20-2
一度考え出すと、そればっかり気になってしまう。
「ねぇ。昨日の結果って、今日の何時頃出るのかな」
手に持っていたパンを皿に置き、答えを求めて同じテーブルにいる3人に問いかける。
一番最初に反応したのは、イライザだ。
「昨日の結果? ああ、そういや今日出るんだっけか。なぁマリサ、わかるか?」
イライザに問われ、マリサは食事の手を止める。
「……わからない」
しかし、その口から出てきたのは、私たちが持っている答えと同じだった。
「もしかして、ずっと気にしていらしたのですか? そういえば、食事もあまり進んでおられないようですし」
まさにその通りだ。私は「うん……」と頷く。
「だ~いじょうぶですよぉ、ティナさん。絶対、いい結果が出てますって」
フランカは安心させるようにそう言って、イライザたちに「ねぇ?」と同意を求める。
「フランカの言う通りだぜ、ティナ。なにせ、気を失うまで戦い続けたんだからな。マリサも、そう思うだろ?」
楽しげなイライザの問いに対し、マリサは私を一瞥してから、小さく口を動かした。
「心配は要らない。私には及ばないけど、ティナさんはほかの受験者よりも多くゴーレムを倒したと思う。見てたから、わかる」
「えっ、見てたの?」
近くに寄っていったとは言え、それでも結構距離があったのに?
「うん。見てた。なかなかいい動きをしていた」
言葉を失い、マリサを凝視する。
あの時、マリサもゴーレムに囲まれてた。……まぁ、楽々倒しまくってたけどさ。
それでも、あの状況で、離れた場所にいた私のことを観察する余裕があったなんて……。
もう何度目だろう。自分とマリサの実力の差を思い知ったのは。
悔しいなぁ、ホント。
「相変わらず、仲良く4人で食事かよ」
突然、この場にいる4人のものではない声が割り込んでくる。その声の主が誰なのか、考えるまでもない。
一応振り返ってやると、そこにはもう見慣れた二つの顔があった。
「……?」
見慣れた顔の一部分に、違和感を覚える。
「何見てんだよ、ティナ」
リュシーは鬱陶しそうに頬を歪めながらも、すぐに私の視線の意味に気がついたようだ。
額を触り、眉根を寄せて睨んでくる。
「見んじゃねぇよ」
「それ、どうしたの」
リュシーの額には、絆創膏が貼られていた。
「なんでもねぇよ。黙ってメシ食ってろ」
「実はねぇ、ゴーレムの死体に足を滑らせてね、ひっくり返っちゃったんだよ。目の前で思いっきり転ぶもんだから、私びっくりしちゃった」
「テッサ!」
慌ててテッサの口を塞ぐリュシーだけど、もうだいぶ遅い。
「ふぅ~ん、コケたのか」
イライザはにやにやしながらそう呟き、
「確かに、滑りやすかったですもんね」
フランカはフォローなのかなんなのかわかんないことを微笑みながら言い、
「ドジ」
マリサはばっさりと斬り捨てた。
「お、おまっ、お前らぁ~……」
顔も身体も、怒りでピクピク震わせながら、今にも暴れ出しそうなリュシー。
うん。少し前のリュシーであれば、確実に暴れて、私たちの食事はテーブルごとぐちゃぐちゃになっていただろう。
「……ふん。まぁいいや、めんどくせぇ」
しかし、リュシーは振り上げかけた拳を収め、私たちの隣のテーブルに勢いよくついて、テーブルの上にきれいな脚を投げ出す。
「テッサ。メシ持ってきてよ」
頭の後ろで手を組んで、椅子をぎこぎこと動かしながら、姉に命令するリュシー。
さすがに怒るかなとテッサを見やると、なんとなく不愉快そうな顔はしているものの、怒声を吐くことはなかった。
「行儀悪いから、下ろしなさい」
それは、怒ると言うより、叱ると表現した方が正しい声色。テッサは腰に手を当て、リュシーの脚を睨みつけている。
「……っせぇな」
と吐き捨てつつ、リュシーはテッサの言葉に従って、脚を下ろした。そして、腕を組み、そっぽを向きながら「早く持ってこいよ」と言う。
「はいはい。いつものでいいんだね」
「そんなに選ぶほど、メニューねーだろ」
こうして見てると、やっぱりテッサは姉で、リュシーは妹だなって感じがする。でもさ、双子ってもっとやることなすこと似ちゃうもんじゃないの?
……あ~、でも、うちの弟と妹も双子だけど、顔が似てる以外、言動にはそれほど共通するところは無いなぁ。
強いて挙げるなら、2人とも頑張り屋なところは似てるかも。私の代わりに、家事を分担して一生懸命やってくれてるし。
テッサとリュシーは、どこが似てるんだろう。顔は似てるけど、性格は全然違うよね。
あ、でも、剣の腕は2人共かなりのものだよね……。
「おい。なに見つめてんだよ。気色わりぃな」
「え? ……あ、ごめん。なんでもない」
慌てて視線を逸らす私に、リュシーは忌々しげに舌打ちする。
「あ、そうだ。なぁ、リュシー」
イライザが、何かを思い出したかのようにリュシーに尋ねる。
「あんだよ」
「あんたさぁ、昨日の結果がいつ出るか知ってるか?」
問われて、リュシーは「結果だぁ?」と、さらに鬱陶しげに頬を歪める。
「知らねぇよ、そんなもん」
「今日の、夕方頃に貼り出されるそうですよ」
リュシーの答えに重ねるように、2人分の朝食を持って戻ってきたテッサが言う。
テッサは、テーブルに2枚のプレートを置き、リュシーに「昨日一緒に聞きに行ったでしょ」と言って目を細める。それに対し、テッサは「へっ」と知らん顔。
……今日の、夕方か。
あ~。順位、上がってるといいなぁ。上がってると信じたい。
いや、絶対に上がってる!




