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63 別れは再会への約束

 あれから、結局私は毎日研究所に通っていた。


 何故だ?


「エレナちゃーん」


「見て見て~ついに試作品完成だよ!」


「いやー今回は頑張ったよねー」


 バーバラさんと、リチャードさんが、二種の魔石が入った箱を持って来た。


 1つの箱には、超小型扇風機「ファン」がついていた。


 奥の部屋から、目をこすり、欠伸しながらシュゼル様が出て来た。

 その後ろから、死にそうな目をしたシドさんも。

 昨日も徹夜だったのね…… 

 何だか私のせいで申し訳ない気がする。


 その箱をゆっくりと、リチャードさんがテーブルに大事そうに置く。


 バーバラさんは手にノートを持って眺めている。


「じゃあ? みなさん心の準備はいいかしら?」

「はじめるわよ!」バーバラさんの声で


 ゆっくり扇風機の羽がまわり出す。


 その側にリチャードさんが手をかざす。


 無言で目を閉じている。


 バーバラさんに目線で促され、私も手をかざす。



 ! 


 温かい風が! ほんのりと。

 まさに温風扇だ!


「出たでしょ?」


「この上に布を被せて稼働したままにしたら。連続で4時間の使用ができた」

 シュゼル様が言う。

「原理上はもっと長く6時間ぐらいはいけるはずだが」

「安全面を考えて4時間で一旦切れる仕様に今はしている」



「凄い!」


 思わず声をあげた。


「布を被せ、金属で覆うことにより、より保温時間を長く出来、温度の急激な上昇を抑えることにも成功した」


 本当に凄いわ。安全面もこれならバッチリだし、やはり賢人名鑑にのる天才だわ。この方。


「あとはスイッチを回路に組んで、着火と消火機能をつけたら。いいだろう」


「同じ原理で、水と火の魔石使ったのも、出来たぞ」


「本当ですか? 凄いです!」


 シュゼル様が、流し台に使用していた「水の魔石」の箱を外し、新しい二種入の箱を取り付けた。


 蛇口をひねると……


 温かい!


「すごおーい! 凄いわ!」


 思わず叫んでしまった私に、みんな大笑いだ。


 ハズカシイ…… 思わずはしゃいでしまった……

 くノ一いないわよね? 背後を気にする。


「まぁ、ここまで来たらあとは試行を繰り返し、改良点を確認して量産に向けての本格準備になるな」

「まあ、量産化は()()()()役人の仕事だ」

「俺達の仕事は、これで一段落だ」


「まぁまだまだ、臨床試験が残ってますけどね」  リチャードさんが言う。

「まぁでも、最大の難関は突破してるしね」嬉しそうにバーバラさんが言っていると


 テーブルの隅の椅子で「クークーー」と規則正しい音が漏れている。


 バーバラさんが、近くにあった毛布をシドさんにかけている。

「今回はよくシドも頑張ってたしね」ウインクした。


「しょうがねぇヤツだなぁ。まったく」シュゼル様の顔は穏やかだった。


「お前もよく頑張ったな」と、頭をワシャワシャされた。


「ちょ、シュゼルさん、ちゃんと手洗いました?」私が聞くと、

「あん?」と睨みながら、また頭をワシャワシャされた。


「あーーでも悪かったなぁ。長いこと引き止めて」

「一段落したから、明日からは来れる時だけでもいいぞ」

「あとは、臨床実験のデータ取りばかりだしなぁ」

「あとはシドの仕事だ」

「試験が終わったら連絡するよ」シュゼル様が言った。


「今まで頑張ったプレゼントだ」


 と言って白衣のポケットから何か出した。


「昨日やっと出来てきた」

「ギリギリ間に合ったな」と笑いながら()()を軽く私に投げた。


 キャッ


 名札?

 これって……


「『王立研究所魔導部 特別研究員』()()()の名札だ」

「俺に会いたくなったらいつでも来い」と笑顔で言われた。


()()()」の文字は手書きでペンで書かれている。


「あのぅ……この見習いってもしかしてシュゼルさんが書きました?」


「おう! いいだろ? 銀盤に俺が手書きで書いてやったんだぞ!」

「有り難く受け取れ!」


 いや、折角の名誉ある名札が……台無しです。と思ったがそれは口にはしなかった。


「な?」「いいだろ?」


 そのお顔が眩しすぎて……


 やっぱり、親戚だわ…… 

 笑うと似ている。

 陛下にも似ているけど、殿下にも似ているわ……

 見た目はまったく違うけどね。


「あん?」


 今日もエスパーは健在だった。


 それから、みんなに別れの挨拶をし、再会を約束した。

 バーバラさんとは今度一緒に街に買い物い行く約束もした。


 なんだかんだで、忙しい毎日だったけれど、こんな良い人達に出会えてよかったわ。


 神様ありがとうございます。






 ───それから1ヶ月後、無事臨床試験を終了し、ついに量産化体制に向けて動いた。

 今回は「こたつ」の販売権は私が全てで「温風扇風機」や「冷風扇風機」の販売権は研究所の物とし、その利益の一部は所員に分配されることになった。

「見習い?」の私にも分配されるそうだ。

「冷風扇風機」と「温風扇風機」「温水」の開発特許権は全て私の物に何故かされてしまった。


 そして「複数の魔石同時使用について」の論文をシュゼル様が書き発表されたのだが、

 なんと共同開発者に私の名前を入れてしまったのだ。

 そのおかげで、また私の周りが騒がしくなりつつある……





「最後までお読みいただき、ありがとうございます」

続きが気になると思っていただけましたら、ブックマークや評価をぜひお願いします。


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