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第六章 ~最後はアレだった~

いよいよゲーム攻略もクライマックスです。RPGをプレイし終えた主人公にも、転機が訪れます。

 第六章

 × × × ×

 十二月二十六日 (月) 十八時三十分~二十二時三十分

 第六のダンジョン攻略も大詰め、だけど。もう少しだけ、強化パーツを入手しておきたい。特に防具用。カティア達に分配する分も。

 一時間足らず、第五のダンジョンでカティア達に頑張って貰う。『アイテムスティール』もまず失敗しないし、レベル一の攻撃魔法でもザコなら一撃。割と順調に武器用五つ、防具用四つ入手。武器用は四倍が三つ(二つ『物理攻撃力十パーセントアップ』付き)、六倍が二つ。防具用は四倍四つ。四十三万余りのEPをMP上限値(百八十万余り)に。消費EP一億九千九百八十四万余り。トライに戻る。

 武器屋で強化パーツを加工、片手半剣に装着する。一億三千二万三千四百二十四+百四万八千五百七十五=一億三千百七万一千九百九十九。体力と合わせると一億六千三百万オーバー。これで『連撃』食らわせて、それでも倒せないモンスターが現れない事を祈ろう。防具屋でも同様。ただし、一つずつカティア達の防具に装着。物防六百八十一万五千七百四十四+一万三千百七=六百八十二万八千八百五十一。魔防百七十万三千九百三十六+三千二百七十六=百七十万七千二百十二。アイテム整理、ドーピングでHP上限値を三千五百二十万余りに。これくらいで良いかな?第六のダンジョンに潜る。

 どうという事もなく第六層まで。四十分余りで四千七百八十万余りEPを稼ぐ。全速力で来てこれくらい。未探索の部屋に入ると、いきなり中ボスの部屋だった。消費EP八億、HP六億八千万。まぁ、大した事無いかな?舐めすぎ?

 ま、妥当な所かな、っていうのが感想。『連撃』一発。これもまたつまらない。獲得EP五百万。部屋に来るまで稼いだのと合わせて五千五百三十万余り。体力(四千三百万余り)、知力(三千万余り)、器用さ(五千万余り)、敏捷さ(五千万余り)、五感(三千百万余り)、HP上限値(五千五十万余り)に。消費EP二億五千四百七十四万余り。二つのスイッチをオン。部屋を出、残りのマップを埋める。この階層には、一つだけ他と違う大扉があって。以前通り掛かった時は閉まってたけど、今は開いてる。あのスイッチを操作したから?入ると、向こうは広い部屋。横にセーブポイント。いよいよ、ですか。セーブし、更に進むと。

 岩みたいな、やたらゴツゴツした体表を持つ地竜。硬そう。でも、片手半剣には『防御貫通』のアビリティが付いてるし。消費EP十三億、HP十億。さて、戦闘開始といきますか。

 はぁ、こればっかり。『連撃』一発。クリティカル二発で終了。思うんだけど、ボス戦て、何?手こずれない、ってどういう事?まぁ、このゲームのシステムだから、文句言っても仕方ないけど。獲得EP九百万余り。お約束の金属片を手に入れた。残るは一つ。体力(四千六百万余り)、知力(三千百万余り)、MP上限値(百四十二万余り)に。消費EP二億六千三百七十四万余り。部屋の隅には魔法陣がある。向こう側に口を開けた大扉の前まで行くと、イベント発生。

 ここから遺跡の神殿へ行けるのか、と『お試し一号』が呟くと、道が拓かれた事をギルドに報告すべき、とのアレックスの言葉に従い、ダンジョンを離脱。場所は変わってギルド。『お試し一号』達が戻って来ると、ここには居ない筈の人物が声を掛けてくる。エドマンドにイリス、ステラにクイル。なぜこっちに来たのか、と訊ねると、自分達の過ちに決着をつける為だ、とエドマンドは言った。正気を取り戻したイリスが、これからダンジョンに潜り、神殿に至る道を拓く為の算段をしていた、と説明すると、それなら私達が済ませたけど、とカティアが軽く言ってのける。みんな、黙ってしまった。とにかく、後は神殿へ向かうだけです、とアレックス。良くやってくれた、とエドマンドがようやく口を開き、頭を下げた。ステラが、神殿へ行くなら、これで準備を整えてきたら、と三万ゴールドくれた。今更こんなの貰っても仕方がないけど、ここでイベント終了。フリーになって、さてどうしようか?とりあえず、ショップを覗いてみる。武器屋に新武器が入荷してた。投擲ナイフ。基本攻撃力八千百九十二、必要体力一万六千三百八十四。とりあえず購入。投擲ナイフから強化パーツ付け替え、三万二千七百六十八に。装備する。もう少し強化パーツが欲しいかな?道具屋では、新しいHP、MP上限値の強化薬が入荷。HP上限値は一万アップで三万ゴールド。コストパフォーマンス高ッ!九百万ゴールド程注ぎ込んで、HP上限値を五千五百万余りに。買い物はこれくらいにして。ちょっと第五ダンジョンに潜ろう。

 一時間足らず、四十四万EP余り。MP上限値(百八十六万余り)に。消費EP二億六千四百十七万余り。強化パーツは武器用三つ、四倍のみ。防具用三つ、四倍のみ。一つに『魔法防御力十パーセントアップ』付き。トライに戻る。念のためエドマンドの屋敷に行くと、誰も居ないとの表示。やるね!武器屋で加工、投擲ナイフに装着。物理攻撃力十三万一千七十二。防具屋でも同様。アビリティ付きをカティアに、他の一つをアレックスに。残りを金属鎧に装着、物防七百三十四万三十二+一万三千百七=七百三十五万三千百三十九。魔防百八十三万五千八+三千二百七十六=百八十三万八千二百八十四。ヘキサに戻り、ギルドに寄る。イベントで、準備が整った旨を報告し、誰が行くか、といった事を話していると、冒険者が飛び込んできた。王国の騎士団が、造反の疑いで俺達を捕まえに来た、と。ここまでで第六のダンジョン攻略終了。続いて、最終章に入ろう。

 さて、王国の騎士団が街の外にやってきている。ギルドの偉い人が門の上から何用か問うと、隊長が、貴様らのギルドでは強力な黒い霧のモンスターを捕獲し、王国転覆の為の戦力にしようとしている、との疑いがあり、真偽の確認の為、査察に来た次第だ。早急に門を開けよ、と。その様な事を考える筈がない、と答えると。早急に門を開き、我々を受け入れよ。さもなくば叛意ありと見なし攻撃する、と、こう来る。と、そこへエドマンドとイリスが前に出た。エドマンドが、我が名はエドマンド、神殿の調査に随行した者である、と名乗ると、騎士団の中でざわめきが起こる。魔術師の中では、非常に高名な様で。続けて、神殿に至る道が拓かれた。今正に我々は三十年前の過ちを精算する為向かう所である、と。イリスも、我が名はイリス。調査隊の指揮役を拝命した者である。貴君らが何者によりもたらされた情報を元に、この地へ赴いたかは知らぬが、それは誤り、あるいは捏造である。叛意などこの地のいずこにも存在しない事を、我が名にかけて保証しよう、と。また騎士団内でざわめき。どうやらイリスは教団内でもかなりの地位にあった様で。隊長がざわめきを鎮めようとしている所へ、別の一団が近付いて来た。騎士団の増援か、と思っていると。隊長も知らない様で、何者か、誰の命により参上したか、と誰何する。間隔を空け停止した一団は、しかし号令一下、いきなり騎士団へと矢を放った。慌てた騎士団。しかし、放たれた矢は、風系防御魔法により悉く防がれた。続いて一団の前に火系攻撃魔法が炸裂する。エドマンドの魔法だった。イリスが強化魔法を掛け、威力が増している、と。イリスが、ここは一旦退却するが良い。彼らは恐らく『大いなる叡智』の同胞である。彼らの目的は、貴君らをここで全滅させ、その罪をギルドに着せ解体させる事であろう。この時点で出現したという事は、王宮内にも『大いなる叡智』の手の者が紛れている可能性が高い。早急に王宮へ戻られるが良い。我らが援護する、と。隊長は逡巡の後、忝ない、と騎士団に退却を命じた。一団は、攻撃の矛先をこちらに向けてきた。攻撃魔法の撃ち合いに。冒険者の一人が、おい聴いたか、あいつら『大いなる叡智』らしいぜ。いつもコソコソしてる奴らが、正面切って喧嘩をふっかけてきたぞ!、とそれに呼応し、だったら、俺達が日頃どういう連中を相手にしてるか、思い知らせてやろうぜ、と。鬨の声が上がる。そんな中、エドマンドは『お試し一号』に、さぁ、早く神殿へ向かおう。もし万が一にもここが破られた時、追っ手に門を閉じる儀式を邪魔される可能性がある、と。イリスも、地下遺跡を抜けたら二人を『封印瓶』に入れ、安全に門まで送り届ける、と。カティアが、私達も行く、と食い下がるが、イリスに、貴女達はここで彼らを食い止めて欲しい、と説得され、渋々、受け入れる。って、ええ!?ついて来ないの!?強化パーツ返してよ!なんて言っても話は進んで。第六のダンジョンに潜る。『お試し一号』が前衛、エドマンド達は後衛に配置ね。

 第一層入口の所に魔法陣が出現してる。スイッチを入れたから?でも、敢えて使わない。最後のEP稼ぎ、といきますか。ダンジョンボスの居た部屋まで四十分余り、六千三百八十万EP余り稼いだ。もはや一行動で全戦闘は終了。クリティカルは当たり前ってレベル。体力(六千万余り)、知力(四千万余り)、器用さ(六千万余り)、敏捷さ(六千万余り)、五感(三千九百万余り)、HP上限値(七千万余り)、MP上限値(二百七十万余り)に。消費EP三億二千八百万余り。一旦セーブ。神殿へ続く道の入口前でイベント。言った通り、イリスが『お試し一号』とエドマンドを『封印瓶』に封印する(封印に同意する気持ちがあるなら、HPを削る必要はない)。暗転。次には神殿の入口だった。近くにセーブポイント。セーブし、先に進む。と、イベントが。大広間の真ん中には、巨大な魔法陣。光の柱が伸び、中空から黒い霧が噴き出している。エドマンドが、あの中央に金属板を戻し、門を閉じる儀式をする、と。イリスが、最後の金属片は?、と問えば。いきなり光の柱の向こうから、ラスボス登場。何というか、八岐大蛇?八本の首が伸び、胴体は、絡み合った様に融合している。元は別々の大蛇が絡み合い、黒い霧の影響で巨大化、一つになった?消費EPは……一がい二千四百八十京!?HP一がい二千四百七十九京って・・・バカか!?こっちは一回の攻撃でダメージ一億九千万少々だぞ!?『連撃』使っても六十一億に届かないんだぞ!!?しかも奇襲って、ムリ過ぎだろ!!!?

 ………やっぱバカだ、これの作者。痛い一撃食らってアウトかっ!、って思ったら、被ダメージは二千三百万を割るくらい。それじゃ反撃、って『連撃』叩き込んだら、二回クリティカルが出て、アッサリ戦闘終了。虚仮威しも甚だしいわ!ラスボス戦のスリルを味わえないRPGって、一体何なんだ!?…ハァハァハァ、気を取り直して。最後の金属片を入手。イベントで、金属板を復元したイリスが光の柱の中に進入。エドマンドが呪文を唱え始める。光は様々に色を変え、やがて地中へ消えていった。魔法陣の真ん中に居たイリスが、これで門は閉じられました、と金属板を外し戻ってくる。エドマンドが、さぁ、戻りましょう、と離脱魔法を唱えた。

 ヘキサに戻ると、アレックスが、敵は撤退した、と。勝ち鬨が上がっている。イリスがギルドの責任者に、門は閉じられました、と、金属板を渡す。それでは、我らの役割は終わったのですね?、と問われ、いいえ、未だ終りではありません、と。テキストアドベンチャーみたいな画面になって。三十年余り開かれたままの門により、黒い霧に取り憑かれた動植物や人は未だ大勢あり、それらを処分、保護するという役目が、新たにギルドに課せられた。『お試し一号』達も、その役目を担う為旅立ったのであった、と。スタッフロールが流れる。色々肩書きはあるけど、同じ名前が何回も出てくる。あ、俺の名前もあった!最後に『企画・制作 G.I.ソフトウェア』と出てきた。これにてゲーム攻略は終了!万感の想いと共に。あー、長かったぁ!

 ● ● ● ●

 満足げな吐息を漏らしつつHMDを外す猛を押し包む様に、部屋中に拍手が響いた。幾つもの「お疲れ様」、「ご苦労様」の声が、それに混じる。

「やっと終わったね、ご苦労様!」

強引に握手してくる秀人に。

「…これさ、ゲーム機用だったら炎上するぞ?」

いつぞやの仕返しとばかりに捻ろうとする秀人の腕を、逆方向に捻り返す。降参とばかりに、秀人は左手で猛の腕を叩いた。握手が解かれる。少々恨めしげに、腕をさすりつつ秀人は言った。

「炎上上等さ。このゲームはラスボスの、バカげたステータスの為にあったと言って良いんだから」

「へぇへぇ。でもさ、良く考えたら、これ魔法主体のキャラだったら、どうやって攻略出来たの?攻撃魔法にクリティカル無いんじゃなかったっけ?」

「いやいや、禁忌魔法があったでしょ?」

「禁忌魔法?」

「アレックスも火系のを持ってた筈だけど?攻撃レンジ『全体』で、知力の十倍のダメージを与えられて、知力比べでクリティカルにもなるんだよ。ただMP消費は莫大になるし、形代って高価なアイテムを一つずつ消費するけどね」

形代、と言われ、ああ、そういえば、ヘキサの道具屋にそんなのがあったっけ、と思い出す。

「ちゃんと、考えてある訳だ…」

「職業を選択出来る様にしてあるんだから当然だよ」

少し胸を張ってみせる秀人。

「ま、確かに当然だよね」

うんうんと頷いて見せる。二人は笑い合った。

「実はさ、二十八日が仕事納めなんだけど、来てくれないかな?」

「?別に良いけど…」

デイパックを引き寄せつつ、猛は答えた。秀人は満面の笑みを浮かべた。

「じゃあ、いつもの時間にここで」

一同からの、再会を期す声に送られ、猛は部屋を後にしたのであった。


 午後十一時近くの電車内は、割合に空いていた。座席のそこここに空きが目立ち、コートやジャケット姿の乗客達が、あるいは目を閉じ、あるいはスマホを弄っている。扉脇の狭いスペースに立った才人は、窓外に視線を遣っていた。とはいえ、信号や街灯の明り以外、ろくに見える物もない。もっとも、彼はそれらを見てはいなかった。つい先程までの打ち合わせの内容を、静かに反芻していたのであった。能勢に手筈を整えて貰い、初めての会社に伺ったのであった。相手の感触はかなり良好で、この商談には希望が持てると直感していた。

「予想以上か…体勢を、考え直さなければ」

鏡と化した扉のガラスに、目元に優しさを帯びた才人の面が写り込むのであった。


 十二月二十八日。『G.I.ソフトウェア』仕事納めの日、猛は午後六時少し過ぎに来ていた。何か新しい展開があるのでは、と微かな予感を抱きつつ、通い慣れた部屋の扉を開く。

「ああ、来たか」

部屋の奥に陣取り、そう言って猛を迎えたのは才人であった。いつもの怜悧な表情ながら、口調は幾分柔らかい。いつもの面々は、まぁいつもの通りであった。

「ええと…」

自分がここに居て良いものか、猛がまごついていると。

「いつもの場所に、掛けてくれ」

才人に促され、いつもの机に着く。

「今、向こうの部屋では納会の最中だが、こちらは少々勤務体系が違うのでね。納会の前に、少し君と話がしておきたかった」

「俺と?ええと…それって、いつか話に出た?」

「そうだ。君を、正式に雇用したい。ただ、いきなり正社員というのは、現状難しい。半年程、アルバイトとして勤務し、私と君で合意が出来れば正社員として迎えたいと思っているが、どうだろうか?」

「試用期間、ですか?」

「そう考えて貰って構わない。どうだろうか?」

真摯な視線が、才人のみならず秀人達からも向けられる。どうにもいたたまれなくなってきた猛であった。

「…即答が難しいなら」

「いえ。その、ええと…それは、一向に構わないんですが。こちらでバイトをするとなると、今してるのは、時間的にムリですかね?」

「恐らくは」

「そうですか。そうなると、辞めなくちゃならないんですが、今年中とかは…」

「もちろんだ。一ヶ月先でも二ヶ月先でも、話が纏まったら秀人に連絡して欲しい。勤務初日に皆に紹介しよう」

「はぁ。そういう事でしたら…」

「これで話は終わり、で良いよね?そろそろ納会にしない?」

猛に目配せし、秀人が提案する。「そうだな」と、才人は一つ頷いた。加上姉妹が動き出す。棚に置かれていたビニール袋を机に移動する。中から缶ビールのパックやソフトドリンクのペットボトル、スナック菓子等を並べだした。紙コップが真ん中に置かれ、才人以外に缶ビールが配られた。

「前置きは忘年会で済ませておいた。乾杯!」

ウーロン茶を満たした紙コップを、才人が掲げた。ビールの缶がそれに呼応する。ささやかな納会は、それから一時間余り続いた。その間中、缶ビールを傾けながら、忘年会の時能勢が口にした「運命」という言葉を、猛は心地よく酔いの回ってきた頭の中で、反芻していたのであった。


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