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14-4

 いよいよ明日は二次試験最終日というところで、今日は休日。


 もうね、何をどれだけ悩もうが、12勝5敗っていう成績は変わらないわけで、全てを受け入れて、今日はゆっくり休んで、明日に備えるのみだね。



 というわけで、今日も4人揃って食堂にやってきた私たちは、自然と成り立っていた席取り役と食事運び役という役割分担をして、着々と朝食の準備を整えていった。


「これで全部か~?」

 テーブルの真ん中に、イライザが運んできた山盛りのポテトサラダを置いたら準備完了。


 私たちは「いただきます」と言って、一斉に食事を始める。




「おはようございます」

 食べ始めから少しして、背中にそんな声が当たった。食事の手を止めて振り返るとそこには、リュシーを伴ったテッサの姿があった。


 2人とも、朝食を乗せたトレイを持って立っている。


「おい、ほかを探そうぜ」

 リュシーは不満げにそう言うと、食堂を見渡す。どうやら、席を探しているようだ。


「ここが空いてるんだから、いいでしょ」

 唇を尖らせる妹を構わず、テッサは私たちの隣のテーブルにつく。確かに、ほかに空いてる席は無いように見える。


 隅っこの方のテーブルはあまり人気が無いから、私たちはいつも一番端のテーブルにつく。いつも空いてて、探す手間が省けるからね。そして今日は、その隣も偶然空いていたわけだ。


 偶然と言えば、この2人と同じ時間に食事を摂るのは初めてだ。

 いつも、私たちより先か後に食堂に来る。あまりに一緒にならないから避けてるのかと思ってたんだけど……。


「ったく。仕方ねぇな」

 ふてくされながらも、リュシーはテッサの向かいに座った。そして、位置的に隣にいる私の方に顔を向け、ギロッと睨んでくる。朝っぱらから見たくない顔だ。


「早く食って出てけよ」

「今食べ始めたとこだよ」

 そうして、私たちは睨み合う。


「リュシー」

 テッサが注意するけど、リュシーは聞く耳を持たない。舌打ちし、「気分悪ぃぜ」と吐き捨てる。そりゃこっちのセリフだっての!


「なぁ、マリサ。あんたさ、この2人と同郷なんだろ? どういう仲なんだよ」

 言わなくてもいいことを、イライザが言う。その顔は、なぜか楽しげだ。


 それを聞いたリュシーが、「どんな仲でもねぇよ、黙ってろ」と反応する。けれどイライザは、リュシーの態度に怒ることもなく、「わりぃわりぃ」と笑う。


 すると、口の中のものを嚥下したマリサが、ヴェルレ姉妹を見やる。これにも、「何見てんだよ」とリュシーが噛み付いた。


「……この子たちとは、ヘルムヴィーゲ国内の、とある孤児院で出会った」

 静かな口調で、マリサは言う。


「孤児院? あ、そっか。あんたの親って……」

「そう。ファミリアに襲われて死んだ。私は、ティナさんのお父さんに助けられ、生き延びた。その後送られたのが、その孤児院」


 他人に言いづらい記憶のはずなのに、あくまでマリサは淡々としている。

 自分ではない、別の誰かの過去を振り返っているかのようだ。


「孤児院で、友達を作れずに一人ぼっちでいたそいつに、声をかけてやったのがあたしたちさ。なぁ、マリサ」

 にやりと口を歪めたリュシーが、話に乗ってきた。


 彼女の恩着せがましい言い草に、しかしマリサは、小さく頷く。


「どういうつもりで近付いてきたにしろ、あの時の私には、一緒にいてくれる彼女たちの存在は心の支えだった」

 その言葉に、リュシーは激しく動揺する。


「――なっ、なな、何気持ち悪ぃこと言ってんだよ。あんたが苛められてんの見て楽しかったから、あたしもやってやろうと思って近付いただけだ!」


 そこで、テッサが噴き出す。リュシーは、「何笑ってんだ!」と彼女を睨む。


「だって、それ嘘だもん。マリサに声をかけて、一緒に行動するようになっても、一度もマリサを苛めなかったじゃない。私、そばで見てたけどさ、イジメっ子とイジメられっ子って言うより、仲の良い友達って感じだったよ?」


 笑うテッサに、リュシーは忌々しげにテーブルを叩く。食器ががしゃんと音を立て、コップの水が激しく揺れた。

 テッサは、目を丸くして固まる。


「ふざけたことぬかしてんじゃねぇ。だぁれがこんな女と仲良くするかよ」

「でも……」

「るっせぇ! 黙って飯食ってろ」

 テッサの言葉をぴしゃりと封じ、リュシーはマリサの方へ目を向ける。


「あんたも勘違いすんなよ、マリサ。あたしは、あんたのことぜってぇ許さねぇからな」

 獰猛な視線に、マリサは涼しい顔で「そう」と呟いた。そして、黙々と食事を再開する。


 テッサも、2人の様子をちらちら見ながら黙って食事を続ける。リュシーは「ふん」と鼻を鳴らし、肘をつきながらパンをかじりだす。


 静まり返った食卓で、私は隣にいるフランカと、斜め前にいるイライザと、目を合わせた。そして、眉をひそめて小首を傾げる。


 この2人の間に、一体何があったんだろうか。


 想像しかできないけどさ、きっと出会った当初の2人は、テッサが言っていた通り、仲が良かったんだと思う。

 だけど、何かしらの理由で険悪な仲になって、今に至る。……そんな感じなんじゃないかなぁ。ていうか、それしか考えられないよね?


 リュシーは、マリサに対して「許さない」と言った。ってことは、マリサに原因があるってことなんだろうか。

 気になるなぁ。聞いちゃ、駄目かな……。


 でも、今は無理だね。聞くなら、リュシーがいない時じゃないと。


 そこで、もう一度フランカと目を合わせる。フランカは妙に目を輝かせ、力強く頷いて見せた。

 ……どうやら、私と同じようなことを考えているようだ。

 だから私も頷き、そして2人同時に、マリサに顔を向けた。マリサは私達を一瞥したけど、食事の手は止まらない。


 よし。部屋に戻ったら聞いてみよう。

 私とフランカは、ばくばくと食事のスピードを上げた。

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