18話 魔導騎士リシュエルについて(テュルーナス)
十八、魔導騎士リシュエルについて
(テュルーナス)
リードが居なくなってから、魔導騎士リシュエルの名は、ナギに引き継がれ、一般には、リシュエルは依然と変わらず健在を思われている。
今この王国で彼の名が無くては不都合が多い。他国に攻め入られる可能性が否めないからだ。
リード本人が何処にいるのかは不明である。
ナギについて、私は多くを知らない。私が知るのは、リード、ミストと親しかっただろうという事ぐらいだ。
実際、最初にその名を受け継ごうとしたのは、ミスト、本名はガレットだ。
彼こそリシュエルの名を継ぐべき人だと私は思っていたが、リードはそれを望んでいないらしいことが、ミストの記述からは読み取れる。
これからは平和が訪れるだろう。そうなれば攻撃に特化した魔術や剣術を学ぶ者も減るかもしれない。ミスト(ガレット)のような人が多くの民を引っ張るのだと思う。
命に限り有る者には、どんなに目を凝らしても見ることの出来ない新しい世界。もっともっと生きたいと思う。
ミストの活躍を見たいのだ。彼はきっと長生きするだろう。私も最近は自分の体はきちんと管理している。それでも尚、ミストやラスターのの丈夫さには追いつかないだろう。
リードはいつか時を経て、必ず、新しい世界に現れると思う。彼は変化を求め、人を育てる筈。例えば生まれ変わっても、ガレットと巡り会いたいだろう。ガレットは彼にとって特別なのだ。
今、私はリードが生きているのか、亡くなったのかは知らない。
そもそもリシュエルという名が何代受け継がれたのか、どういう人なのか、何年生きているのか、誰も知りようが無いのだ。私の友人たちにしても勘違いや覚えていない事のほうが多いだろう。
強いて言うならミスト(ガレット)とナギの記憶が一番正しいのだろうが、それにしても、名前をちょくちょく変えてしまうリシュエルの印象がミストとナギでは違いすぎる。誰に聞いても印象は違うだろう。
私を含め友人たちが彼を最後に見たのは、戦場だった。彼は多くの人を癒し、全てを投げ打って力尽きた様にみえたが、私が彼と最後に会話した時、初めて会った時と同じ優しい笑顔であった事に感謝している。
ナギという竜騎士なら、まだまだ多くを知っているだろうが、私にはナギが何処に居るのかわからない。戦場でナギが乗る竜の姿は何度も見たがそれ以外では殆ど彼と関わった事がないのだ。リードについて書かれた文章もミストの手を通して渡された。
ナギという人物は居るのは確かなのだが、戦争でも起きない限りミスト以外の私の前には現れないのかもしれない。
時折、以前戦場で見た竜が空を飛んでいるところを見ると、そう長い間遠くへは行っていないのだろう。
竜に乗っているのだとしたら、この世界の一周ぐらいはきっと簡単な事なのかもしれない。
私は世の中が静かになり、安心してナギが私の前に現れてくれるのを待とうと思う。
ナギならばきっと、リードの詳しい事情や、何を目的にしていたのかという疑問に答えを出してくれるかもしれない。その話をナギから聞かせてもらえる日を楽しみにしたい。
最後まで読んで頂いて有り難う御座いました。
今後、また続きを書くかもしれません。
ご指導ご鞭撻のほど、お願いいたします。m(__)m