17-2
休憩後、次の舞台へ上がる。
2戦目の対戦相手は、長身で、逞しい肉体。見た感じ、イライザと同じパワータイプだ。
見た目通りであれば、その攻撃はかなり重たく威力があるはず。直撃はまずい。
だけど、このタイプは攻撃が大振りになることが多い。そして、そこに必ず隙ができる。
だから、一撃振らせてそれを躱し、反撃を素早く確実に決める。その戦い方でいこう。
……と、少し前までなら思ってただろうけどね。
「はじめっ!」
相手が自分と同等の実力であると考えると、外見だけでいろいろと判断するのは駄目だ。
とにかく、最初の打ち合いが重要。そこで相手を観察しよう。
ほぼ同じタイミングで剣を振り下ろし、かち合わせる。
……やっぱり、力は強い。だけど、イライザほどじゃない。
私は一瞬力を弱め、わざと相手に攻めさせようと考えた。相手は見事にそれに乗り、さらに力を込めてそのまま押し込もうとしてくる。
そこですかさず刀身を滑らせ、同時に体勢を低くして一気に地を蹴る。
相手の左手を抜ける一瞬で剣を上向かせ、胸を強打。相手の背後に抜けると同時に身を翻し、背中にも一撃加え、後ろへ跳ぶ。
悔しげに唸りながらこちらに振り返った相手は、大きな足音を立てて突進してきた。
しかし、その顔に怒りの色は無い。熱しやすい性格ではなく、気持ちの切り替えも早いようだ。
意外な速度で接近してきた相手は、両手で握った剣を振り回してくる。しかし闇雲に振っているわけではない。私が避ける方避ける方へ、的確に刀身が襲ってくる。
空を断つ音が、幾度となく耳朶を震わせる。動きは的確。そして、その怒涛のような攻撃に、私はなかなか反撃に移れずにいた。
だけど、ここで焦っちゃ駄目だ。
……避ければ避けるほど、攻撃は続く。続くから、こちらも動けない。それならば、攻撃を止めさせてしまえばいい。
私は相手の動きを見て、身を捩って剣を振る。それは相手の攻撃を受け止め、その動きを止めることに成功する。しかし一瞬だ。それを逃しちゃいけない。
私の剣の刀身から、相手の剣が離れるのと同時に前進し、懐に潜り込む。
そして、低い体勢のまま剣を上へ突き出し、相手の額を斬るようになぞった。
さすがに相手の顔に動揺が浮かび、慌てて身を離して剣を振ってくるけど、そうなれば動きは読みやすい。
振り下ろされる剣を、逆方向へ軽く跳んで躱した私は、すでに横溜めにしていた剣を前進しつつ振る。相手は、瞬時に引き戻した剣でかろうじて私の攻撃を防ぐけど、体勢が悪い。
私は力を込めて相手の剣を弾くと、後ろへ跳ぶと同時に相手の腕を叩き、相手が剣を構えてこちらへ来るのと同時に前に進み出て、攻撃を誘う。
相手は速度を上げ、そのまま剣を突き出してきた。
咄嗟に首を横に倒すけど、その刀身は私の左側頭部を撫で、さらにそのまま袈裟懸けに振り下ろされ、私の胸に強烈な衝撃を与えた。
一撃目の伸びは予想外。相手のリーチを考えてなかった。
だけど、焦りは無い。私の口にあるのは、おそらく笑みだろう。
楽しい。……戦うのは、楽しい!
3戦目の相手は、体型は私とほぼ同じ。そして、戦い方も私にそっくりだった。
打たせて返す、カウンタータイプ同士の戦いだ。
私が攻撃すれば、相手はそれを避けて反撃。相手が攻撃すれば、こちらも一撃を返す。
その繰り返しとなったこの試合、鍵を握ったのはスピードだった。
私の一閃を躱した相手は、頭を狙って剣を突き出してきた。それはきれいに私の額を突き、私に隙を作らせる。
それを見た相手は、その機を逃さずに次の攻撃へ移る。
が、それは私の狙い通り。ふらついたと見せかけ、相手が剣を振り下ろすのと同じタイミングで体勢を直し、素早く横手に回り込む。
そのまま相手の足を後ろから薙ぎ、バランスを崩させる。
よろけた相手は、それでも身体を捻って剣を突き出してくるけど、私は低い体勢をさらに低くして、床スレスレで躱しつつ潜り抜け、逆方向へ回り込む。
そして、ガラ空きの背中に連打を浴びせ、相手に苦鳴を上げさせた。
痛みに顔を歪めながらも、相手は距離を取ろうと動く。剣をこちらに構え、私の顔を睨みながら、じりじりと後退。
私も剣を構え、相手と目を合わせながら、油断なく動く。
だけど、いつまでもそんなことをしている気はさらさら無い。そっちが来ないならこっちから。
打てば必ず返してくるとわかっているけど、打たなきゃポイントが入らない。
接近しつつ、剣を横に振る。
相手は少し後ろへ跳び、着地と同時に体勢低く前へ。剣はすでに横に構えられている。それを、私の頭か胸に当てるつもりだろう。そして、予想通りの攻撃が直後に放たれる。
そこで私は、瞬時に右足から左足へ重心を移し、それを軸に身体を捻りながら回転。
相手の一閃は、私の後を追うように空を斬るけど、私の身体を捉えることはなかった。
相手の横手に回った私は、その勢いのままに相手の後頭部を強打。
相手は前のめりに倒れ、しかしそれでも、私の袈裟懸けの一撃を床に横になった状態で受け止め、とんでもない力で弾いた直後に起き上がり、即座に私の胸を刺突。そのまま背後に回ると、さらに背中を狙ってきた。
それをそのまま食らう私じゃない。
身体を回転させつつ後方へ跳び、相手の攻撃を躱すと、着地してすぐに肉薄。相手と剣をかち合わせ、お返しとばかりに力を込めて相手を突き飛ばす。
よろけたところへ潜り込み、斜め下から胸を斬り上げ、返す刀で相手の攻撃を受け止めると、また力比べ。
そして今度は、同じくらいの力で互いを弾き飛ばし、同時にバランスを崩す。
先に体勢を立て直したのは、私だ。直後に相手も剣を構え直すけど、その時にはすでに、私はその横を通り抜けている。
相手は慌てて距離を取ろうとするけど、直後に方向転換して相手を追いかけ、相手の攻撃を誘い、それをくぐり抜け、一閃。右膝の辺りを横から殴られた相手は、顔を歪めて苦しげに声を上げた。
だけど、相手はすぐに表情を引き締め、まだ体勢が低いままの私の背中に、剣を振り下ろす。
その衝撃で床に叩きつけられそうになるけど、私は転がるように相手の横を抜け、その勢いを殺さずに、床に片膝をついた状態で身体を相手の方へ向けると、飛び跳ねながら剣を振る。その時すでに、相手も攻撃を放っている。
私の一閃は相手の頭部を、相手の一閃は私の胸を斬って抜けた。
着地と同時に、私はさらに剣を振るけど、相手もまた、それに合わせて剣を振る。
もう、返し技なんて関係ない。ここまで来たら、剣を相手よりも多く当てることしか考えない。
私たちは幾度となく接近戦を繰り返し、審判の声が上がるまで剣を振り続けた。




