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ソベルナ王国の魔法使い(魔法使いの元男爵令嬢はハイスペ王太子を翻弄する)  作者: 風野うた
第一部 その願い100%叶います!(天使カードに軽い気持ちで魔法付与をしたら大変な事になりました)

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10 酷い奴

楽しい物語になるよう心がけています。

誤字脱字等のご連絡は感謝いたします。


 この場所の雰囲気に負けない様に他愛も無い事を考えて過ごす。――――しかし、段々とそれも飽きて来た。


 最初は負けるものかと意気込んでいたけど、時と共にこの環境にも慣れて来る。


(でも、絶対此処は普通の場所じゃないよね?ピピは無事にマクスと会えたかな?)


 結局、横倒しでいるのも無駄に辛いだけなので、縄を外し、手首も治した。


(それにしても・・・、ここは堅牢過ぎるわよね。一体、私を誘拐したのは誰よ!?)


 脳内で不満をぶちまけていたら、宙から白い毛玉が現れた。


「あ、ピピ、おかえりなさい。どうだった。マクスと会えた?」


 ピピはカラダをクネクネと左右に振って、首もくるりと一度回す。


(ストレッチ?――――疲れたのかしら)


「キャロル、只今戻りました。無事に王太子に会えました。伝言もお届けしました」


「そう、それは良かったわ!これで行方不明にならずに済むわ。ありがとうピピ」


「はい、どういたしまして。それから、王太子からキャロル宛ての伝言を預かりました」


(おお!有力な情報かな?)


「ピピ、教えてくれる?」


「はい、王太子は此処に来られません」


「えっ、どういうこと?」


「ここはブカスト王国のソルティール監獄塔です。ブカスト王国と我がソベルナ王国は緊張状態にあり、王太子だけでなく、氷の刃も来られません」


「ウソ・・・。私、見捨てられる事が決定したの?」


 キャロルの目に涙が込み上げて来る。


(私、もう二度とマクスに会えない・・・の?)


「いえ、違います。まだ続きを聞いて下さい」


「ゔん・・・、続けて・・・」


「王太子からキャロルへの命令です。『あらゆる力を使うことを許す。責任はおれが取る。ソベルナ王国へ無事に帰って来い』とのことです。出来れば敵も特定して来てくれると嬉しいとのこと」


 涙が止まった。


(あんまりじゃない!?この事件、私に丸投げ?――――いや、マクスらしい話だけども・・・)


「ねぇ、あらゆる力って、魔法を全力で使って良いってこと?」


「はい、制限なしで、遠慮なくどうぞと王太子は言われていました」


 ピピは胸を張る。その様子がおかしくて、つい笑ってしまった。


「ピピは一緒に来てくれるの?」


「勿論です。ミーはキャロルと一緒に行動します」


「ありがとう」


(で、このソルティール監獄塔とやらはブカスト王国の何処にあるの?取り敢えず外に出てみて、周辺の様子を確認するところからだよね。いつまでもここにいる訳にはいかないし、気合い入れていくしかないわね)


 キャロルは拳を握る。


(それにしても、自分の身は自分で守れとかよく言ったわね。普通の王子様なら『おれが守る!』という場面でしょう?マクスに次会ったら文句の一つでも言ってやらないと。――――変装して来るとか方法なら幾らでもあるでしょうに!)


「本当に頭が硬いんだから!!」


♢♢♢♢♢♢♢


 「ハックション!!」


 王宮に戻ったおれはクシャミと寒気を感じた。


「あー、キャロル怒っているかもなぁ・・・」


 だが、先ずは父上に報告だな。


 急ぎ足で廊下を歩いていると後ろからおれを呼ぶ声が聞こえてくる。


 近づいて来ているから良いかと足を止めずに歩き続けていたら、国王の執務室前でジャンはおれに追い付いた。


「殿下!急いでいるのは分かりますけど、立ち止まれないくらいなのですか?」


 ジャンは不満をぶつけて来る。


「済まない。報告する事が多過ぎて焦っている」


「そうですが、それならぼくの報告も陛下の前でします」


 彼はドアの前の警備官に父上への取り次ぎを頼んだ。警備官はおれたちを直ぐに部屋の中へ通した。


「マクスとジャスティンか、キャロライン嬢の件はどうなった?」


 父上は前のめりで聞いて来る。おれはジャンへ先に報告していいと譲った。


「陛下、父から婚姻承諾書を預かって参りました。また直ぐに婚姻手続きを完了していただいて構わないとのことです。よろしくお願いいたします」


「ほう、リューデンハイム男爵は全て此方へ任せてくれるという事で良いのだな」


「はい、問題ございません」


 ジャンは陛下に預かって来た書状を渡した。おれはその様子を見て安心した。これから父上に直談判するために必要なものだからだ。


「それから、精鋭部隊の編成も各騎士団で完了いたしました。いつでも出動出来ます。ぼくからの報告は以上です」


「相分かった。では、マクスの報告を聞こうか」


「はい、おれはリューデンハイム領でキャロルの誘拐に関わった者たちを捕縛し、先程ここへ連行しました。その主犯格はリューデンハイム男爵家の経理担当スージー女史でした」


「えええ!?スージー女史って」


 ジャンは陛下の前だと言うことも忘れて大きな声を出した。


――――まぁ、驚くだろう。身内に犯人が居たのだから。


「ジャン、スージー女史のことは一旦置いて於いてくれ」


「はい、失礼しました」


「それで、ここからが難しい話になるのですが、キャロルは今、ブカスト王国ソルティール監獄塔に捉えられています」


「な、な、何だと!?お前の婚約者候補絡みじゃなかったのか!」


 今度は陛下が大声を出した。


「おれもまだ事件の全容は分かりません。リューデンハイム男爵家にブカスト王国絡みの輩が入り込んだのは氷の刃への腹いせなのか、それともおれの婚約者候補絡みも含んでいるのか・・・。ですので、先ほど精霊を使ってキャロルに伝言をしました」


「マクス、その状況で一体、何と伝えたのだ」


「魔法を全力で使っていいという許可を出しました。そして、自力で帰って来るようにと命じました。また、黒幕も特定して来てくれたら助かるという希望も伝えてます」


 執務室に沈黙が訪れた。


――――それ(沈黙)を破ったのはジャンだった。


「殿下、最悪ですね」


 続いて、国王も口を開く。


「お前は何と酷いことを言うのだ。捉えられて弱っているかも知れないのに可哀想だろう」


 二人はマクスに酷い奴だと目で訴えてくる。


「違います。お二人はキャロルの事を知らなすぎる!――――彼女は凄いんです。信じて待っていたら大丈夫です。まずは婚姻手続きを完了させましょう。キャロルが全力で魔法を使える様に」


「あー、最悪。殿下・・・父に伝えます」


 ジャンは淡々とマクスへ言う。――――あ~、それは本気で辞めて欲しい。


「ジャン、少しオブラートに包んで貰えると嬉しいんだが」


 マクスはダメ元で頼んでみた。ジャンは溜息をつく。


「そこはおれが行きますと口だけでも言って欲しかったな・・・」


 父上もため息まじりにマクスへの不満を吐き捨てる。


「すみません。戦争を起こす訳には行かないので・・・。んっ?戦争!?」


 おれは閃いた。


「もしかすると、この国の貴族で・・・。隣国と戦争になったら得をする者を調べた方が良いかもしれません」


 マクスの発言でジャンはハッとする。


「ぼくが調べて来ます」


「ジャスティン、よろしく頼む。婚姻の手続きを私達はこれから執り行うぞ、マクス」


 ジャンは先に退席した。


「ところでマクス、指輪の交換などはこの状況では出来ないだろう?仕方ないから端折るしかないな」


「いえ、先にキャロルに渡しています。今、指に嵌めているはずです」


「マクス、そういうところは抜かりないのだな」


 父上がジト目で再び、おれを責める。


「すみません。キャロルを領地に一人で帰らせたのは失敗でしたが、指輪を先に渡していたお陰で彼女は精霊の加護を得ており、居場所を掴むことが出来ました」


「精霊が付いているのなら少し安心だな。では王家の霊廟へ向かうとするか」


「はい、父上よろしくお願いいたします」


 キャロルが魔法を派手に使う前におれの正式な妃として、王家の霊廟の聖堂で登録する必要がある。魔塔の監視から彼女を外す為に・・・。


最後まで読んで下さりありがとうございます。

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