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子供達の恋愛論  作者: 華南
子供達の恋愛論 〜秀司の場合〜
2/8

月曜日の女性

Act.2  月曜日の女性




「成月君。

好きです!

私と付き合って下さい。」


放課後、授業が終わり帰る支度を整えていた秀司は、学園1の美少女と唱われる香坂紗英に告白されていた。


何時もの様に穏やかに微笑みながら、秀司は紗英の告白をやんわりと断った。

紗英と言えば、自他ともに認める美少女である自分がまさか、告白を断れるとは思わなかったのであろう…。

秀司の言葉にショックで青ざめていた。

辛うじて出る言葉が「どうして…」の一言であった。


呻く様に問われる紗英の言葉に、秀司は零れんばかりの笑みでこう、答えた。


「僕には既に心に決めた方々が存在するので」


一瞬、秀司の言葉にどう反応すればいいのか、紗英は解らずただただ呆然と秀司を見つめていた。


(こ、心に決めた女がいるって…。

こんなに可憐で可愛い、学園1の美少女である私が告白しているのに〜!!!

だ、誰なのよ!

成月君の心を奪った女は誰!)


ぷるぷる身体を震えさせながら紗英は、秀司に詰め寄り、相手を問いただす。

紗英の剣幕に苦笑しながら言葉を紡ごうとした時、秀司は自分を呼ぶ声に踵を返した。


「秀司さん。

お迎えが遅くなってご免なさい。

かなり待たれたでしょう?」


秀司を呼ぶ女性の声に紗英が鋭い視線を向ける。

その横で秀司は深く微笑みながら近づいて行った。


「今日は志穂さんがお迎えにきてくれたんですね。

お仕事で忙しいのに僕の為に…。

有り難う。」


秀司の言葉に頬を染める志穂を愛おしく見つめる秀司。


その瞳が深い愛を称えている事を端で見ていた紗英は、秀司の心を奪った女を見て呆気にとられていた。


学園一美しいと唱われる紗英を遥かに凌ぐ美しさ。


陶器の様に滑らかな肌、二重の切れ長で、凛とした、そう、花に喩えると牡丹の花の様に艶やかな美女が秀司に近寄っていた。


「な、成月くん…。

も、もしかしてこの女性が成月君の…?」

途切れ途切れに問われる紗英の言葉に、秀司は笑みを深くして頷いた。


「ええ。

僕の最愛の女性で婚約者である高槻志穂さんです。」


秀司の言葉に大きく目を見開き、秀司を見る。


その秀司はと言うと、志穂に近づき肩を抱き頬にキスを落としていた。


秀司の急なるキスに志穂が「も、もう秀司さんたら…」と真っ赤に頬を染め、お返しにと頬にキスをする。

秀司と志穂のいちゃいちゃぶりを見ていた紗英を含むクラスメイト達は、その場にて固まってしまった。


「秀司さん。

今晩はどう過ごします?

実は学園に来る前に秀司さんのマンションで、料理を作って来たんです。」


志穂の言葉に秀司が花の様に微笑み志穂を抱き寄せる。


耳元で囁く声が志穂の心を揺さぶる。


「…食事だけではないでしょう?」


秀司の艶やかな言葉に志穂の鼓動が高鳴り、唇が震える。


「…秀司さんの意地悪。」


志穂の言葉に秀司がくすりと笑う。


「そうさせる志穂さんが悪い…」


ちゅっと、唇にキスを落とそうとする秀司に志穂が軽く抵抗する。


「みんなが見てるわ…。」


志穂の言葉に秀司が目を細める。


「別に構わないでしょう?

僕は貴方を心から愛している様を皆に見せつけたい。」


「…秀司さん」


と熱い口づけを交わす2人に男子達は歓声を、そして女子達は嬌声を上げその場にてばたばたと倒れていった。


秀司に恋心を抱いていた紗英は2人の余りの熱愛ぶりに、混乱していた。


(あ、ありえない…。

婚約者だなんて、信じられない…!

一体、何歳差なのよ、この2人は…!

成月君はまだ中一よ。

た、確かに12歳とは思えない程大人びていると思うけど、でも、でも、でも!あの女、美人だけど、でも年増に成月君を奪われたと思うとん、く、悔しい〜!)


秀司のクラスが騒がしいのに気付いた智流が、ひょいとその様子を窺っていた。


秀司と志穂のキスシーンを見て、智流ははああ、と深く溜息をついた。


(ま、また秀司のやつ、憚りもなく熱愛ぶりを見せつけて。

あ、今日は志穂さんだけか…。

そっか、今日は月曜日だもんな〜)


と、思い見ていると、自分の肘をやたらと突かれる。


誰かと思い見ると、それは紗英であったが…。


「ね、ねえ、杉原くん…。

あ、あれは何!

成月君にオバンの婚約者がいるなんて、初耳よ!」


目をギラギラさせ普段の可憐さぶりが息を潜めている姿に、智流はぎょっとしながら後ずさろうとしたが、逃がさないと言わんばかりに紗英が、

智流の制服を強く握る。


答える事を強要された智流はしぶしぶ紗英に答えた。


「あ、ああ、志穂さんね…。

あの女性は高槻グループの会長の妹さんだよ。」


智流の言葉に、制服を握っていた紗英の手が離れる。


「え…。

今、なんて…?」


余りの衝撃的な智流の言葉に膝が崩れ、その場に座り込む。


「あ、香坂さんのお父さんって銀座の「ホテルタカツキ」の支配人だったね。」


「…え、だって、だって、会長の妹さんって…、い、今、何歳なのよ…!

あの女、どう見ても20代前半にか見えない…」


「…女性に年齢は禁句だよ、香坂さん。

それに秀司には志穂さんだけではないよ。


後5人、婚約者がいる。


皆、日本有数の企業と言われる、坂下、更科、宮野、本間、笹崎財閥の会長の妹さん達が秀司の相手だよ。」


「坂下財閥…?

あの、更科グループ???

「六家」と呼ばれる、あの!」


「…そう。

だから、諦めた方がいいよ、秀司は。」


「…、ば、化けもん女…!」


ぽそり、と呟く紗英の言葉に、智流は、「実に女は恐ろしい…」、と心の中で嘆息を漏らした…。


「ねえ、志穂さん…」


マンションに戻り、志穂の手料理を食した秀司はソファに腰掛けている志穂の膝に頭を置き横たわっていた。


秀司の髪を優しく梳きながら、うっとりとした瞳で秀司を見つめる。


「…はい。」


「僕はいつも思う。

貴女達に8歳の時、想いを告げられて僕は婚約を交わしたけど、本当に僕で良かったのであろうかと。

貴女方に対する想いは誰にも比類ない程のモノだと、自負している。

だが、もっと相応しい方が貴女達にはいるのでは無いだろうか…」


と、紡ぐ秀司の唇をすっと奪う。


志穂の突然のキスに秀司が一瞬、目を見開き、そして深く微笑みながら唇を奪った。


長いキスの後、志穂が秀司に伝える。


「貴方だから私は愛したの。

婚約を交わしたの。

世間では私達の関係は到底、理解しがたい事柄でも、でもそれは周囲の考えであって私には関係ないわ。


貴方を愛している、秀司さん。


貴方が私の目の前に現れた時、私は心から喜んだわ。

ああ、やっと私は幸せになれるって。


今ね。


私はとても幸せなの。


週に一日、貴方とこんな風に愛を確かめ合い、生きている。


涼司さんが亡くなって、貴方に出会う迄ずっと、私は廃人の様に生きていたわ。

涼司さんの後を追い死ぬ事すら許されない己の立場を恨んだわ…。


でも、貴方がこの世に生を受けて私の前に現れ、そして私を心から愛してくれて、私はやっと生きている歓びを感じている事が出来たの。


愛してるわ…。


貴方だけよ、私の一生の中で、私の全てを奪っていいのは。」


志穂の言葉に真摯な目で見つめて強く抱きしめる。


そして耳元で情熱的に愛を囁く。


「僕も、貴女を愛している…!」


2人の甘い一時が始まった…。

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