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ソベルナ王国の魔法使い(魔法使いの元男爵令嬢はハイスペ王太子を翻弄する)  作者: 風野うた
第一部 その願い100%叶います!(天使カードに軽い気持ちで魔法付与をしたら大変な事になりました)

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9 見当違い

楽しい物語になるよう心がけています。

誤字脱字等のご連絡は感謝いたします。


 机に突っ伏したおれに影が話しかける。


「殿下、この邸の様子がおかしいと部下が言っています」


「どう言う意味だ?」


 おれは机から顔を上げた。


「詳しくは・・・。あの女性は警戒した方が良さそうです」


「分かった」


 キャロルの家だからと緊張を解いていたのは確かだった。影からの忠告を受け、おれは気を引き締める。


 コンコンとノックの音。


 ドアを開けて、スージー女史が入って来る。


「お待たせしました。お飲み物を持って参りました。どうぞ」


 彼女はおれの前にアイスティーを置いた。


「ありがとうございます。いただきます」


 おれは堂々と懐から銀の匙を出す。これは毒見のためにいつも持ち歩いている。そして、その匙を当然のようにアイスティーに付けた瞬間、屈強な輩が武器を手に傾れ込んで来た。


 手元の銀の匙は案の定、変色している。


「この様子ならば、誘拐の手引きは貴方がしたのか?」


 おれはスージー女史に向かって、低い声で威圧的に問う。


「さぁ、どうでしょう」


 驚くべきことに、彼女は堂々とシラを切る。


 この女は素人ではないな。


「おれが誰だか気付いていたのだな」


「その瞳で騙せると思うなんて、フフフ。殿下が可笑しいのでは?」


 嘲笑うような態度にイライラする。


「確保せよ」


 おれは影に指示を出した。


 刹那、執務室で影と輩たちの乱闘が始まる。おれは、それを横目に魔法を展開し、スージー女史を一番に捕縛した。ついでに乱闘している輩も1人ずつ浮き上がらせて手足を拘束し、床に落として行く。


 数分で決着はついた。


 しかし、大きな疑問が浮かぶ。スージー女史が誘拐に関わっているというのは全くの想定外だったからだ。


 背後にいるのは誰だ?


 とりあえず、その考察は一旦保留し、拘束した者たちの連行を急ぐことにする。


 おれは、スージー女史を重要参考人として、輩と一緒に王宮へ直送した方がいいと判断した。


ーーーーリューデンハイム邸の中庭に拘束した者たちをつれていく。念のため、影を二人ほど監視役に付け、王宮まで一気に転移魔法で送るつもりだ。


 久しぶりに魔力を大量につかう。


 常日頃、魔力の暴走を抑制するため、おれの両耳にはサファイヤのピアスが付けてある。その片方、左耳のピアスを外してから、彼らに右手を翳した。


ーーーーおれの指先から白い光が広がって行く。光は彼らを包み込むと瞬く間に姿を消し去った。


 マクスは誰も居なくなった中庭で、ここまでのことを考える・・・。


 この屋敷は何かしらの敵に掌握されていたということか?


 キャロルは危機に全く気付いてなかったのだろうか?


 早くキャロルに会って真相を聞きたい。と、思った瞬間、宙から白い毛玉が降って来た。


 ん?コイツは・・・。


 白い塊はフワッと広がって、地面に着地した。


 おれを金色の双眸で見つめて来る。


「貴方は王太子?ミーはピピと申します」


「もしかして、キャロルの!?」


「はい、ミーは森の精霊の眷属でうさぎの妖精です。キャロルから王太子に伝言を持って来ました」


 見た目の可愛さとは裏腹の落ち着いた話し方をする白うさぎに少し笑いが出そうになるも、我慢した。


「キャロルは無事か?何処にいる」


「キャロルは少し怪我をしていますが、自分で治せるからと治療を拒まれました。それから、敵を探りたいのでしばらく潜入すると言っていました。現在はブカスト王国ソルティール監獄塔に・・・」


「何だと!?ブカスト王国に居るのか?」


「はい、ブカスト王国にキャロルは居ます」


 マズイ!それはマズ過ぎる。


 まず、ブカスト王国と我が国は水面下で緊張状態が続いている。


 おれは手出し出来ない。勿論、我が国の騎士団も・・・。手を出せば、即座に戦争となってしまう。


 待てよ!騎士団・・・。


 もしかすると、この誘拐は氷の刃に対する嫌がらせの可能性もあるのか?


 我が国の騎士団の精鋭部隊のことを氷の刃という。その氷の刃を率いているのが、ソードマスター家門リューデンハイム男爵家だ。


 ブカスト王国は辺境の小競り合いではいつも氷の刃に負けている。


 それならば、おれ達は今、見当違いな対応をしているかも知れない。


 おれの婚約者候補絡みなのか、リューデンハイム男爵家に対する逆恨みなのか、はたまた両方なのか?


 判断材料が足りない。


 さて、どうするか・・・。


「ピピ、キャロルにおれからの伝言を持っていけるか?」


「はい、承ります」


 おれは今の状況で最善だと思う対策方法をピピへ託す。聞き終えたピピは直ぐにキャロルの元へ戻った。



ーーーーピピを見送った後、おれは影と打ち合わせを始める。


「影、ここに何人残っている?」


「殿下、二十名ほどです」


「では、屋敷の警護役で十名置いて行く。その内の二名は『恋人の丘』という観光地の対応をしてくれ。しばらく休業にしても構わないが、分からない事は酒場の踊り子ケイトに聞くといい」


「承知いたしました」


「残りの十名はおれと王宮へ戻るぞ」


 目の前に十名の影が現れる。


 マクスは再度、転移魔法を展開し、影たちと王宮へ戻った。


 ソベルナ王国は国の決まりで唯一魔法の使用が許されている王族でも最低限しか魔法は使用出来ない。だから、王宮に到着したら、マクスは直ぐに左耳へピアスを付ける。


 面倒だが、義務とされているのだから仕方がない。


 何故、こんなに魔法に厳しいのかといえば、過去の過ちがあるからだ。魔法は便利だが、数多の誘惑に人を溺れさせる危険性も孕んでいる。


 昔、国を魔法でメチャクチャにしたメディサール侯爵という貴族がいた。その侯爵を幽閉したと言われているのが、王家の森にある魔塔だ。


 一度入ると二度と出られないと言われる頑強な結界が、今も張られている魔塔。その後、魔法を規制する法令が整備され、魔法使いは魔塔へ送るという罰則が定着した。


 すると不思議なことに魔力を持って生まれて来る子が急速に減少し、現在、王族以外で魔力持ちは皆無に等しい。


 案外、キャロルの様に秘密にしている者がいるのかも知れないが・・・。


 一方、王族の子供は今も魔力を持って生まれるため、過去の過ちを繰り返さないよう、幼少期から魔法の取り扱いについて厳しく教え込まれるのだ。


 おれも普段なら余程のことが無い限り、魔法は使わない。


 だが、キャロルを救出する為ならば、幾らでも使ってやる。


 彼女は大丈夫だろうか?


 一刻も早く駆けつけて、この腕に抱き締めたい。


最後まで読んで下さりありがとうございます。

面白いと思ったら評価、感想のほど、どうぞよろしくお願いいたします。


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