ!
それに周りをよく見てみると、このあ辺りの屋台はハンバーガーに似ている物が多い。
ど、どういうことだ?これは?
私が思案顔になっていると、リリが私を引っ張る。
「じゃ、あれにしよう。早く行こう。お兄ちゃん!」
い、痛い!引っ張らないでリリさん!
腕が痛いって、や め てー。
リリが強引に私を引っ張って行く。
ほんと~に痛いんだって、ナナまで引きづるのはやめてー!
ナナも一緒になって、私を屋台まで引きづる。
屋台のお兄さん?にお金を渡して、商品を受け取る。
名前は、ハンバーパウだそうだ?
微妙に違うが、確かにハンバーガーだった!
トマトソース?にピクルス?のような物がついていて、美味しかった!
思わず、三個も買ってしまった!
リリとナナには、二個づつ買って上げました。
三人仲良く、美味しいねって、言いながら宿屋まで、帰っていた。
しかし、この世界?微妙に前世の世界の物がある。
探せば、まだまだ有るのかもしれない?
私のような転生者が居たのか?
もしくは、今も居るのかもしれない?
少しだけ、恐いような、うれしいような、そんな感じだ。
私はいつか、この世界でもと居た世界の人達と出会うのだろうか?




