モノローグ
初投稿です。
原典
むかし、まだ人の世が小さかったころ。
ひとりの神が、世界を歩いていた。
そのころの人は脆く、
森には人を喰らうものが棲み、
山には人の及ばぬものが棲み、
夜の闇には、名を呼ぶことさえ憚られるものがいたという。
人は逃げた。
人は隠れた。
人は、ただ朝が来るのを待った。
神は悲しそうだった。
そして神は、自らの身を分けた。
ひとつを与えた。
「恩寵と共にあれかし」
神の身は、ひとつ欠けた。
またひとつを与えた。
「恩寵と共にあれかし」
神の身は、またひとつ欠けた。
腕を与えた。
足を与えた。
神が与えるたび、
人は強くなり、
神は弱くなった。
ひとつ。
またひとつ。
神は与え続けた。
やがて人は、獣に立ち向かえるようになった。
火を囲み、
家を建て、
村を築いた。
やがて村は町となり、
町は国となった。
神から与えられたものは、
父から子へ。
子から孫へ。
幾代もの人の手を渡り、
受け継がれていった。
それでも神の悲しみは癒えなかった。
何を悲しんでいたのか。
何を求めていたのか。
それを知る者はいない。
ただ、神は最後まで与え続けた。
「恩寵と共にあれかし」
そして最後のひとつを与えたとき、
神は、血と肉と臓腑だけの皮袋となった。
その姿を、人々は慈しみと呼んだ。
弱き人々を憐れみ与えた慈悲を。
最後に神は、
「恩寵は失われず、子々孫々恩寵と共にあれかし」
そして、
「千年ののち恩寵と共に我の元に訪れよ」
そう言い残して神は、消えた。
天へ帰ったともいう。
大地へ還ったともいう。
ただ、人々の手には神から与えられたものが残った。
完結まで一応書いてます。




