120話 嫉妬から来る決死の覚悟
氷結山脈の麓、レオンハルト殿下がミサキ(本物のリリアーナの肉体)を抱え、身を潜めていた隠れ家。彼は、自身が守るこの肉体の中身が、愛するリリアーナ様ではないと知りながらも、その姿に揺れ動いていた。
レオンハルト殿下の腕の中で意識を取り戻したミサキは、混乱していた。
「あ…ここ…」
彼女は、自分が本物のリリアーナの肉体に入り込んでいることに、罪悪感を覚えずにはいられなかった。しかし、同時に、この肉体が持つ驚異的な力と、ユナより優位に立てるという快感が、彼女の心を支配していた。
「殿下…どうして、私を助けたの…?私は…本物のリリアーナじゃないのに…」
レオンハルト殿下は、悲痛な表情で彼女の目を見つめた。
「わかっている。だが…この肉体は、リリアーナ様がこの世界に残した最後の証だ。それを、お前たちが持つ混沌や、アザトースの論理の道具にはさせん」
彼の言葉に、ミサキの心はさらに揺れた。ユナへのとりとめのない怒りと嫉妬が、再び頭をもたげる。
(どうしてユナだけが、いつも…こんなにも愛されるの?この体も、この世界も…全部、ユナのものだった。私が、ほんの少しでも主役になりたいと願っただけで、こんなことになるなんて…!)
ミサキは、自分がユナより劣っているという現実から目を背け、この肉体の力で、ユナを凌駕することへの執着を強めていった。
現在:地下研究所、自爆への誘惑
中央演算室での激しい戦闘は続いていた。セバスチャンはノエマとの激しい肉弾戦で傷を負いながらも、その動きを封じている。クロード王子は軍部隊を押し退け、私が千鶴の杖で混沌のエネルギーを注ぎ込む儀式を続行していた。
「ミサキ!邪魔をするな!」
私が叫び、千鶴の杖から魔力の波を放つと、ミサキは激しく苛立った。
「うるさい!ユナ!あなたはいつもそう!全部持っていく!」
ミサキの心に、隠れ家で感じたユナへの根深い嫉妬と自らの無力感が沸き上がった。このままでは、またユナに**「主役の座」を奪われる。そう思った時、本物のリリアーナの肉体の中に眠る時の導き手の膨大な生命エネルギーと魔力**が、彼女の感情と共鳴し始めた。
(もう…どうなってもいい…!この力があれば…!ユナごと、全部…!)
ミサキの瞳に、狂気に近い決意が宿った。彼女は、自らの肉体の奥底に眠る、時の境界のエネルギーを強制的に引き出した。
「クロード王子!リリアーナ(ユナ)!危険です!」
セバスチャンの悲鳴が響いた。ノエマとの戦闘を一時中断し、彼のセンサーがミサキの肉体から放たれる異常なエネルギーの収束を検知したのだ。
ミサキの全身から、本物のリリアーナの肉体から放たれるとは思えない、黒く不吉な輝きが発せられた。それは、生命エネルギーと魔力の複合体であり、自己崩壊を前提とした、究極の自爆技だった。
「ユナ!この世界ごと、あなたを無に帰してあげる! 私こそが、新しい主役よ!」
ミサキは、その全てを巻き込み、私たちを道連れにしようと、演算室全体を吹き飛ばすほどのエネルギーを解放した。




