↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
マーセナリーガール -傭兵採用試験-  作者: 海野ゆーひ
第18話「幻との再会」
PR
73/106

18-4

 さて夕食の時間だと食堂へ行くと、入った途端に「よぉ!」と声を掛けられた。


 私たちがいつも使っている隅っこの席にはすでに2つの人影があり、その一方が声の主だ。


「……リュシーさん」

 いつもマリサが座っている席にはリュシー、その隣にはテッサがいた。


 テッサはすぐに席を立ってどいてくれたけど、リュシーは偉そうに腕組みし、マリサが近づいていっても立ち上がる気配はまるで無し。


 それどころか、「んだよ。言いたいことがあんならはっきり言えよ」と、マリサを挑発する始末。


 どうやら仲直りはできなかったみたいだなと思っていると、マリサが無表情のまま「どいて」と呟いた。

 あ~、こりゃまたリュシーが突っかかっていく展開だなと予想していたんだけど、全く正反対の予想外の展開になった。


「えっ?」

 思わず、声が出る。リュシーがそれに気付いて「あん?」と睨んでくるけど、「あん?」じゃないよ。


 ……ど、どいたぞ? リュシーがマリサの頼みを聞いた。

 そんなこと、あり得るの?


「そういや、ティナには言ってなかったな。どうやらこの2人、仲直りしたみたいだぞ」

 いつも通りマリサの隣に座りながら、イライザが言う。


「えぇっ?」

 と、リュシーの方を向くと、すでに彼女の顔は目の前にあった。


「おう、なんか文句あんのか、コラ」

 今にも掴みかかってきそうなリュシーに向かって両手を出し、「無い無い」と首を横に振って見せる。


 するとリュシーは鼻で笑い、マリサの方へ身体を向けた。


「まあ? いつまでもしょーもねぇことでいがみ合ってても、疲れるだけだかんな。ここはいっちょ休戦ってことにしてやったのさ。こいつが許してくれ~っつってよ、泣いて謝ってくるもんだからさ。ま、さすがに許してやっか、って思ったわけよ」

「泣いてたのは、あなたもでしょ」

 間髪入れずに、マリサが付け足す。それは本当のようで、リュシーは「なっ……」と動揺した。


「ふぅ~ん」

 ニヤリとする私を、リュシーはキッと睨めつけてくる。


「なんなら、ここ座るか? 一緒にメシ食ったらどうだ」

 私の胸ぐらを掴もうと手を伸ばすリュシーに、今度はイライザがニヤニヤしながら言う。


「ふっ、ざけんな! 調子に乗りやがって!」

 激高するリュシーの腕を、いつの間にか立ち上がっていたマリサがそっと掴む。


「! ……なんだよ、マリサ」

 なんだこりゃ。まるで、人が変わったみたいだ。あれだけマリサを敵視していたくせに、腕を掴まれただけで大人しくなってしまうなんて。


「隣のテーブルをくっつければ、一緒に食べられる」

 マリサはそれだけ言って、手を離した。そして、リュシーの目をじっと見つめる。


「……わ、わーったよ。ったく、仕方ねぇな」

 ブツブツ言い続けながらも、リュシーはテッサと一緒に隣のテーブルを動かし、今日の夕食は6人で食卓を囲むことになった。イライザとテッサの計らいで、マリサとリュシーは隣同士に。


 そして私たちは、その様子を眺めながら、食事を楽しむのであった。


 ……しかし、一体この2人はどうやって仲直りしたんだろうか。何を話し合って、ここまで関係を改善させたのだろうか。

 気になるけど、そういうのって、やっぱ聞くのは野暮だよね。




「……」

 でもさ、これは改善されすぎじゃないか?


 夕食後しばらくして大浴場へ行くと、そこにもリュシーたちがいて、一緒に入浴することになった。


「おい、マリサ。ちょっと立てよ」

 ザバッと立ち上がったリュシーが、指をちょいちょいと動かし、マリサを誘う。


 マリサはおとなしくそれに従い、湯船の中、裸の少女2人が向かい合う事態に発展する。


 一体なんのつもりかと思っていたら、リュシーはマリサの身体をジロジロと眺め回し始めた。

 うわぁ、何してんの、この子。マリサは平気な顔をしてるけど、もし私なら耐えられないな。

 同性同士っていってもさ、さすがに恥ずかしいわ。


 しかもリュシーは、マリサの身体を眺め終え、ニッと笑ったではないか。うわわ……。


「別れてからも、随分鍛えてたみてぇだな。なかなかいい筋肉の付きっぷりじゃねぇか」

「あなたこそ」

 そして、マリサまでもが口の端に笑みを浮かべる。


 それを見て思った。ああ、私たちはもう、普通の女の子じゃないんだなと。

 風呂場で筋肉の見せ合いをする女子なんて、こういう世界にしかいないでしょ。


「じゃあ、あたしはどうよ」

「ぶわっ」

 私の隣にいたイライザが、楽しげに立ち上がる。その飛沫を至近距離で浴び、視界が一瞬奪われた。


「おう、ティナ。すまん」

 ムスッとする私に謝った後、再度リュシーの方に向き直るイライザ。リュシーは、イライザの身体を見て、頬を歪めた。


「前から思ってたけどよ、ガタイいいな、あんた」

「だろ?」

 腰に手を当て、得意げに胸を張るイライザ。


 リュシーは、「別に褒めたわけじゃねぇよ、筋肉女」と言い、イライザは笑いながら「なんだとぉ~」と言いながら、お湯をすくってリュシー目がけてぶちまける。


「何しやがる!」

 怒ったリュシーが反撃。掴みかかっていくかと思いきや、イライザと同じようにお湯をすくってかけまくる。


「ちょっ、やめっ、ぷはっ、……リュシぃ~!」

 そこへまず、テッサが加わり、なぜかテッサに対してマリサがお湯をかけ始め、目を輝かせたフランカも参戦。


 1人湯船に浸かったままだった私は、そ~っとその騒ぎから距離を取ろうとしたけど、どこからか飛んできたお湯の塊に直撃し、びっくりしてバランスを崩し、湯船に沈む。


「ぶはっ!」

 慌てて立ち上がった私は、こちらを見て笑っているフランカと、口だけ笑っているマリサと目が合い、彼女らの仕業だと知る。


「やったなぁ~」

 そして、結局私も加わることに。


 当然、大浴場にはほかにも受験者がいたわけで、迷惑がられたのは言うまでもない。

 でも、楽しかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。