108話 ユイの記憶 アンス拡張期3
470年後ーー
人類は魔物や荒れた土地と戦ってきた。
恩寵そのものを失い領土を放棄したこともある。
だがそれでも、
魔物を倒し、防壁工事を行い、街道を整備し、村をつくり、街へと発展させ、水をひき、土地を耕し、少しずつ少しずつ前へとすすんでいた
だが、、、ここ、ユイの領土では、、、
「ダメだ、また枯れてしまった」
「ここの土地は水捌けが良すぎるんだ」
「大丈夫だよぉ〜私が、ガシガシ耕し直しておくから!」
「ありがとうユエちゃん、、、そうだな!また頑張るか!」
「そうだよ!頑張って大きな街にしよーね!」
ユイ14代目恩寵士ユエ
先代から恩寵を継承してから未だ半年である
「そういや聞いたかい?」
「ん?なになにー?」
「東のゼロソウルで中級が討伐されたって」
「中級!?」
「ああ、なんでも、皇帝陛下とバイタール、そしてゼロソウルの3人がかりだったとか。壮絶な死闘だったってよ」
「ゆ、ユイだって負けてられないね!」
「ん?わはは、、、そうだな、、、今日もやりますか!」
ユイの領土は周りと比べても、発展しているとはまだ言いがたかったが、土地に住む民は恩寵士を慕い、厳しい土地ながら支え合って日々を過ごしていた。
そんな折ーー
「ユエ、下級だって!」
「か、下級!?」
「ど、、、どこ?」
「北の開拓村よ!」
ドクンっ!
同時にユエの頭に記憶が流れる、、、
まさか、キズナさんの、、、?
今はそれどころじゃない、ユエはかぶりをふって
答える
「ま、任せて!」
「、、、それとゼロソウルに救援もお願い!」
急げ!今度こそ!
ユエは鋼鉄製の棍棒を引っ掴み開拓村へと全力疾走する
私が皆を守るんだ!
北の開拓村に到着したユエは辺りを見回す
人は、、、まだ居る!
だが、その胴体がーー
「ギャアアアアア」
「ヒヒッ」
「ア、チギレタ」
その薄黒い魔物には、口が無く、両腕が長く、赤黒い両目だった
そして、ユエは魔物を視認した瞬間ーー
全身に震えが走った
今まで見たどんな魔物よりもこいつは圧倒的に、、、
強い
そして、確信する
自分は恐らく今日死ぬ事を。
一気に恐怖が身体の底から湧き上がってくるのを感じる
心臓の鼓動がやけに早い、手の汗は何故か引き、変わりに膝がガクガクと震える
それでもーー
や、やらなきゃ、、、
わ、私はユイの恩寵士ユエなんだから、、、
手が足が、歯がカタカタと鳴り、全身が震える
腰の袋から鉄の玉を取り出し、握りしめる
そして、全力で投げるーー
当たった!
魔物に当たった鉄の玉はゴンっと鈍い音をさせてからポトリと落ちる
「ン?」
魔物と目が合う
瞬間ーー
ユエの右腕が千切れた
「ぐ、ぎ、ぐうぅ」
見ると、自身の右腕があった場所に魔物の伸びた腕があった
「ヒヒッ」
ユエは自分では勝てない事を確信する
そして、1人でも多く逃す事を選択する
震えそうな声を隠し、叫ぶ!
「み、皆!走って!」
「ゼロソウルに救援を頼んでる!」
「そ、それまで、私がこいつを、、、」
そう、、、
私がこいつを一分でも、、、一秒でも、、、
瞬間ーー
まるで時間が引き延ばされるような感覚を感じる
いや、ダメだ!
私は簡単に死んじゃダメだ!!!
少しでも長く、生き残らないと!
私が死んだらこいつは皆を、、、
耐えろ、致命傷はダメだ、脚もダメだ
動けなくなったらすぐに死ぬ
時間をとにかく稼がなきゃ、、、
私の命を削って、、、
そして、、、それから約5分
ユエの身体はぼろぼろになりながらも黒い魔物の猛攻を凌いでいた
「ハァハァ」
「皆逃げられたかな?」
そう思いチラッと様子を見ようとすがーー
ガッ!
ユエの左足が飛ぶ
「ぐうぅっ!」
黒い魔物の手がそこに伸びていた
「ヒヒッ」
い、痛い!
それに、こいつ、、、楽しんでる!
でも、それなら、、、きっと、皆は助かる。
ユエは残った、右脚で立ち、黒い魔物と相対する。
目が合うーー
そろそろ限界が近づいているのを感じる
右腕の止血もまともにできていない上に
片脚をうしなって、もやは命は助かるまいと感じる
ああ、お嫁さんにはなれなかったな
でも、、、!
でも、、、!!!
「う、うおおおおおお!」
力を振り絞り、右脚に力を込めて飛ぶ!
「ヒヒッ」
!
ユエは咄嗟に身体を少し捻る
ガシュッ!
ユエの左脇腹から鮮血が舞う
耐えるんだ!
恩寵士は私しか居ないんだ!
ユエはバランスを崩しながら落下するがーー
左腕で、地面を掴む!
ドサッ!
魔物は逃げる民の方を向こうとーー
バッ!
ユエは左腕で砂をかける
「お前の相手は私だ!」
ガッ!
黒い魔物に蹴られてユエの身体は数十m転がる
ぎぃぃ、、、くそぉ、、、
「は、走って!お願い!」
黒い魔物はゆっくりとユエに近づいてくる
そして、ユエの残った右脚を踏み潰した
いぃ!
ユエは左腕でその足を掴む!
そして、、、噛みつく!
ガッ!
黒い魔物は噛みついたままのユエを鬱陶しそうに足を払う
「ヒヒッ」
「私が、、、絶対、、、絶対、、、ここで、、、お前を、、、!皆!!」




