表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
79/106

20-2

 一度考え出すと、そればっかり気になってしまう。


「ねぇ。昨日の結果って、今日の何時頃出るのかな」

 手に持っていたパンを皿に置き、答えを求めて同じテーブルにいる3人に問いかける。


 一番最初に反応したのは、イライザだ。


「昨日の結果? ああ、そういや今日出るんだっけか。なぁマリサ、わかるか?」

 イライザに問われ、マリサは食事の手を止める。


「……わからない」

 しかし、その口から出てきたのは、私たちが持っている答えと同じだった。


「もしかして、ずっと気にしていらしたのですか? そういえば、食事もあまり進んでおられないようですし」

 まさにその通りだ。私は「うん……」と頷く。


「だ~いじょうぶですよぉ、ティナさん。絶対、いい結果が出てますって」

 フランカは安心させるようにそう言って、イライザたちに「ねぇ?」と同意を求める。


「フランカの言う通りだぜ、ティナ。なにせ、気を失うまで戦い続けたんだからな。マリサも、そう思うだろ?」

 楽しげなイライザの問いに対し、マリサは私を一瞥してから、小さく口を動かした。


「心配は要らない。私には及ばないけど、ティナさんはほかの受験者よりも多くゴーレムを倒したと思う。見てたから、わかる」

「えっ、見てたの?」

 近くに寄っていったとは言え、それでも結構距離があったのに?


「うん。見てた。なかなかいい動きをしていた」

 言葉を失い、マリサを凝視する。


 あの時、マリサもゴーレムに囲まれてた。……まぁ、楽々倒しまくってたけどさ。

 それでも、あの状況で、離れた場所にいた私のことを観察する余裕があったなんて……。


 もう何度目だろう。自分とマリサの実力の差を思い知ったのは。

 悔しいなぁ、ホント。


「相変わらず、仲良く4人で食事かよ」

 突然、この場にいる4人のものではない声が割り込んでくる。その声の主が誰なのか、考えるまでもない。


 一応振り返ってやると、そこにはもう見慣れた二つの顔があった。


「……?」

 見慣れた顔の一部分に、違和感を覚える。


「何見てんだよ、ティナ」

 リュシーは鬱陶しそうに頬を歪めながらも、すぐに私の視線の意味に気がついたようだ。


 額を触り、眉根を寄せて睨んでくる。


「見んじゃねぇよ」

「それ、どうしたの」

 リュシーの額には、絆創膏が貼られていた。


「なんでもねぇよ。黙ってメシ食ってろ」

「実はねぇ、ゴーレムの死体に足を滑らせてね、ひっくり返っちゃったんだよ。目の前で思いっきり転ぶもんだから、私びっくりしちゃった」

「テッサ!」

 慌ててテッサの口を塞ぐリュシーだけど、もうだいぶ遅い。


「ふぅ~ん、コケたのか」

 イライザはにやにやしながらそう呟き、


「確かに、滑りやすかったですもんね」

 フランカはフォローなのかなんなのかわかんないことを微笑みながら言い、


「ドジ」

 マリサはばっさりと斬り捨てた。


「お、おまっ、お前らぁ~……」

 顔も身体も、怒りでピクピク震わせながら、今にも暴れ出しそうなリュシー。


 うん。少し前のリュシーであれば、確実に暴れて、私たちの食事はテーブルごとぐちゃぐちゃになっていただろう。


「……ふん。まぁいいや、めんどくせぇ」

 しかし、リュシーは振り上げかけた拳を収め、私たちの隣のテーブルに勢いよくついて、テーブルの上にきれいな脚を投げ出す。


「テッサ。メシ持ってきてよ」

 頭の後ろで手を組んで、椅子をぎこぎこと動かしながら、姉に命令するリュシー。


 さすがに怒るかなとテッサを見やると、なんとなく不愉快そうな顔はしているものの、怒声を吐くことはなかった。


「行儀悪いから、下ろしなさい」

 それは、怒ると言うより、叱ると表現した方が正しい声色。テッサは腰に手を当て、リュシーの脚を睨みつけている。


「……っせぇな」

 と吐き捨てつつ、リュシーはテッサの言葉に従って、脚を下ろした。そして、腕を組み、そっぽを向きながら「早く持ってこいよ」と言う。


「はいはい。いつものでいいんだね」

「そんなに選ぶほど、メニューねーだろ」

 こうして見てると、やっぱりテッサは姉で、リュシーは妹だなって感じがする。でもさ、双子ってもっとやることなすこと似ちゃうもんじゃないの?


 ……あ~、でも、うちの弟と妹も双子だけど、顔が似てる以外、言動にはそれほど共通するところは無いなぁ。

 強いて挙げるなら、2人とも頑張り屋なところは似てるかも。私の代わりに、家事を分担して一生懸命やってくれてるし。


 テッサとリュシーは、どこが似てるんだろう。顔は似てるけど、性格は全然違うよね。

 あ、でも、剣の腕は2人共かなりのものだよね……。


「おい。なに見つめてんだよ。気色わりぃな」

「え? ……あ、ごめん。なんでもない」

 慌てて視線を逸らす私に、リュシーは忌々しげに舌打ちする。


「あ、そうだ。なぁ、リュシー」

 イライザが、何かを思い出したかのようにリュシーに尋ねる。


「あんだよ」

「あんたさぁ、昨日の結果がいつ出るか知ってるか?」

 問われて、リュシーは「結果だぁ?」と、さらに鬱陶しげに頬を歪める。


「知らねぇよ、そんなもん」

「今日の、夕方頃に貼り出されるそうですよ」

 リュシーの答えに重ねるように、2人分の朝食を持って戻ってきたテッサが言う。


 テッサは、テーブルに2枚のプレートを置き、リュシーに「昨日一緒に聞きに行ったでしょ」と言って目を細める。それに対し、テッサは「へっ」と知らん顔。


 ……今日の、夕方か。


 あ~。順位、上がってるといいなぁ。上がってると信じたい。

 いや、絶対に上がってる!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ