•プロトコル4:さよならジョーカー
破壊された部屋に静寂が落ちた。
ジョーカーは埃を咳き込みながら立ち上がった。ケイルがいた場所を見た。空っぽだった。
「……いや……いや……」
彼は床を殴り、絶望した。「何年もの研究! 何年もの犠牲! 全て失われた! 俺の計画が失敗した!」
周りを見回し、出口や解決策を狂ったように探した。視線が床に落ちた割れたタンクに止まった。少女の、惨たらしく解剖された亡骸。
ジョーカーの絶望は冷徹な計算に変わった。彼は白衣を剥ぎ取った。
「待て……」
少女の体まで這っていった。「まだ組織に放射能の痕跡が残っている。データもある。記録もある」
彼は壊れた、狂気じみた笑みを浮かべた。「そうだ。ゼロからやり直せる。俺に必要なのは……必要なのは……」
紫の光が空から降り注ぎ、前方を全て破壊した。
科学者は目を覆った。
「今度は何だ、このクソは!?」
石が埃の中に浮かび、一つの人影が降り立った。あの黒いマントの男だった。ジョーカーの血が凍った。相手が誰かは知らなかったが、生存本能が逃げろと叫んでいた。
「くそ……誰かは知らんが、ここに留まる気はない!」
ジョーカーは自分の力を呼び起こそうとした。
「ちくしょう、あの渦が全て吸い取った……もうネクサスがほとんど残っていない……」
彼は震える自分の手を見た。「あの忌々しいポータルがほとんど吸い尽くした!」
彼は背を向け、森に向かって走り出した。
仮面の男は静かに地面に着地した。首を傾げ、ゴキブリのように逃げる科学者を見つめた。
指を一本上げた。
「哀れだ」
紫のエネルギーの一撃が指先から放たれた。視認するのが不可能なほど速かった。
エネルギーはジョーカーの背中に直撃し、彼を金属のドアに叩きつけた。彼は血を吐きながら倒れ、背骨が折れ、脚が動かなくなった。
仮面の男は彼に歩み寄った。足音は一切しなかった。屈んでジョーカーの首を掴み、片手で地面から持ち上げた。
「この惨めな……」
仮面の男の声は落ち着いていたが、空気を重くする圧力が込められていた。「お前がここで何をしたか、わかっているのか?」
ジョーカーは男の手首を掴み、足をばたつかせて抵抗した。
「た……頼む……殺さないでくれ……俺は役に立つ……知識がある……」
仮面の男はさらに力を込めた。
「お前が何をしたか、わかっているのか?」
繰り返した。「お前は現実そのものを危険に晒した。混沌と虚空の融合を強引に行い、異形を生み出した」
「ど……どういう意味だ?」
科学者は息を詰まらせ、視界が暗くなった。「何を言ってる……俺はただ家に帰りたかっただけ……」
「お前は決して帰れない」
素早い動きで、仮面の男は手をジョーカーの胸に突き刺した。躊躇なく、体を貫いた。
ジョーカーは目を見開いた。血が口から溢れた。
「死ね、苛立たしい虫けら」
仮面の男は首を離し、体を床に落とした。去ろうと振り返った時、何かが彼の注意を引いた。
ガラスの破片の中に、少女の小さな亡骸があった。
仮面の男は止まった。彼女の元へ歩み寄った。
「また一人の無垢な者か」
彼は呟いた。
跪いて亡骸を腕に抱き上げた。彼女は驚くほど軽かった。
「こんな汚い場所に置いておくには値しない」
彼は立ち上がり、敬意を持って彼女を抱いた。片手で空間を引き裂き、暗いポータルを開いた。
破壊の跡をもう一度見つめ、それからジョーカーの「死体」を見た。
「ゲームは始まった」
彼は虚空に向かって言った。
仮面の男の背後で黒いポータルが閉じた。彼はもはや現実の世界にはいなかった。どこにもいなかった。
それは広大で暗く、静かな空間だった。床も天井もなく、無限の闇に遠い輝きが点在するだけだった。それらは星ではなかった。
「くそ……くそ!」
彼は虚空を殴り、衝撃波を真空に広げた。「俺はできなかった。あいつの誕生を止められなかった」
「疲れているようだね、黒の断片」
声は優しかった……
仮面の男は振り返った。虚空に浮かぶ、大きさの測り知れない人影があった。大理石のように白い肌、水の中に沈んだように漂う長い金髪、金色の仮面で覆われた顔。そして計り知れない大きさの四枚の巨大な白い翼。
「……どうだい……能力の母よ?」
仮面の男は答えた。「それとも王国の守護者と呼ぶべきか?」
「ここでは名前など意味がない、創造の中心」
彼女は周囲の空間を揺らした。「私はあなたを見ていた。無数の時間線を旅し、現実から現実へ、泡から泡へと跳び、あの少年をあらゆる世界で殺そうとするあなたを」
彼女は彼に向き直った。
「諦めなさい。無駄よ。あの子の誕生は必然。もう何度も繰り返してきたこと」
仮面の男は歯を食いしばり、震える拳を握りしめた。
「何を言っているんだ?」
彼はポータルが閉じた方向を指差した。「あいつはただの目に石を埋め込まれた人間じゃない。混沌そのものだ! 全ての存在を貪り尽くす異形だ!」
仮面の男は行きつ戻りつ歩いた。
「私も知っている。あなたも知っているはずだ」
能力の母は冷静さを保った。
「関係ないわ」
彼女は言った。「あれは彼の運命。苦しみが器を形作り、虚空と孤独がそれを満たす。彼はすぐにここに来る。受け入れなさい、黒の断片。サイクルは続けなければならない」
「受け入れるだと?」
仮面の男は止まった。黒と紫のオーラが体から溢れ出した。「絶対にしない。覚醒前に殺せなかったのなら……今、奴が自分が何者かを理解する前に殺す。全てを破壊するのを阻止して……」
彼は言葉を終えられなかった。
人間の姿が崩れ始めた。皮膚がひび割れ、下から黒い光が脈打っていた。
「この姿の時間は尽きた」
能力の母が囁き、自分の体も金色の光の粒子に溶け始めた。「私たちはただの投影に過ぎない。あの子が来ている……物理的な存在はもう許されない」
「いやだ!」
仮面の男の叫びが響き、体が崩壊した。
一瞬で、男と女は消えた。彼らのいた場所に、永遠の静寂の中に二つの物体だけが浮かんでいた。
憎悪と決意に震える黒い結晶。
そして金色の光の球体。
二つは互いに周回し、他のものと混ざり合って飛び去った。
一方、ケイルはポータルの中を旅していた。体が引き伸ばされ、腕が数メートル伸び、皮膚が裂けては即座に再生した。現実がぼやけて通り過ぎ、すでに限界だった心が繰り返した。
(アナ……ヴィクトル……マテウス……)
突然、圧力が止まった。ポータルが崩れ、歪みが消えた。
ケイルは自由落下の感覚を覚えた。物理的な痛みはもうなく、ただ絶対的な冷たさと恐ろしい軽さだけがあった。彼は闇の深淵に落ち、意識が砕けていた。気を失い、体は世界の終わりの海に漂う難破船のように浮かんでいた。
時間はそこで存在しなかった。数秒か、数世紀か。ケイルはゆっくりと右目を開けた。左目——宝石の目——は疲れ果てて眠っているようだった。
「……どこ……俺はどこに……?」
彼はほとんど聞こえない声で囁いた。
体を動かそうとしたが、重かった。まだ落ち続けていたが、落ち方は今は優しく、羽のように軽かった。そして周りを見回した。
闇は消えていた。
彼は浮かんでいた。周囲に、数百万の断片があった。様々な大きさの結晶がゆっくりと軌道を描いて回転していた。想像できる全ての色、そしてケイルが知らない色もあった。それらがケイルの周りを回っていた。
「これは……何だ?」
ケイルは虚空に問いかけ、恐ろしくも美しい光景に目を奪われた。「ここは……天国か? それとも地獄か?」
彼は震える手を伸ばし、近くを通る小さな金色の断片に触れようとした。
ケイルはその虚空の中心で浮かび、魅了されていた。しかしその驚嘆は長く続かなかった。左目が輝き始めた。
王国が反応した。
平和に回転していた数百万の断片が、突然止まった。そして一斉にケイルに向かって飛来した。
「な……いやだ!」
ケイルは顔を覆おうとしたが、腕が言うことを聞かなかった。結晶が体に突き刺さり始めた。何百。何千。
「アァァァァァァァ!!!」
皮膚が限界まで引き伸ばされる感覚。魂が重みで潰される感覚。体が耐えきれなかった。体内に入った断片は激しく弾き出され、王国中のあらゆる方向に破片となって飛び散った。
ケイルの体は意識を失ったまま落ち続け、断片の王国の層を突き抜けていった。
しかし彼の心は……別の場所へ行っていた。
ケイルは瞬きした。
断片の色づいた闇は消えていた。
彼は立っていた。
床は白かった。空は白かった。地平線は白かった。
「……今度は……どこだ?」
ケイルは回りを見回し、壁やドア、何かを見つけたがった。
何もなかった。ただ永遠に続く白い無限だけだった。彼は自分の手を見た——綺麗だった。血一滴ついていなかった。
ケイルは笑い始めた。
「ははは……」
乾いた、喜びのない笑い声だった。彼は膝をついた。涙が溢れ出した。笑いながら泣き、体を前後に揺らした。
「俺は死んだのか? これか? ようやく死ねたのか? ははは……アナ、みんなここにいるのか?」
彼は必死に周りを見回した。「ははは……なんて面白い冗談だ! 宇宙はただのジョークだ!」
白い見えない床を叩き、息が尽きるまで笑い、嗚咽するまで泣いた。
「……もういい……」
ケイルは囁き、手の甲で顔を拭った。「もういい」
立ち上がった。死んでいるのか、狂っているのか、どうでもよかった。彼は歩き始めた。一歩。二歩。景色は変わらなかったが、彼は歩き続け、時間すら存在しないかのようにその場所は続いた。
やがて彼は見た。
無限の地平線に、白の中に際立つ何かがあった。
完璧な金色のピラミッド。
ケイルは足を速め、走り出した。近づくにつれ、構造物は大きくなっていった。
それは金色のピラミッドだった。
地面から数センチ浮かび、自分の軸を中心にゆっくり回転していた。表面は鏡のように滑らかで、ケイルの顔を映していた。彼はその前に立ち止まった……
「お前は何だ?」
ケイルは震える手を伸ばして尋ねた。
ピラミッドは答えなかったが、唸りが強くなり、ケイルの骨にまで響いた。彼は魅入られ、指を上げた。
「これで終わりにしよう」
ピラミッドの先端に触れた。
触れた瞬間は、水滴が落ちるように軽かった。ケイルの指が触れた点に、黒い亀裂が生まれた。その亀裂は瞬時に広がり、ピラミッドだけでなく空気そのものにまで及んだ。白い世界がひび割れ始めた。ケイルの足元の床が白いガラスの破片となって砕けた。
白い世界が爆発した。
ケイルは叫びながら足元に開いた深淵に落ち、深い闇へと沈んでいった。




