表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
20/20

第20章:すべてを再構築する者へ

王都を包んでいた長い冬は、ようやくその終わりを迎えようとしていた。

けれど、街の人々の心にはすでに春の予感が芽吹いていた。

それは“変革”という名の季節。

その始まりを告げたのは、一人の少女――

いや、今や誰もがその名を敬意をもって呼ぶ、《再構築官》エレノア・グランツだった。

* * *

新たに設立された魔法再構築局。

その初代特任官として、エレノアは日々、旧来の魔法理論の整理と新体系の普及に努めていた。

「属性重視から意志重視へ。魔法は“誰が使うか”でその本質が変わる――」

教室では、平民の学生たちが目を輝かせてエレノアの講義を聞いていた。

ティナが彼らの間を回ってノートを配り、クラリッサが護衛として警戒を怠らず、アルヴィンは窓辺で微笑みながら見守っている。

「君が世界を変えた――そう言われる日も近いかもな」

「いいえ。私はただ、正すべきものを“見た”だけ。動いたのは皆よ。あなたたちがいてくれたから、私は戦えた」

エレノアはそう答えながら、ふと天を仰いだ。

* * *

その夜。王宮にて、最後の儀式が執り行われた。

“創造核”の正式封印と、その継承資格の登録。

ジュリアン王子が見守る中、魔導法陣の中心に立ったエレノアは、静かに手をかざした。

「私は、これを“力”としてではなく、“道具”として扱うことを誓う。

この力は、誰かを支配するためではなく、支えるためにあると知っているから」

核が静かに光り、再構成の証が刻まれる。

その瞬間、王国は“力”によって統べられる時代を終え、新たなことわりによって導かれる時代へと移行した。

* * *

後日。エレノアは一通の手紙を受け取る。差出人は不明。

だがそこには、かつての祖母・レナータが記した言葉が転記されていた。

『真の創造者とは、壊した者ではなく、赦した者のことだと、私は思う』

(赦し――私は、まだそれを学んでいる途中かもしれない)

けれど、もう怖くはなかった。

* * *

季節は春。王都では初めて、王家と市民の共催による“創造祭”が催された。

その開会式で、エレノアは壇上に立ち、こう語った。

「私はかつて、悪役令嬢と呼ばれました。

けれど、今ではその名を、誇りに思います。

あの時失ったものがあったからこそ、私は“取り戻す強さ”を学べたのですから」

民衆の拍手が空に広がる。

「そして、今日からこの国は――誰かの価値観に縛られない、“自分の道を歩める場所”になります」

その言葉は、過去の自分に捧げた贈り物でもあった。

* * *

夜。塔の上で、エレノアは仲間たちと共に星を見上げていた。

「次は、何を再構築する?」

そう問うアルヴィンに、エレノアは微笑んだ。

「……世界じゃないわ。“希望”よ」

そうして彼女は、かつての断罪の地で、誰よりも強く、そして優しく生きる者となった。

エレノア・グランツ。

悪役令嬢と呼ばれた少女は――今、真の“創造者”として歴史に名を刻んだのだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ